愚者空間

KDP作家牛野小雪のサイトです。小説の紹介や雑記を置いています。

ボクシング

【書評】もう会えぬ君は友とリングへゆく/月狂四郎



リングに立つことはある意味ではババ抜きである。リングに立ち続けるためには強いやつに勝ち続けなければならない。勝ったら次の強いやつ、それに勝ったらまた次の強いやつ。ある程度まで登ると相手はみんな努力する天才ばかりになる。もちろん強い。こうして学校で無双していた時代は終わりを告げる。

そこでは苦しみを笑いながら食う人間だけが生き残る。食えないなら弾かれるだけだ。この小説はあらゆる人間が様々な理由でリングを降りていく話である。チャンピョンが一人しかいないように、この小説でも最後にリングに立つのは一人だけだ。孤独な世界だ。

去り方も様々で、最初からリングに入らない。負ける。死ぬ。明るい理由で去る者はいない。それでも立ち続ける。勝っているのに失うものもある。勝負事というのはきびしい世界だ。リングの上では得るものより失うものの方がいいんじゃないかって気がしてくる。

でも、ぶっちゃけそんなことはどうでもいいんだ

”ロブレス”さえぶちのめされればなぁ!

『もう会えぬ君は友とリングへ行く』はロブレスとかいういけすかないボクサーに丈二と新堂の二人が挑むというのが大まかなストーリーだ

試合前にはロブレスがいかにイカれたボクサーかを描写して(こいつやられてくれねぇかな)という感情を煽る。これは大げさに言ってしまえば倒される前振りを与えているということ。メタ的な話をすれば品行方正で尊敬できる奴を倒してもカタルシスがないんだ。小説の悪役はずるくて卑怯であるべきなんだ。そいつを倒してこそ気持ちいいんだ。

ロブレスはメイウェザーみたいなもので彼の試合を見る半分はファンで、もう半分はメイウェザーが負けるところを見たいアンチだ。勝っても得だし、負けてもお得な人物である。どちらにしろロブレスもメイウェザーも存在感を増す。

デカい悪役を倒すところを見たくないか?

丈二と新堂の二人はきっと勝つだろう。

急げっ、乗り遅れるな!

カタルシスを味わうんだ。

(おわり)




こっちもいいぞ!


ボクシングが強すぎて異世界に逝ったらエルフの女騎士と冒険に出ることになった10-2/うしP

強すぎて試合が組まれることさえなかったボクサーのシロー エルフの女騎士リーリャは ドワーフのタヌカナと別れ とうとう二人きりになる 

そして なにかが起きようとした時 「待て」 と声がかかる 

振り返ると そこには妹のルカが立っている 

「お兄ちゃん いつまで異世界にいるの 世界チャンピオンになる夢はどうしたの」 ルカが怒る 

「えっ でも試合は組まれないし 異世界で暮らすのもいいかなって」 とシローは言い訳する 

「チャンピオンって?」 リーリャが首をかしげる 

シローはボクシングという概念とチャンピオンのことを説明し始める 

「ボクシングっていうのは 拳で相手を倒すスポーツなんだ 世界中から強いボクサーが集まって 試合をするんだ 一番強いボクサーのことを世界チャンピオンって呼ぶんだ 俺はそのチャンピオンを目指していたんだけど 強すぎて試合が組まれなくなっちゃってさ」 

リーリャは驚きの表情を浮かべる

「お兄ちゃん 元の世界に帰ろう リーリャさんにも話したでしょ」 ルカが説得する 

「バカ言うなよ だって 俺は・・・」 シローは言葉を濁す 

リーリャは複雑な表情を浮かべる 自分のせいでシローの夢を奪ってしまったのかもしれない その重さに胸が苦しくなる 

「ごめんなさい シロー 私のせいで あなたの人生を狂わせてしまった」 リーリャは涙ぐむ 

「ち 違うぞ リーリャ お前のせいじゃない」 シローは慌てて否定する 

「でも・・・」 リーリャは言葉に詰まる 

ルカは二人を見つめ 決断を下す 

「リーリャさん 一緒に私たちの世界に来てください シローはリーリャさんと一緒じゃないと幸せになれないと思うの」 

リーリャとシローは驚きの表情で ルカを見る 

「でも 私はエルフで・・・」 リーリャは戸惑う 

「関係ないわ リーリャさんはリーリャさんのままでいいの」 ルカは微笑む 

シローも真剣な表情で リーリャに語りかける 

「リーリャ 一緒に来てくれ 俺は お前と一緒にいたいんだ」 

リーリャの瞳から涙があふれる 「シロー・・・」 

こうして シローはリーリャと妹と共に 元の世界へ帰ることを決意する

シローの元には たくさんのファンレターが届いていた 彼の帰りを待ちわびる人々の声だ 

「シロー お帰り」 「試合を見たいです」 「世界チャンピオンになってください」 

シローは感動に胸を熱くする リングへの思いが再び燃え上がる 

そして とうとう試合が組まれる 相手は身長2m150kgの超ヘビー級ボクサー 体格だけではなく巨体からは想像できないほどテクニックも磨かれている シローが異世界にいる間に バハムートと呼ばれるほどの強敵が現れていたのだ 

