愚者空間

KDP作家牛野小雪のサイトです。小説の紹介や雑記を置いています。

電子書籍

『タダにしろなんて甘えなんですよ』



月狂四郎(つきぐるいしろう)という作家がいた。彼は先日『地獄のリベンジメン』という本をKDPでkindleストアに出したばかりだ。初日こそ売上はあったが、あとは他の電書作家と同じように鳴かず飛ばずの日が続いた。9月になると今月の売上はありませんと管理画面に表示されるようになった。そのまま10月になろうとしている。


 このままじゃダメだ。なんとかして状況を動かさないと。月狂四郎は『地獄のリベンジメン』の無料キャンペーンを実施することにした。これで何冊かダウンロードされて、いくつかレビューが出れば売上に弾みがつく。そう目論んでいたのに5日間の無料キャンペーン中にダウンロードされたのは1冊だけだった。無料なのにこんなことがあるのかと暗い気持ちに襲われた。


 それから一週間経った日、ずっと放置していたツイッターの通知が一件あった。メロディアンちよこというアニメ顔アカウントからメッセージが来ている。


《地獄のリベンジマン読みました。DMしたいのでフォローしてください。伝えたい事があります》


 自分の本を読んだ人がいる。月狂の心は躍りあがった。タイトルを間違えていることなんて些細な問題だ。さっそくメロディアンちよこという人をフォローする。DMが来るのを待っていたが、その日はDMが来なかった。待っている間に月狂は眠っていた。


 朝になるとメロディアンちよこからDMが来ていた。夜中の三時に送ってきたようだ。


《地獄のリベンジマン読みました。けっこう長い本で読むのに時間がかかりました。あとで銀行口座を教えるので2000円振り込んでください》


 月狂は首を傾げた。何かの冗談かと思ったが、何度読んでも2000円払ってくれという意味にしか読めない。またDMがきた。


《返事ください。待っています》


《どうしてあなたに2000円払わなければならないのですか?》


と月狂は返した。返事はすぐに来る。


《読了するまでにかかった時間が3時間。最低賃金の全国平均が800円。

800×3=2400

なので本当は2400円なのですが、私も本を読むという文化的な活動に貢献して多少はやりがいを感じるところがあったので400円はサービスしておきます》


《ちょっと言ってる意味が分からないです。》


《い抜き言葉ですね。

×言ってる → ○言っている

こういうところでも文章力は測られるので注意した方がいいですよ。

意味も何も2000円払ってくださいという意味です。ただそれだけ。それ以上でも以下でもありません》


5分後にまたDMが来る。


《もしかして計算が間違っているのかもしれないと、さっき電卓で計算してみました。こんな簡単な計算で間違うなんてありえませんけど、いちおう。計算した結果は・・・・やっぱり合っていました。当然ですね(笑)》


(笑)じゃねえよ。しかしDMはそこで途切れた。何故2000円を払わなければいけないのか説明は一切ない。払うのはもう決まっていると思い込んでいる印象を受けた。きっと頭がおかしいヤツなのだろう。

夜にまたDMが来た。


《すみません!!!!!!!!(>_<)

銀行口座を書き忘れていましたっ!!(←マジ)

これじゃあ振り込むものも振り込めませんよね・・・・

計算間違いだなんて変なこと言って自分で恥かしくなります

今朝のDM消しておきますね(^_^;) 》


そのDMに続いて、銀行名と口座番号が書かれたDMが送られてきた。本気でヤバいヤツだと月狂は恐くなってきた。


《そもそもあなたにお金を払う必要はありません》

とだけ返信する。それでもヤツはあきらめない。


《ちょっと言っている意味が分からないです。それは本気で言っていますか?》


《本気です》


《たとえばですよ。会社が従業員を働かせて給料を払わなければ捕まりますよね。労働法という言葉は知っていますか? 会社と従業員の関係でなくても、誰かに何かをしてもらえば、時間なり手間をかけさせたのなら報酬を払うのは当たり前です。もしかしてそこから話す必要がありますか?》


《私はあなたに何もしてもらっていませんが?》


《逃げるんですね。そんなに2000円が大事ですか。月狂さんは作家というよりは守銭奴ですね。お金のために書いている人だ。人から搾るだけ搾り取って自分は私服を肥やす。こんなことが許されると思っているのですか?》


《その言葉そっくりお返ししますよ。あなたの方こそ守銭奴でしょう。人に言いがかりをつけて2000円をせしめようだなんて理不尽にもほどがある》


《あなたがさっき言った言葉は名誉毀損です。私は守銭奴ではありません。事実無根です。謝罪してください。さっきの発言は証拠としてスクリーンショットに撮りました。警察に訴えますよ》