観客席には リーリャとルカの姿がある 二人はシローに声援を送る 

「頑張って シロー」 「お兄ちゃん 勝てるよ」 

シローはリングに上がり グローブを構える 

(俺の人生は ここから始まるんだ) 

シローの瞳に 熱い炎が宿る 

ゴングが高らかに響き渡り 試合の幕が切って落とされる 

新たな伝説の始まりを告げるかのように

(ボクシングが強すぎて異世界に逝ったらエルフの女騎士と冒険に出ることになった おわり)

ボクシングが強すぎて異世界に逝ったらエルフの女騎士と冒険に出ることになった10-1/うしP

強すぎて試合が組まれることさえなかったボクサーのシローは異世界に転生して エルフの女騎士リーリャ 鉄拳ドワーフのタヌカナは冒険の旅を続けている 三人は霊峰ヒューベリオスという山に辿り着く ここは巨人族が住む場所らしい

「はるか昔 私が生まれる前に エルフたちと共に巨人族は魔王軍と戦ったそうよ でも魔王軍の力に負け 巨人族は一人残らず死んでしまったの」 リーリャが語る

「誰かに見られている気がするわ」 と不安そうにリーリャが言う

「周りには誰もいないぞ」 シローが周囲を見回す

夜になり 三人はたき火を囲む

「さすがにオレも誰かに見られているような気がしてきたな」 シローが警戒する

「透明になれる術者かもしれないわね」 リーリャが考える

タヌカナはシュシュと口から息を吐きながらシャドーボクシングをしている 音を叩く練習だ

「なぜ攻撃してこないんだ?」 シローが不思議に思う

闇を警戒しながら 三人は夜を過ごす

朝日が昇ると 正体が明らかになる 巨大な顔が三人をのぞき込んでいるのだ それは身長が150m以上はありそうな岩の巨人だ

「実は昨日から姿は見えていたんだけど あまりに大きすぎて巨人だとは気付かなかったんだ」 シローが苦笑する

タヌカナの様子がおかしい 固まったように動かない

シローは巨人に問いかける 「俺たちに何か用か?」

巨人はゆっくりと口を開き 「オーズ」と名乗る 「巨人族最後の生き残り 旅人は珍しいから見ていた」 喋り方が遅い

「魔王は俺が倒した」 とシローが告げる

「それはすごいな」 オーズがゆっくりと驚く

旅の目的を聞かれ シローは答える 「魔王軍の残党を掃除しながら この世界を見て回っているんだ」

「それなら俺がヒューベリオスを案内しよう」 オーズは三人を肩に乗せる

巨人の動きは遅いが 一歩が大きいので 地上を歩くよりずっと速い 予想より早く 山の頂上に到着する

シローは地平線の先まで続く大地を見て言う 「地球は丸くないのか?」

「地球とは何だ?」 他の三人が問い返す 地球という概念を知らないのだ

シローは異世界にいることを再認識する 「地球とはこの世界そのものだ 地球は球体で 宇宙という場所に浮いている」 と万有引力の説明をする

しかし三人は 「丸かったら下にいると落っこちてしまうだろう」 と笑う

数日後 タヌカナの様子がますますおかしくなる 思い詰めた表情で オーズを見つめている

ある夜 タヌカナがシローに打ち明ける 「私はここに残るわ オーズを好きになったの」

シローは驚きを隠せない 「本当なのか?」

「ええ 決心したの」 タヌカナの瞳は真剣だ

リーリャは背中でその会話を聞いている 複雑な心境だ ライバルだったけど 仲間でもあった

翌朝 別れの時が来た タヌカナは荷物をまとめ オーズの横に立つ

「さようなら シロー リーリャ 一緒に冒険ができて楽しかったわ」 タヌカナが涙ぐむ

「タヌカナ 幸せになれよ」 シローが握手を求める

「ええ あなたたちも」 タヌカナが笑顔で応じる

リーリャも言葉少なに別れを告げる 「元気でね タヌカナ」

こうして タヌカナはシローとリーリャに別れを告げ 巨人オーズと共に新たな人生を歩み始める

山を下りながら シローとリーリャは無言だ タヌカナとの思い出が脳裏をよぎる

「寂しくなるわね」 リーリャがポツリと呟く

「ああ でもタヌカナは自分の道を見つけたんだ 応援するしかないさ」 シローが大空を見上げる

二人の冒険は新たなページを迎える

数日後の夜 シローとリーリャは星空の下 肩を寄せ合って座っている

「ねえシロー やっと二人きりになれたわね」 リーリャが頬を赤らめる

シローの鼓動が早くなる 「リ リーリャ 俺 お前のことが・・・」

そのとき 闇の中から声がする 「待て!」

(つづく!)

ボクシングが強すぎて異世界に逝ったらエルフの女騎士と冒険に出ることになった9/うしP

シロー、エルフの女騎士リーリャ、鉄拳ドワーフの女タヌカナは冒険の旅を続けている 関所の門が見えてきた その時 門の上に黒衣の女が現れる 

「我こそは暗黒魔導士ソフォン 炎を操る最強最悪の魔導士なり」 彼女は不敵な笑みを浮かべ 杖を掲げると詠唱を始める 

「炎よ 我が身に宿りて 大気を焦がす業火と化せ 闇を払い 敵を滅する灼熱の嵐となれ 我こそ炎の主 天壌を揺るがす紅蓮の覇者なり 今こそ 我が言霊と共に 万象を焼き尽くせ 我 炎の魔導士たる名において 焔魔招来の秘呪を闡く イグニス・インフェルノ!」 

ソフォンの前に炎の円柱が立ち上がる 空が煮えたような感覚に襲われ シローたちは身の危険を感じる 

「こいつ 魔王より強いんじゃないか?」 シローが絶望的な表情で呟く 

「私は魔王の敵討ちに来た さっきの呪文はお前たちにこれから死ぬということを理解させてから嫌というほど恐怖におびえてもらうためだ」 ソフォンが高笑いする 

門の上にいる彼女に 拳も剣も届きそうにない 逃げることもできない絶体絶命の状況 

しかしシローは不敵な笑みを浮かべる リーリャとタヌカナは彼の頭がおかしくなったのかと心配する 

「ソフォン お前の最高の呪文を俺にぶつけてみろ」 シローが挑発する 

「愚かな 死にたがりが 望み通りに葬ってやる」 ソフォンは再び詠唱を開始する 

「古の炎神イフリートよ パン言霊にパンて顕現せよ 業パンパパン解き放ち 敵を焼きパンうパンパンパンの雨となれ 十六のパンよ 烈火のパンパンパンを巻き起こし パパンを焦土と化し 天をパン夜に染めよ 我が力のパンパンパン 炎帝の燃えるパンとともに 汝ら炎の軍勢を率いて 戦場を駆けめぐれ クリムゾンパンパンパンパンパンパン!」 