《すみませんでした》

少しも悪いとは思っていないが、もう面倒になってきた。


《素直に謝罪してくださったことに感謝します。あなたを許しましょう。それでは来週までに2000円振り込んでおいてください》


《いや、お金は振り込みません》


《さっきあやまったじゃないですか。あれは嘘だったんですか?》


《私の本を読んでいただいたことはありがたく思います。でもあなたは無料キャンペーンでダウンロードしたのでしょう? 毎日KDPの管理画面を見ているので分かります。それでいえば私は損ばかりしていて・・・・・》


《あなたの本を無料でダウンロードしたのはその通りです。ですが0円の本なので価値はありません。価値のない本を読んだので私は損ばかりしています。具体的には一度しかない人生のうち3時間を損しました。なので2000円払ってください。だいたいあなたが無料キャンペーンをして何か失いましたか? 失っていないのに損をしたとはおかしい話です》


《いや、それはおかしい。私だって本を書くのに時間を費やしている。まったくタダで書いたわけじゃない。こっちだって命を削って書いているんだ。その本を無料で配布したんだから損してる》


《それであんな本しか書けないのですね。でもね、月狂さん。時間をかけたとか、努力したとかいう言葉は甘えなんですよ。あなたが何日かけて地獄のリベンジマンを書いたのかはしりませんが私だって命を削って読みました。人生を3時間を削って読んだのですよ?それをタダにしろだなんておかしいじゃないですか。だから2000円払ってください。もしかして2000円も払えないほど貧乏なのですか?
 

それとまたい抜き言葉です。

×損してる → ○損している

“を”をつけた方がいいかもしれませんね。こんなことが続くとあなたの文章力が疑われますよ》


《もういいです。あなたとは話が通じないのでDM送らないで下さい》


月狂四郎はメロディアンちよこをブロックした。それでもヤツはあきらめなかった。ブログのコメント欄にやけに攻撃的なメッセージが書き込まれている。


《おい!突き狂いてめえ。話は終わってねえのに勝手にブロックしてんじゃねえぞ!お前がブロック解除しないからここに書き込んでやる。人をタダで使おうなんて甘いこと言ってんじゃねえぞ。今すぐ金返せ。筋とおせ。そんなにはした金が欲しいか!このまま黙っていれば忘れてもらえると思っていたとしたら大間違いだからな!》


2chには月狂四郎の専門スレが立ち


月狂四郎は人をダシにする極悪人みんな気を付けろ!!!!

月狂四郎は人をダシにする極悪人みんな気を付けろ!!!!

月狂四郎は人をダシにする極悪人みんな気を付けろ!!!!

月狂四郎は人をダシにする極悪人みんな気を付けろ!!!!

月狂四郎は人をダシにする極悪人みんな気を付けろ!!!!


と何度も書き込まれている。他のスレにも書き込んでいるようだ。

月狂四郎の悪評が書き込まれると、それに賛同するに書き込みが一気に爆発する。

しかも他の作家のブログのコメント欄にも《月狂四郎に気を付けろ》と書き込んでいる。

犯人はひとりしか思いつかない。メロディアンちよこ。


だがヤツはインターネットの事をよく知らなかったようだ。まだガキなのか?

アクセス解析でIPアドレスは調べられるし、月狂四郎を誹謗中傷した証拠もたくさん残っている。大人をなめるなよ。社会の恐ろしさを教えてやる・・・・。



と、ここまで書いてきたのだが作者はもう嫌になってきた。実際は誹謗中傷の証拠やIPアドレスを掴んでも警察に駆け込むなんて面倒な事はたぶんしないだろうし、メロディアンちよこは暴れ続けるだろう。もしかしたら別アカウントを作ってツイッターで絡んでくるかもしれない。

あんないかにも荒らしっぽい掲示板の書き込みなんて誰も真剣に受け止めないだろうが、この話の主人公である月狂四郎の精神は削られていく。筆を折るかもしれない。それでもメロディアンちよこは止まらない。

 現実なんてクソ。だから創作の中でくらい非現実なことが起こってもいいじゃないか。というわけで最後はこの一文でしめくくることにする。



メロディアンちよこは突如現れた地面の割れ目に吸い込まれ、この世から消えた。


(おわり)



↓ネタにした小説。筆を折ったある作家がいて、その友達が復讐をする話。地面は割れなかったと思う。

地獄のリベンジメン [Kindle版]


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Kindleストア:牛野小雪 

『さよなら楓ちゃん/泉由良』レビュー


“思い出”という言葉がある。読んで字のとおり思いが“出る”あるいは“出た”のだろう。出て行った思いはどこへ行くのだろう?


『さよなら楓ちゃん』にはふたりの女の子が出てくる。しずるちゃんとKちゃん。ふたりは小中と一緒だったけれど高校は離れ離れになってしまう。そのせいかしずるちゃんは泣いたり呼吸困難になったりで咽の詰まる思いに苦しめられていた。


しずるちゃんは高校三年間をただ通り過ぎるように終わらせるのだけれど、大学受験に失敗して予備校に通い始める。そこでまたKちゃんと一緒になる。三年間の溝は無かったようでふたりはまた仲良くなる。
 ヤッター、バンザイという感じだが、実はしずるちゃんとKちゃんは希望する進学先が違うので、大学に合格した時点でふたりはまた離れ離れになることが決まっている。実はこのことは物語であまり語られていないことだ。ふたりとも避けていたのだろうか。それとも重要なこととは思っていなかった?


 物語の途中からふたりに、もうひとりの仲間が加わる。人間ではなく、Kちゃんのぬいぐるみのふゆかちゃん。彼女はKちゃんの巾着袋からひょっこり出てくる。真面目な性格で、ふたりが勉強をサボらないように注意したりする。もちろんぬいぐるみがひとりでに喋りだすわけがないので、本当はふゆかちゃんの姿を借りたKちゃんなわけだ。
 

勉強をがんばるという事はふたりが別れる方向に進むという事である。でもそれはあまりしたくはない。それに真面目な事を言うのは白けるものだから、Kちゃんはふゆかちゃんを通して言いづらい事を伝えている。


物語が進むと、しずるちゃんとKちゃんはまた大学に落ちる。するとKちゃんの巾着袋に、れんげちゃん、なつえちゃん、かえでちゃんというぬいぐるみが増えていく。しずるちゃんの方でもバムセというぬいぐるみを出してくる。こちらはしずるちゃんが元々持っていたぬいぐるみだ。


 Kちゃんのぬいぐるみの中でもかえでちゃんは積極的だ。バムセに対して最初は遠慮がちに、徐々に大胆に好きという感情を表現する。効果音もぴとぴと、ひしっ、っといった感じでとにかくくっつきたがる。バムセのほうでもそれを嫌がることなくお互いに好き合っている。


 もちろんぬいぐるみが感情を持つ事はありえない。動くのも喋るのにもしずるちゃんとKちゃんがいなければならない。ということはぬいぐるみの気持ちはふたりの気持ちということになる。


 冒頭で出て行った思いはどこへ行くのだろう? と書いた。それは物や場所に染み込んでいくものではないだろうか。長年使っていた携帯電話を捨てられないのは何故だろう。ガンダムのプラモデルも押入れの中に沈んでいる。頭ではもう二度と使わない物だと分かっているのに何故か捨てられない。それは思い出が染み込んでいるからではないか。


誰かが長年使っていた物にはその人の思いが染み込んでいる。文字の無い日記帳みたいなもので、愛が着いて愛着になる。しずるちゃんとKちゃんのぬいぐるみはふたりの思い出が染み込んだ『思入り』といえるもので、心の一部みたいなものだ。


 その心の一部であるしずるちゃんのぬいぐるみバムセをKちゃんは借りていく。しずるちゃんも貸したつもりで、貸してしまう。でもバムセは返ってくる事もなく、それどころかKちゃんとも疎遠になってしまう。バムセも返ってこない。


きっとKちゃんもしずるちゃんと離れたくなかったのだろう。もしかするとKちゃんも一度離れ離れになる時、しずるちゃんみたいに傷ついていた可能性はある。でもまたいつかは離れなくてはならないことを頭の良いKちゃんなら察していたのかもしれない。

意識してそうしたのではないだろう。彼女はしずるちゃんのバムセを借りたままどこかへ行ってしまう。しずるちゃんの方でもバムセの思い出はどこかへ行って、いつしか意識することもなくなるが、ある日写真を見て失くしてしまった思い出(バムセ)があったことに気付く。


『さよなら楓ちゃん』は徹頭徹尾しずるちゃんとKちゃんの話である。そして別れの話でもある。最後にしずるちゃんは傷つきながらKちゃんと離れ離れになってしまう。Kちゃんはどうだっただろう。涙のひとつでもこぼしたのだろうか。離れてしまった彼女を知るすべはない。

しかし、ふたりの思い出が染み込んでいるバムセとかえでちゃん達は今もきっとKちゃんの巾着袋の中で一緒にいる。そのことがしずるちゃんにある種の救いを与えているのではないだろうか。ベタな言葉だが離れていても心は一緒にいる。なので、しずるちゃんは失くした思い出を、バムセを取り戻そうとはしないのだ。
 

『さよなら楓ちゃん』はしずるちゃんとKちゃんにとっては喪失の物語であるが、バムセとかえでちゃんにとっては結合の物語でもある。ふたりは思い出のやりとりをしながら混ざり合っていたのだ。

 

(おわり 牛野小雪 記)




『初瀬明生が死んだ夜/初瀬明生』レビュー

 どうした! これは事件じゃないか!