詠唱が終わっても何も起こらない リーリャとタヌカナは困惑する 

「どうした ソフォン 呪文が発動しないようだが」 シローが嘲笑する 彼がシャドーボクシングをするとパンパンパンと空気の破裂する音が響く

「ば バカな・・・私の詠唱が・・・」 ソフォンの顔から血の気が引く 

「俺のジャブは音速を超えている 音を叩くことができるんだ お前ならこれがどういうことか分かるな?」 シローが不敵に笑う 

ソフォンは絶望に打ちひしがれ ひざをつく 

リーリャは事情を察し 門へ駆け上がる タヌカナはシローに何が起こったのか尋ねる 

「俺は詠唱破壊をしたんだ 術者の音声を叩くことで 詠唱を無効化できる どんなに強力な呪文も唱えることはできなくなるんだ」 シローが説明する 

「さすがシロー!大好き!」 タヌカナが目を輝かせる 

リーリャはソフォンのいる場所に到着し 彼女の杖を折る 

「殺せ」 ソフォンが悔しそうに言う 

「お前は強力な術者だ 殺すのは惜しい その力を新しい世界のために役立てろ」 リーリャが諭す 

「また殺しに来るぞ」 ソフォンが悔しそうに言う 

「その時はまたシローが受けて立つさ」 リーリャが微笑む 

ソフォンはリーリャの器の大きさに心からの敗北を認める 術者にとって心で負けることは死に等しい 

こうしてシローたちは関所を抜け 新天地へと旅立つ 

夜 野営の火を囲んで リーリャとタヌカナがシローに迫る 

「ねえシロー 私たち二人 どっちが好きなの?」 リーリャが甘える 

「そうよ シロー はっきり言ってよ」 タヌカナも負けじと言う 

「お お前たち 急に何を言い出すんだ」 シローは顔を赤らめ 言葉に詰まる 

「もう シローったら はぐらかさないでよ」 リーリャが頬を膨らませる 

「そうだそうだ 男なら潔く答えなさいよ」 タヌカナも詰め寄る 

「わ 分かったよ 二人とも大切なんだ 俺にはどちらかを選べない」 シローが必死に言う 

「ああもう しょうがないわね」 リーリャが苦笑する 

「ずるいわ シロー でもそれでいいのよ」 タヌカナが微笑む 

こうしてシローとリーリャ タヌカナの冒険は続いていく 笑いあり涙あり 時にはライバル関係に頭を悩ませながらも 固い絆で結ばれた三人 

新たな土地で新たな出会いと別れが彼らを待っている 果てしなく広がる異世界を 渡り歩いていくのだ 

ボクシングが強すぎて異世界に逝ったらエルフの女騎士と冒険に出ることになった8/うしP

シロー、エルフの女騎士リーリャ、ドワーフの女タヌカナは冒険の旅を続けている

 ある日 三人は魔王軍団の残党に襲われる しかしシローの拳とリーリャの剣により あっという間に敵を撃退する

「魔王軍もまとめるやつがいなくなったらどんどん弱くなっているな」 シローが感心しながら言う

リーリャは黙ったまま 何かを考えているようだ 

「どうしたんだ リーリャ」 シローが尋ねる

「ねえシロー タヌカナってどうしているの?私は剣を使える でもタヌカナはいつも後ろで応援しているだけ」 リーリャが不満げに言う

「応援も役に立ってるさ」 シローはリーリャの言うことはもっともだと思うが 肯定するとまずい展開になりそうなのでフォローする

タヌカナは青ざめた顔で立ち尽くしている 

リーリャは続ける 「タヌカナが魔王軍との戦いで役に立っていないのは明らかよ 私たちが戦っている間 彼女は後ろで叫んでいるだけ 剣も使えない魔法も使えない ただ応援するだけなんて足手まといにしかならないわ」

タヌカナは涙を浮かべ その場から逃げ出す 

「タヌカナ!」 シローが追おうとするが リーリャが止める

「シロー 自分の身さえ守れないなら この先何が起こるか分からないわ 冒険を続けるのは彼女のためにならない」 リーリャは真剣な表情で言う

シローは走り去るタヌカナの後ろ姿を見つめるしかない 胸が締め付けられる思いだ

タヌカナは森の中を走り続ける 足手まといになる自分を責め涙を流す 

「私なんて役に立たない シローさんやリーリャの邪魔になるだけだ」 タヌカナは自分を責め続ける

そのとき 崩れた祠を見つける 普段なら見向きもしないが 今日はどういうわけか立ち止まる 

「この祠 立て直してみようかな」 タヌカナは呟く

祠を修復すると 中から鉄の塊が現れる どこからともなく声が聞こえてくる 

「これは鉄拳 これを持つ者に力を与える お主にこれを授けよう」 

その瞬間 タヌカナの拳が鉄の拳へと変わる 力が湧き上がるのを感じる

「これなら 私も戦える!」 タヌカナの顔に希望が蘇る

タヌカナが鉄拳を手に シローとリーリャの元へ戻ると 二人は魔王軍団と戦っていた 

「シローさん リーリャ!」 タヌカナが叫ぶ

鉄拳で次々と敵を殴り倒すタヌカナ シローとリーリャは驚きの表情を浮かべる 

「タヌカナ その拳は!?」 シローが叫ぶ

「私にも力が与えられたの これで私も戦える!」 タヌカナは輝く拳を見せる

こうしてタヌカナも仲間の力となり 魔王軍団を打ち倒していく 

戦いが終わると リーリャがタヌカナに歩み寄る 

「ごめんなさい 私 あなたを見くびっていた でもあなたは立派に戦ってくれた」 リーリャが頭を下げる

「ううん 私こそごめんなさい 足手まといになってばかりで」 タヌカナも謝る

二人は握手を交わし 和解する シローはほっとした表情で二人を見つめる

夜 野営の火を囲みながら リーリャとタヌカナがシローに迫る 

「ねえシロー 私たち二人 どっちが好きなの?」 リーリャが甘える声で聞く

「そうよ シロー 選ぶなら私よね?」 タヌカナも負けじと上目遣いで言う

「お お前たち 急に何を言い出すんだ」 シローは動揺し 顔を赤らめる

「はぐらかさないで ちゃんと答えて」 二人が詰め寄る

「そ それは・・・」 シローは言葉に詰まる

三人の冒険はまだまだ続く

シローの恋の行方は 波乱に満ちている でも彼は二人と共に歩み続ける 異世界を救うため そして自らの想いを見つめるために

冒険の先に待ち受けるものとは・・・ シローの運命やいかに!

ボクシングが強すぎて異世界に逝ったらエルフの女騎士と冒険に出ることになった7/うしP

シロー、リーリャ、タヌカナの三人は、シックモーターと呼ばれる荒野にたどり着く。かつてここには、見上げるような霊樹ユグドラシルが立ち並んでいたが、今では魔王軍団のシックモーターによって枯らされ、見渡す限りの大地が広がっている。

突如、シックモーター軍団が三人に襲いかかる。

「教育教育教育!」

「死刑死刑死刑!」

何かの呪文を唱えながら、軍団員たちが迫ってくる。シローは彼らをワンパンで次々と倒していく。

「おい、お前ら、何のためにこんなことをしているんだ?」シローが倒れた軍団員に問いかける。

「私たちには、道行く人をシックモーター本部へ連れて行き、新たな軍団員にするノルマがあるんです。もしノルマを達成できなければ、死が待っているんです」軍団員が恐怖に震えながら答える。

シローたちは、軍団員に道案内をさせ、シックモーター本部へと向かう。そこでは、男たちをひざまずかせ、椅子や机にしている女が待ち構えていた。

「なんだお前たちは?」教育長が不敵な笑みを浮かべて言う。

「俺たちは魔王の残党を倒し、世界を開放している」シローが胸を張って答える。

「魔王様の残党?何かの冗談か。魔王様が死ぬはずがない」教育長は高笑いする。

「魔王は俺が倒した」シローが真顔で言い放つ。

教育長は呆れたように首を振り、シックモーター軍団に三人を殺すように命じる。しかし、光の速さでジャブを繰り出すシローに、誰も触れることができない。

「まさか、本当に・・・・・・・」教育長の顔色が変わる。

「ああ」シローが力強く頷く。

その瞬間、教育長の目が女の目に変わる。

「私の名前はアメリア。生涯あなたにお仕えします」アメリアが恭しく頭を下げる。

「えっ?」シローが困惑する。

アメリアの言葉を聞いたリーリャとタヌカナは、怒りに震えながらアメリアにストレートを叩き込む。

「魔王軍の残党はみんな滅ぼさないとね?」リーリャが鋭い目つきで言う。

「あんな女がシローについたら病気になっちゃう」タヌカナが舌打ちする。

シローは再び「えっ」と言葉を失う。

こうして、シックモーター軍団は解散し、ユグドラシルの木が再び植えられ始める。平和が戻ったかに思えた。

しかし、リーリャとタヌカナはシローを巡って競い合っている。

「ねえシロー、私とタヌカナ、どっちが一番好きなの?」ある夜、リーリャが問いかける。

「そうよ、はっきりさせてよ」タヌカナも同調する。

シローは頭を抱える。三人の想いに応えることができない。

「俺は・・・お前たち全員が大切なんだ」シローは苦悩の表情で言う。

二人は不満げに顔を見合わせる。でも、シローとの冒険を続けることには変わりない。

愛と冒険の日々は、まだまだ終わりそうにない。シローの運命やいかに!