 ショーンが初瀬明生の新作をネタにしていたので(初瀬明生が捕まった夜)、これは読まねばならぬと思っていた。

 この本は作家の初瀬明生が殺された事件から始まる。そこから彼のPCに残っていた3つのファイルを読んでいく体で進んでいく。

 さっきも書いたが『軋む家』で驚かされた。初瀬明生の小説はわりと正面から攻めてくるタイプで隙は少ない。タイプとしてはあの王木亡一朗と似ているのだが、今回は心のバックドアも攻めてくるようになっている。
 『軋む家』は家庭内殺人を描いた短編なのだが、怒りのボルテージが徐々に上がって、最後に開放される感じがすごいなぁとビビった。どうしたんだ初瀬明生。

 『コウモリのはね』のサイコな筋運びもそうだが、個人的には公民館の草をむしって、自宅の居間にばらまく描写がヤバイ。最近捕まった高○的なヤバさを感じる。天然で書いたなら変人、意識して書いていたなら天才だろう。作家としてはどっちにしろ凄い。どうしたんだ初瀬明生。

 最後の『剥落』は良い。いいぞ。連続殺人犯の話が進みながら、別の事件も進んでいく。小悪、大悪、嘘に大嘘、全部揃っている。これだけを抜き出しても成立するサスペンスだった。最悪これだけ読めばいい。

 本当にどうしたんだろう。初瀬明生がマジで死んでるよ。中の人変わったんじゃないかと思ったぐらい変わっている。彼の過去作を読んだ人も、読んでない人もぜひこれは読むべき。この本は将来的に初瀬明生の特別な一冊になるんじゃないかな。ホントすごいよ、マジ。

(おわり S・T・コールフィールド 記)

追記:本編の謎は結局解けなかった。次はもっと簡単なミステリーを書いてくれ コーフィーより

↑WE ARE MUST READ BOOK! 

ショーンのメモ:最近セルパブ作家の成長が著しいので恐い。王木さんもこの前恐くなるようなのを書いていた。このままだとおいてかれるんじゃないかなと心配している。とりあえず今一番期待しているのは王木さん。初瀬さんがこれなら王木さんも凄いのが出てくるんじゃないかと期待している。←ハードルをあげてみた。震えて書け!

  

『初瀬明生が捕まった夜』


 とうとう終わらせた。マダラメ帳シリーズをついに終わらせた。最終巻では主人公の赤井五郎が犯人と一緒に死ぬという衝撃のラストだった。


とうとうやってしまったという気持ちがある。やっと荷を降ろせたという気持ちもある。赤井五郎が死ぬことは前々から決まっていたが、本当に殺すまで三巻も必要だった。

 ここ何年かの明生はマダラメ帳だけを書いてきた。この本を書くのが明生の人生だったといってもいい。長年続いたマダラメ帳シリーズは累計で2億5千万冊売れた。最後の一行を書いたと気付いた時はもう何も書けないと思った。今でもその気持ちは変わらない。明生の人生にとってマダラメ帳は大きすぎる存在だった。


 長年付き合った赤井五郎を弔ってやらなければならない。そう考えられるようになったのは脱稿してから三日目の夜だった。明生は行きつけのスナック“香奈”へ行った。平日の夜なので客はまだ少ない。彼が口開けの客だった。


「あら、ハッセちゃん。ずいぶん久しぶりね。今まで何してたの?」


 ママがすぐに声をかけてきた。考えてみれば最終巻を書き始めてからは、この店どころかどこにも行っていない。ずっと家にこもってとりつかれたように執筆をしていた。


「ママ、人を殺してきたよ。いいやつだった」


 ママは一度驚いた顔をしたが、すぐ慰めるように明生の腕に手を添えた。


「この手で殺した。嫌になるぐらいあっけなかったよ。今までの付き合いが幻と思えるぐらい」


「つらいことがあったのね。お酒でも飲むといいわ」


「ワイルドターキー、ロックで二つ。もう飲む事はできないあいつを弔ってやるんだ」


 そう言うとママはカウンターの奥でグラスの準備をしている。

 

 明生はそっとカウンターの横に目を向けた。


(ヤッタ! キマッタ! シャイニングウィザアァァァァド!!)


いた。エリーちゃん。表情は読み取れないが、さっきのやりとりは聞いていただろう。もちろん店に入った時から気付いていた。さっきのキザなやりとりは彼女に聞かせるためだった。

 

 エリーちゃんは明生がこの店に初めて来たときからいる女だった。和服の楚々とした挙措でグラスを傾ける姿に明生は一目惚れしたのだ。


 明生がじっと彼女の横顔を見ていると、今さっき気付いたかのようにエリーちゃんは明生の方に顔を向けた。


「やあ、久しぶり」と明生は声をかけた。


「先生、色々大変だったんですね」とエリーちゃんは言った。やはり聞こえていたのだ。早くマダラメ帳シリーズを終わらせたことを話したかったが「はい、これ」とママが悪いタイミングでワイルドターキーのグラスを二つ、明生の前に置いた。


「うまいな」


ワイルドターキーを体に放り込むと、喉から胸に焼けた感覚が広がった。


「さっき言った人とは長い付き合いだったの?」


ママが言った。


「長いなんてもんじゃない。あいつが俺の人生だった」


「それなのに殺しちゃったんだ」


「殺したくなくても殺さなくてはいけない。そういう関係がある。俺だってそうしたくなかったが、あいつがそうさせたんだ」


 本当にそうだ。最初に赤井五郎を殺そうと考えた時は気の迷いだと思った。それでも書き続けているうちに、あいつは死に向かって走っていった。そう書かざるをえなかったのだ。物語が作者の思い通りになるというのは間違いで、物語が作者に書く事を要求することもある。それなら、赤井五郎は俺を使って自分を殺させたのか。あいつは事件の黒幕とともに滝壺の中へ落ちて死んだ。もう喋ることはできない。


 マダラメ帳シリーズではたくさんの脇役が出てきた。その誰もが死んで赤井五郎だけが独り生き残った。もうここいらでいい。人が死ぬところを多く見すぎた。ある場面で赤井五郎が吐いた独白だった。何故あんなことを書いたのか明生にも分からない。書いたときは唐突としか思えなかったが、あとで読み返すとそこにしか書くことができない不思議な言葉だった。物語がもつ不思議な力で書かせたとしか思えない。


 ふと気付くと店内に暗い沈黙が覆い被さっていた。少し芝居がすぎたかもしれない。


「ママ」


 小説の話だとネタを明かそうとした瞬間、店のドアが勢いよく開かれた。がっしりした体型の男達が何人も入ってくる。最初はヤクザがみかじめ料を取りに来たのかと思ったが、男の一人が明生のそばに立ち黒い手帳を見せた。それが警察手帳だと気付くのにしばらく時間が必要だった。


「初瀬明生だな?」

 男が言った。


「俺が何かしたかな?」


「殺人の容疑で話がある。署までご同行願おう」


「いや、俺は誰も殺していない」


 はっとして明生はママとエリーちゃんに目を向けた。ふたりはいつの間にかカウンターの向こうで身を寄せ合い、怯えた目で明生を見ている。


「違う、そうじゃないんだ!」


 明生は立ち上がった。


「貴様、大人しくしろ!」


 明生は後ろ手にひねりあげられ、カウンターに押しつけられた。痛みを感じるより先に固い冷たさが手首に巻きついた。手錠。何故俺が手錠をかけられるのか。殺したとはいっても小説の中だ。少しカッコつけすぎただけで二人は勘違いしている。


「来い、このクズ野郎! 逃げられると思ったか!」


 こうして初瀬明生は屈強な警官達に引っ張られ、パトカーに乗せられた。

 

 初めはほんの些細な行き違いで、すぐに釈放されるものだと思っていたが、行き違いはさらに深まっていった。


 ちょうどその日の夜、藤崎ほつまという作家が道頓堀で水死体になって発見された。メイド服姿で心斎橋を歩いていたという目撃証言はたくさん集まったが、いつどうやって道頓堀に落ちたのかは分からなかったので警察も首を傾げていた。自殺にしろ、他殺にしろ、うなずけないものがあったのだ。そこに初瀬明生が人を殺したとあるスナックで証言をした。小説の話だと言っているが藤崎ほつまと初瀬明生は小説を通じて交流があった。しかも長い付き合いだ。証言とも一致している。


 夏が終わった。初瀬明生はまだ留置場の中にいる。殺したのは赤井五郎だと言っているが誰も信じなかった。世界中が次の赤井五郎を待っている大人気シリーズを作家1人のわがままで殺せるはずがない。あってはならないことだ。赤井五郎はまだ生きている。死んだのは藤崎ほつまだけだ。マダラメ帳シリーズが完結する日はまだまだ遠い。


(おわり)


ネタにした小説↓ 






両親のギター inspired by『レモン/グラス』王木亡一朗


 毎年夏が終わる頃、両親から土のついた野菜やお米と一緒にギターが送られてくる。 某一朗 ぼういちろう の実家はギター農家で、収穫時期が過ぎると規格外の出荷できないギターがダンボール箱一杯に送られてくるのだ。

 むこうは生活の足しにと思っているのだろうが、こんなにギターばかり送られてきても某一朗は持て余すばかりだった。両親にしても二人だけで大量に余ったギターを消費しきれないので某一朗や親戚の家になかば押し付けるように送ってくるのだろう。

 ギターがぎっしり詰まったダンボール箱は2週間ほど部屋の隅に放置されている。視界に入らない場所にあるのに不思議と無視できない存在感があった。そのまま腐らせていくのはしのびないので、某一郎が夏の終わりに大きな圧力鍋で大量のギターをくたくたになるまで煮込むのが毎年の恒例行事になっている。

 圧力鍋の蓋から蒸気が吹き上がる様を見ていると、某一朗は子供の頃を思い出す。

 梅雨が明けるとギターの木を包むように小さな白い花がいっぱい咲く。ギター農家ではひとつのギターに栄養を集中させるために、その花が散る前に枝先の花だけを残して花をむしっていかなければならなかった。中学生になると某一郎も手伝わされた。夏の暑い盛りにするので全身乾いたところがなくなるほど汗をかいた。