ボクシングが強すぎて異世界に逝ったらエルフの女騎士と冒険に出ることになった6/うしP

シローの想いを賭けたサークリングが翌日に決行される リーリャとタヌカナは心の準備を整える 

「私はシローさんのために全力で戦うわ」 タヌカナは燃える闘志を瞳に宿す 

「負けないわよ タヌキ」 リーリャも負けじと意気込む

いよいよサークリングの時が来た 魔法陣に囲まれた円形の舞台に二人が上がる 

「シローへの愛を示すのよ」 タヌカナが雄叫びを上げる 

「私の方がシローを愛している」 リーリャも熱い想いを叫ぶ

互いに赤裸々に愛を語りながら 二人は殴り合う ドワーフたちは大盛り上がりだ 

しかしシローはそれ以上見ていられない 愛する二人が痛み付け合う姿に心が張り裂ける 

「やめろ!」 シローはサークルに乱入する 「殴るなら俺を殴れ」 と懇願するように叫ぶ

リーリャとタヌカナは拳を止める 愛しいシローを前に躊躇う 

「殴れないわ」 リーリャが呟く 

「そうね 私たちじゃ決められない シローさんが決めるべきよ」 タヌカナも同意する

シローは頭を抱える 二人の想いに応えられない もがき苦しむ 

「決められない」 シローは苦渋の表情で言う 「だから・・・3人で冒険しよう」

リーリャとタヌカナは驚く そして顔を見合わせる 

「私たち・・・」 リーリャが言いかける 

「気が合うのかも」 タヌカナが続ける

二人はシュッとシローの顔面にストレートを叩き込む 

「ぐはっ!」 シローは鼻血を噴き出しながら倒れる 

「一緒に冒険しましょう シロー」 二人が笑顔で言う

こうしてシロー リーリャ タヌカナの奇妙な冒険パーティが結成された 

ドワーフたちは祝福の印に勢力増強剤をくれる 

「これで夜は13ラウンドまでいける」 族長がニヤリと笑う

冒険の旅が始まる 道中 リーリャがシローに寄り添う 

「ねえシロー 私のこと好きよね?」 リーリャが甘える 

「ああ 好きだ」 シローは真っ直ぐに答える

すると反対側からタヌカナが近づく 

「私も好きよね?」 タヌカナが上目遣いでシローを見つめる 

「ああ 好きだよ」 シローはニコリと微笑む

リーリャとタヌカナは睨み合う ライバル心むき出しだ 

「ちょっとシロー どっちが好きなの?」 二人が詰め寄る 

「え?そ それは・・・」 シローは困惑する

森を抜け 山を越え 三人の冒険は続く 異世界を救うため 愛のため シローは奮闘する 

立ちはだかる強敵を シローのパンチが薙ぎ倒していく リーリャの剣とタヌカナの声援が力強い味方だ 

「さすがシローね」 リーリャが感心する 

「私たちがいれば無敵よ」 タヌカナが誇らしげに言う

冒険の合間には ささやかな団らんのひと時もある 

「シロー あーんして」 リーリャが料理を差し出す 

「俺も食べさせてよ シローさん」 タヌカナが負けじと言う

シローは幸せそうに二人に応える 愛情たっぷりの料理に舌鼓を打つ 

「ああ 幸せだ」 シローがつぶやく

そんな中でも決断の時は訪れる 

「ねえ 選ぶならどっち?」 ある夜 リーリャが問いかける 

「そうよ はっきりさせてよ」 タヌカナも同調する

シローは頭を悩ませる 

「俺は・・・」 シローは言葉を探す 「お前たち両方が必要なんだ」

リーリャとタヌカナは目を見開く 

「私たち二人とも?」 リーリャが驚く 

「そんなの・・・ずるいわ」 タヌカナが頬を膨らませる

シローは真剣な眼差しで二人を見つめる 

「一人を選べなんて 俺にはできない」 シローは静かに言う 「だから・・・このまま3人で冒険を続けよう」

リーリャとタヌカナは複雑な表情を浮かべる でもやがて微笑みを取り戻す 

「仕方ないわね」 リーリャが肩をすくめる 

「ずっと一緒にいられるなら それでいいか」 タヌカナも折れる

こうしてシローの異世界ハーレム冒険譚は波乱を呼びつつも順風満帆に進んでいく 

果たしてシローは いつになったら二人のどちらかを選ぶのか それとも・・・? 

愛と冒険の日々は まだまだ終わりそうにない シローの運命やいかに!

ボクシングが強すぎて異世界に逝ったらエルフの女騎士と冒険に出ることになった5/うしP

シローとリーリャは精霊の森を探索していた かつてこの地にはエルフの里があったという 森の奥深くに足を踏み入れたその時 ドワーフの群れが襲ってきた

「シロー 気をつけて! ドワーフたちは魔王の手下よ」 リーリャが剣を抜く 

「ははっ 全員一発だ」 シローはグローブを握りしめ 戦闘態勢に入った

ドワーフたちと戦うシローとリーリャ だが数の不利は覆せない その隙にリーリャが捕らわれてしまう

「リーリャ!」 シローが叫ぶ 

「シロー 助けて!」 リーリャの悲鳴が森に響く

「待ってろ リーリャ 必ず助け出す!」 シローは怒りに震える

ドワーフたちは魔王の配下となり 精霊の森を占領していた  

リーリャを奪還するため シローはドワーフの村へ乗り込む

「お前らいつまでこんなことやってる 魔王なら もう倒したはずだぞ」 シローは啖呵を切る 

「何?お前が魔王を倒したと?証拠を見せてみろ」 ドワーフたちは疑い深く言う

「よし 証拠ならいくらでも見せてやる」 シローは不敵に笑う 

「ならば サークリングで勝負だ 我ら10人と戦え」 ドワーフの族長が告げる

「サークリング?」 シローは首を傾げる 

「魔法陣で仕切られた円形の場所での殴り合いのことだ」 族長は不気味に笑う こいつバカか? 丸いリングのボクシングってことじゃねえか

サークリングが始まった 最初のドワーフが前に出る 

「おい 話が違うぞ 10人一緒に戦うんじゃないのか?」 シローは不満げだ

ザワつくドワーフたち 息を呑む者もいる

「やれ!」 族長が命じる

一斉に10人のドワーフがシローに襲いかかる 

パンパンパンパンパン・・・・・・・ 

シローは横一列のドワーフをジャブのワンパンで薙ぎ倒していく みんな棒のように倒れていった しょせん身長が150cmもないチビ達 階級が5つ以上違うならこんなものだ