 夏の作業はそれで終わりではなく、ギターの実が成長してくると一番良い実だけを残して他の実を落としていく作業も待っている。それはたいてい夏休みが始まった頃に始まり、夏休みが終わるまで続く。某一朗は他の子達が遊ぶところを想像しながら将来は絶対にギター農家にはならないと誓ったものだ。

 夏の終わりに妻のえみりんはなぜか食欲が落ちる。夏バテのせいだろうか。食卓の前にデンと置かれた大量のギター煮込みのせいかもしれない。

 ギターを食べたくないわけじゃない。ただ食欲がないから食べられない。ご両親には悪いけれど本当に何も口にしたくない。もしかしたら明日は食べられるかもしれない。はっきりとそう口に出されたわけではないが、某一朗には妻がそう思っているようにしか感じられなかった。そういえばこの時期になると口数も少なくなる。

 一体これは何なのだろうか。どうしてこの世にギターなんてあるのか。息の詰まる夏の終わりに某一朗は毎年考えさせられる。妻のえみりんは食後に何か別のものを食べている様子はなく、本当に食欲がなさそうで夏が終わるとほっそりやせる。その顔を見て某一朗は悪いことをしたような気持ちにさせられた。

  調理したとしてもギターだっていつかは腐る。冷蔵庫でも一週間はもたない。某一朗は毎日ギター煮込みをおかずにしてごはんを食べた。妻は漬物かふりかけだけで済ましてしまう。食卓は緊張をはらんだ静けさに満ちていた。某一朗はコシのない固い食感のギターをぷつぷつと噛み切ると、ある種の重さと共に両親のギターを飲み込んだ。

(おわり)

inspired by
『レモン/グラス』王木亡一朗:note 
Amazon:王木亡一朗のページ 

Kindleストア:牛野小雪 

『黒髪の殻』でコミュニケーションをした話。



『黒髪の殻』をリリースしてからすぐに二版に更新したのは読者からいくつか指摘があったから。
変更したところもあるし、変更しなかったところもある。
ついでに読んで変えたところもある。
全ての指摘について下記の形で返答したわけではないけれど、面白いと思ったのでここに公開しておきます。誰かの参考になれば幸いです。公開の許可は取っています。
薄い赤や青が読者が書いた部分、真紅の部分が私の返答です。時々不精してマウスで書いている部分もあります。



修正 01

修正 02
修正 03

老人の人が『男』と聞いた場合はどうだろうか? という疑問が残った。
実際のところどうなんだろう?
無いというのが私の予想なんだけど。
これは人によって差があるかな。
修正 04
修正 05
修正 06
も は打ち間違い
”自転車のペダルを漕ぐ”がいいのでは? という指摘。↑

修正 07

修正 08
修正 09
修正 10

なんだか嫌らしいので書かなかったけれど、カンナとケンカで韻を踏んでいる。

KAーNーNA → KEーNーKA

韻を踏みたがるから同じ言葉を繰り返すことが多いのかもしれない。

修正 11
修正 12
修正 13
修正 14
修正 15
修正 16
修正 17
修正 18
修正 19
修正 20
修正 22

まだ他にもあったけれど、画像で返信しなかったので画像はなし。
内容にも関係あることだし。 
このあとまた少し話しをして良い体験をした。

変えていないところが目立つけれど変えたところもある。
詳細は以下のとおり
『黒髪の殻』二版に改訂しました

改めてきかれると、どうしてそう書いたのか自分でも分からないところが多くあったけれど、どうしてだろうと考えて、色々考えたり調べたりもして、ああ、なるほどと納得できることは多かった。それとは逆に、なるほど、と思って変更したところもある。
このあとまた少し話しをして良い体験をした。


(おわり) 

余談:KDPセレクトは内容の最大10%までを公開できる。でもそれが冒頭から10%なのか、合計で10%(例:冒頭5%+終盤5%)なのか 分からなかったので問い合わせてみると、こちらでは判断できないが突然セレクトを解除することはないと返信があったので公開してみた。

『黒髪の殻』二版に改訂しました

先日出版した『黒髪の殻』を二版に改訂しました。
コンテンツと端末の管理から最新版に更新することができます。


最新版に更新すると旧版は読めなくなります。
初版から2版への変更点は以下のとおりです。


○目次の消去
○巻末にツイッターアカウントと当ブログへのハイパーリンクを挿入
○巻末の既刊紹介を一行二冊ではなく、一行一冊に。

小説の変更点は以下のとおり。

位置No.33


中二の秋に突然あることを突然悟った。

突然が同じ文中に二回ある。

中二の秋に突然あることを悟った。


位置No35

どうやら好きと嫌いは相反するものではなく、同時に存在できるものらしい。それで密かに心の目を周りに向けてみると、どうやら自分は努力の甲斐あって、誰よりも好かれているとまではいかないが、そこそこ好かれているとは感じられた。

どうやらが頻出

どうやら好きと嫌いは相反するものではなく、同時に存在できるものらしい。それで密かに心の目を周りに向けてみると、自分は努力の甲斐あって、誰よりも好かれているとまではいかないが、そこそこ好かれているとは感じられた。


位置No.96

何故大工にと言う前に叔父がその理由を語った。彼の友達の父親が大工の親方をしていて、昔はをとってさせていたそうだ。それで彼の元で修行した大工は、みんな立派な大工になって、業界では知る人ぞ知るという職人なっているそうだ。だから大工になれということらしい。

彼が誰を支持しているか分からなかったという指摘があった

何故大工にと言う前に叔父がその理由を語った。知り合いの父親が大工の親方をしていて、昔はをとってさせていたそうだ。その人の元で修行した大工はみんな立派な大工になり、業界では知る人ぞ知るという立派な職人なっている。だから大工になれということらしい。


位置No.97

高認をとって大学へという頭ではなかったが、

高認が分からないという指摘があったので“高認”の脚注を付ける


位置No.186

昨日は早い時間に寝たので、その分早く起きてしまった。新聞配達が来るよりも早く起きて、それから先は眠れそうになかったので、布団の中でじっとしていた。

早く起きてが繰り返されている

昨日は早い時間に寝たので、まだ新聞配達が来る前の時間に起きてしまった。それから先は眠れそうになかったので、布団の中でじっとしていた。


位置No262

クレーンは最初から現場にあった。

正人達は軽トラとダンプに分乗して建築現場へ行くわけだが、わざわざクレーンが現場にあったことを書く意味が分らなかったという指摘あり。ずいぶん考えて、もしかしてダンプについているクレーンのことが頭にあったのかと思いました。だからクレーンと書いておいた。これならいかにもあのクレーンだと思うはず。

クレーンは最初から現場にあった。


位置No.790

社長は突然態度を真剣な物に変え

態度は『物』かどうか判断が分かれるので『もの』とした

社長は突然態度を真剣なものに変え


位置No.978

は慌てて服に着替えると

は慌てて服を着ると


No.1669

問題は起こさないし、仕事は真面目にするどころか他の囚人に教えているほどだ。刑務官からの信頼も厚く待遇も良くなる。

他の場所では受刑者となっているので、ここでも受刑者とした。それと文が一度切れているので『。』から『、』に変えました。

問題は起こさないし、仕事は真面目にするどころか他の受刑者に教えているほどだ。刑務官からの信頼も厚くなり、待遇も良くなる。


No.1674

「久しぶり。僕の事は覚えているか?」

「久しぶり。僕の事は覚えてる?」


No.1773

最初に貰った石はまず荒いコンクリートで薄く形を整えた。

石は最初に荒いコンクリートで薄く形を整えた。


No.2091

仕事に慣れてくると毎晩大阪の町を歩くようになった。

出 はなくてもいい

仕事に慣れてくると毎晩大阪の町を歩くようになった。


No.2243

「その親方は?」

「その人は?」


No.2298

正人はあの部屋に住んでいる事についてうなずいたのだが、別の事でうなずいたと社長は勘違いしている。

上の文章だと親方が2つの事柄についてうなずいていることになる。

正人はあの部屋に住んでいる事についてうなずいたのだが、社長は別の事でうなずいたと勘違いしている。


(おわり) 

執筆日記No.11 EVERWHITE−次に日本人でノーベル文学賞を取るのは?

『EVER WHITE』 の案を書き始める。限りなく透明に近い白とかシックスナインとかふたつの案があったけれど、とりあえずは『EVER WHITE』でいく。もしかしたら書かないかもしれない。思っていたものと変わるかもしれない。でも書けるんじゃないかな、たぶん。今までだって書けたんだから。今のところは案を書いているだけなので楽しい段階。イメージだけだから。形にしていくのはしんどいよね。

先週から遠藤周作の『沈黙』を読んでいて昨日読み終わった。江戸時代にキリスト教を広めにきた宣教師の話。西洋的な強さが挫かれて、でも愛というか優しさを持ち続けるという内容で、これって日本ナイズドされたキリスト教じゃね? と思ったけど、そういえば作中でも天宗した宣教師がそう言っていたっけ。
 キリスト教を扱っているし、翻訳されたらノーベル賞いけるんじゃないかとGoogle先生に問い合わせてみたら、やっぱりノーベル文学賞候補だった。っていうか『たそがれ清兵衛』の人だと勘違いしていた。あっちは藤沢周平。 
 ノーベル賞を取れなかったのはパリの文壇と関わらなかったからさ。と心のなかで冗談を言った。その後で、もしかすると日本のノーベル賞作家はパリの文壇に関係あるのか? と調べてみた。