「す すまなかった 本当にお前が魔王を倒したのか」 ドワーフたちは恐怖に震える 

「分かればよろしい」 シローは涼しい顔で言う

こうして精霊の森はエルフたちの手に戻った

 平和が戻ったかに思われたが そこに一人の女ドワーフが近づいてくる 

「あ あなたのパンチ すごいわ」 彼女はシローに恋心を抱いているようだ

「ああ まあな」 シローは照れくさそうに返す

「私の名前はタヌカナ タヌキみたいな顔だからそう呼んで」 女ドワーフは頬を赤らめる

その様子を見ていたリーリャは ヤキモキし始める 

「ちょっとシロー!浮気は許さないわよ!」 リーリャはシローの腕を掴む

「ち 違うってリーリャ 俺はお前一筋だって」 シローは必死に説明する

「私の方がシローさんにはお似合いだわ」 タヌカナがリーリャを挑発する 

「な!?ふざけないでよ このタヌキ!」 リーリャの怒りが爆発しそうだ

ドワーフたちはその様子を面白そうに眺めている 

「族長 あの人間 なかなかモテるな」 

「うらやましい限りだ」

シローは二人の女性に挟まれ 困惑している 

「落ち着いてくれ 二人とも」 シローは宥めようと必死だ 

「シロー!選ぶのよ 私かこのタヌキか!」 リーリャが迫る 

「そ それは・・・」 シローは冷や汗をかく

「シローさん 私を選んで!」 タヌカナが甘える 

「わ 私だってシローのことが好きなの!」 リーリャも負けじと訴える

ドワーフたちは大笑いしている 

「なんて面白い展開なんだ!」 

「人間のすることは分からないな!」

シローは頭を抱える こんなはずではなかったのに・・・ 

「族長 なんとかしてくれ」 シローは助けを求める 

「フフフ 私には良い考えがある」 族長が意味ありげに言う

「え?なんだって?」 シローの顔が青ざめる 

「二人の想いを試すのだ サークリングでな」 族長が笑みを浮かべる 

「ええっ!?」 シローリーリャタヌカナが揃って叫ぶ

「ま まさか・・・」 シローの顔から血の気が引く 

「私は構わないわ だって私の愛はノッポの色白女より強いもの」 タヌカナは承諾する 

「私だってちんちくりんには負けないんだから!」 リーリャも怯まない

波乱の予感に満ちたシローの異世界冒険譚 新展開の幕が切って落とされた 

はたして シローの決断は・・・ リーリャとタヌカナ 二人の想いの行方は・・・ 

ボクシング強すぎて異世界に逝ったらエルフの女騎士と冒険に出ることになった/うしP

ボクシングが強すぎて対戦相手がいなくなった男がいた 試合をしたくてもチャレンジャーが現れない 日々の鍛錬を欠かさないが 実戦の機会がない状況に男は苛立ちを隠せなかった

ある日 いつものようにジムで汗を流していると 突然目の前が真っ白になった 次の瞬間 男は見知らぬ世界に立っていた 周囲を見渡すと 中世ヨーロッパのような街並みが広がっている

「ここはどこだ」 男が呟くと 背後から声が聞こえた 「初めまして 異世界からの旅人さん」 振り返ると そこには美しいエルフの女性が立っていた 「私はこの国の騎士 リーリャと申します あなたをお待ちしていました」

話を聞くと 男はボクシングの強さが災いして 異世界に召喚されたらしい この世界には勇者が必要とされており 男の力が頼りにされているという リーリャは男に協力を求めてきた

「ボクシングの強さが必要とされている世界があったとはな」 男は苦笑しながらも 新たな世界での戦いに胸を躍らせた リーリャに導かれ 男は冒険の旅に出発した

道中 リーリャから この世界の脅威について聞かされる 魔物が跋扈し 平和を脅かしているという 「私の剣術とあなたのボクシングで 必ず平和を取り戻しましょう」 リーリャの言葉に 男は力強く頷いた

森を抜けた先で 男たちは魔物の群れと遭遇した リーリャが剣を抜く間もなく 男はボクシングの構えを取った 「まずはお前らから倒していくか」 男は拳を握り締め 魔物に向かって突進した