まずは『雪国』の川端康成。時代が時代だけに彼はパリの文壇との関わりはない。しかし、カフェ・パリという店に通っていたそうだ。ちょっとだけパリに関係している。

大江健三郎はどうか? こちらもパリの文壇との関わりはないようだが、東大の仏文科を出ている。フランスといえばパリ。やっぱり少しだけパリに関係している。
 
それじゃあノーベル賞に近いと言われる村上春樹はどうか? ウィキペディアを読んでもそれっぽいエピソードはないし、Google先生でも出てこない。フランツ・カフカ賞は一文字違いでフランスになるけどチェコの文学賞。ということは村上春樹はノーベル文学賞を取れないということになる。

それじゃあ同じ村上でもドラゴン、龍の方はどうかと調べてみたが、こっちもダメ。しばらく日本からノーベル文学賞を取る作家は出てこないな、と思ったのも束の間、すぐにフランスに関係ある作家が思い浮かんだ。しかもパリに関係あり!それは・・・・

辻・仁・成


 『海峡の光』で芥川賞も取っている。騙されたと思って一度読んでみるといい。たぶん取るって思うはず。間違いない。いつになるか分からないが次に日本人でノーベル文学賞を取るのは辻仁成で決まり。今頃パリでは「ムッシュ・ツジは日本、いや世界最高の作家だ」と囁かれているに違いない。絶対に取る。もしブックメーカーで村上春樹と村上龍、どちらがノーベル文学賞取るかと出たら迷わず辻仁成を推すね。1万円つぎ込んでもいい。

今日は小説の中に出てくる方言について書こうと思っていたけれど、この衝撃的な事実に気づいたら、どうでも良くなってしまった。今日はもうこれでおしまい。

 (2016/06/29 21:12 牛野小雪 記)

牛野小雪の小説はこちらへ→Kindleストア:牛野小雪 

日記no.10『やめろと言われてやめられる?』

 セルパブGANG!!(←!つけるのが正式?)で色々あって、先週から書いていた短編を書く気が失くなった。でも、書ききらないと次に進めないので、一応書き進めて最後まで書いた。むりやり終わらせた感はある。すっごい嫌な気分になって、もう何にもする気が起きなかったけれど、そのことを日記に書いていたらとってもいい文章が思い浮かんできて嬉しくなった。これを使える日がくると良いなとワクワクした。

 GANG!!の件だけど、何をやっても何か言われるんだから、やめたければやめたらいいと思う。誰かに金を貰っているわけでもないし、むしろ出しているんじゃないかな。やめたくなってやめるならそれまでのこと。もし仮に悪ドラ書いている途中で誰かにやめろって言われていたらヘリベさんはやめただろうか。きっとやめなかったはずだ、たとえ自分でやめたいと思っても。それと一緒。

 このセルパブがすごいは藤崎さんが引き継ぐそうだけど、藤崎さんにしたってやめたくなったらやめたらいい。 中止でなくても中断という手もある。誰かに引き継いでもらうということだってできる。個人でやることを会社でやるようにしなくたっていいんじゃないかな。実際会社じゃないわけだし。藤崎さんがぶっ倒れたらそれこそ中止になる。
 責任がある? 誰に対して? 私はアンケートを出したぐらいだし、他の人もそうだろう。大層なことをしたわけじゃない。見えているところだけだとヘリマルさんと藤崎さんだけがしゃかりきに動いているようにしか見えない。横からグチグチ言うなら自分で彼らのやっていることを台無しにするぐらいの物を出したらいい。そういう競争なら面白くていいし、やられた方も気持ちいいだろう。それか自分も彼らに力を貸すとか。

 前置きはこんなところにして、と。

 昨日『黒髪の殻』をリリースした。やっと肩の荷がおりた気分がする。やっぱり今まで気を張っていたんだなと実感した。月刊牛野はこれでおしまい。次はいつになることやら。それほど長く書くつもりはないけれど年内に終わるかな。

(2016/06/21 22:20 牛野小雪 記)

※そろそろ寝たほうがいいと思う、みんな寝不足なんじゃないか?

牛野小雪の小説はこちらへ→Kindleストア:牛野小雪

『幽霊になった私/牛野小雪』リリース開始

最近友達ともうまくいっていない。勉強も難しくなってきた。

両親はしょっちゅうケンカしているし飼っていた猫はいなくなる。

あんまり色んな事がありすぎて私は近くの公園でちょっとロマンチックな自殺をしたんだけど気付いたら幽霊になっていた。

誰も私が見えないし声も聞こえない。鼻をつまんだって気付かない。

幽霊になっても何もできないからつまんないことばっかり。

いくら待っても天国からのお迎えも来ないし、地獄に落ちそうもない。

あ〜あ、私これからどうなっちゃうんだろう。


牛野小雪が放つ新感覚のゴーストストーリー




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「幽霊になった私」書評

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