ボクシングの技術は異世界でも通用した 次々と魔物を倒していく男の姿に リーリャは驚きを隠せない 「あなたの腕前は本物ですね」 二人は息の合った連携で 魔物の群れを撃退した

冒険を続ける中で 男とリーリャの絆は深まっていった お互いの技を教え合い 戦いの中で信頼を育んでいく 男はボクシングをさらに磨いていった

ついに男たちは魔王の城に辿り着いた 「ここまで来られたのは あなたのおかげです」 リーリャが男に告げる 「いや 俺一人じゃ何もできない お前との出会いがあったからこそだ」 男はリーリャの手を取り 決意を新たにした

魔王との戦いは熾烈を極めた リーリャの剣さばきと 男のボクシングの連携が功を奏し 魔王を追い詰めていく 最後の一撃を放った男は ガッツポーズで雄たけびを上げた

「私たちやったわ」 リーリャが男に抱きついてくる 「ああ 俺たちの勝利だ」 二人は歓喜に包まれた 平和を取り戻した世界で 男はリーリャと新たな冒険に旅立つことを誓った

「俺はボクシングを続ける でも それと同じくらい大切なものを見つけた」 男はリーリャを見つめながら言った 「あなたとの冒険は かけがえのない思い出です これからもずっと一緒にいてください」 リーリャはうれしそうに頷いた

かくして 男は異世界でボクシングの強さを発揮し 魔王を倒してリーリャと冒険を続けることになった 現代に戻る方法はまだわからないが 男にはそれほど急ぐ気はなかった 新しい世界で リーリャとの毎日が楽しみでしかたないのだった

『PCM/月狂四郎』

PCM
月狂四郎
ルナティック文藝社
2020-04-19


 物語に予言は付き物だ。シェイクスピアの『マクベス』みたいなものもあれば日本昔話の『卒塔婆の血』みたいにナンセンス予言もある。『PCM』もまたナンセンス予言タイプかもしれない。主人公の五郎は亀田三兄弟を思わせるボクシング家庭に生まれて、スパルタ戦士さながらの力こそ全ての世界で育つのだが、ある日父親は息子達にこう言い放つ。

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「お前たちはボクシングで大成できなければ死ぬだけだからな」

 その予言通り五郎が家出=ボクシングからの卒業を目指すと人生が暗転し始め、途中で色々あるが闇の地下闘技場で勝たなければ死という状況に追いつめられる。
 ちなみにこの闘技場、闇だけあってグローブに石膏が仕込んだ選手が出てきて、対戦相手を無慈悲に打ちのめす場面を最初に見せられる。何でもありというわけだ。

 しかし、五郎は負けたら死という状況で、なぜか卑怯な手は使わない。ボクシング上の駆け引きはしても、グローブに石膏は流さないし、ブレイクの後に後ろから奇襲をかけたり、血を相手の顔に吹きかけたり、相手の足を踏んでラッシュをかけることもない。ただ勝ちたいのではなくボクシングで勝ちたいのだ。

 ここでまた父親の影が出てくる。

 実はこの主人公が家出した理由というのが、自分が見つけた異質なボクシングスタイルで兄に勝ったのに父親に叱られたからなのだ。反発しているようでいて、実は死んでも父親の言う通りになっている。こう書くと父親が毒親のようだが、彼の異質なボクシングは素人にはともかく、プロに全然通用しないのである。フリッカージャブを打つたびにピンチに陥っていく。とうとう最後の砂川という男と戦った時には、全然通用しなくて万策尽きてしまう。

 やくざを得意のフリッカージャブで打ちのめして逃げる手もあったのに、戦いを選んでしまうのは体に染みついた父親の予言をなぞってしまったのかもしれない。

 そうだ。父親ではないが父親のようなことをする人間がいる。それは地下闘技場でやくざが用意したセコンドの日下部だ。彼は五郎の父親とは違って、口は出すし、手も出す(ミットを着けた手で)。

 父親の予言通り五郎がボクシングで大成して幸せを掴むのか、失敗して死ぬのかはどうでもよくて、究極のところ五郎が予言を無視できるかに尽きるんじゃないのかな。

 さて、実はもうこれ以上は書くことがない。

 結局『PCM』ってなに? ということだが、

 ・・・・うん、そうだな・・・・

 それはつまり・・・・
人生・・・・だあっ!
キャシアスクレイのグローブ

(未完)

このマンガがオススメなんだ。闇の闘技場が出てくるんだ。



※余談だが題名の『PCM』とはパチンコで負けたの略らしい。それと表紙はえっちだけど、えっちしない。

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