(ボクシングが強すぎて異世界に逝ったらエルフの女騎士と冒険に出ることになった おわり)
エルフ
(ボクシングが強すぎて異世界に逝ったらエルフの女騎士と冒険に出ることになった おわり)
(つづく!)
ある日 三人は魔王軍団の残党に襲われる しかしシローの拳とリーリャの剣により あっという間に敵を撃退する
平和が戻ったかに思われたが そこに一人の女ドワーフが近づいてくる
〜第6章:愛の告白〜
魔王との戦いから数日後、俺は重大な決意をする。
ティアナへの想いを、きちんと伝えようと。
あの戦いを通して、彼女への気持ちが確かなものになったのだ。
もはや、このまま黙っているわけにはいかない。
「よし、決めた。今日こそ、ティアナに告白するぞ!」
鏡の前で気合を入れる俺。
だが、いざ告白となると、やはり緊張は隠せない。
「で、でも…うまく言葉に出来るか、自信ないな…」
そんな時、愛音から連絡が入る。
「もしもし、健二君? 今日ちょっと話があるんだけど、会えない?」
「え? あ、ああ…でも、今日は予定があって…」
「ダメ? たった5分でいいの。お願い!」
愛音の懇願に、俺はつい了承してしまう。
ティアナへの告白は、その後でいいだろう。
指定された喫茶店で、俺は愛音の到着を待つ。
ドアが開き、愛音が姿を現す。
いつもと違う、少し大人びた雰囲気だ。
「ごめんね、待たせちゃって」
「い、いや、大丈夫だ。で、話って何だ?」
俺の問いに、愛音は一瞬躊躇したあと、口を開く。
「健二君は…ティアナさんのこと、好きなの?」
「え?」
愛音の言葉に、俺は目を丸くする。
まさか、そんな質問をされるとは…。
「あの、その…俺は…」
「ごめん、聞かなかったことにして。…でも、健二君。私、負けないから」
そう言い残して、愛音は店を後にした。
残された俺は、しばし放心状態。
「は? 今のって、愛音からの宣戦布告!?」
一方その頃、ティアナは深い考え込んでいた。
(健二のやつ、最近やけに私を意識しているな…まさか、私への想いに気づいたか?)
巨乳を揺らしながら、街中を歩くティアナ。
道行く男たちの視線を集めながらも、彼女の頭の中は健二のことでいっぱいだ。
(ふふ、ならば少しからかってやるか。健二の反応が楽しみだ)
そうしてジムに向かうティアナの前に、怪しい集団が立ちはだかる。
「おっと、美人さんだな。俺たちと遊ばないか?」
「ふん、どこの馬の骨とも知れぬ輩に、私が付き合うものか」
不敵な笑みを浮かべるティアナに、男たちは苛立ちを隠せない。
「生意気な! 俺たちを誰だと思ってやがる!」
男の一人が、ティアナに拳を振り上げる。
だが、彼女はその腕を軽々と掴むと、男を地面に叩きつける。
「ぐはっ!」
「これだから、鍛錬を積んでいない男は困る。精進が足りんぞ」
残る男たちにも容赦ない連打を浴びせ、ティアナは悠々とその場を立ち去る。
「健二も、もっと鍛錬を積まねばな。…ふふ、でも、今の彼はなかなかいい男だ」
そうしてジムに到着すると、そこには固唾を飲んで待ち構える俺の姿があった。
「ティアナ、話がある。ちょっと外に出られるか?」
「ほう、私に何の用だ?」
ティアナを連れ出し、人気のない公園へと向かう。
心臓の高鳴りが、俺の緊張を物語っている。
「ティアナ、実は俺…お前のことが、その…」
「何だ、はっきり言え。私はそういうのは嫌いだぞ」
「う…わかった。ティアナ、俺は…お前が好きだ! 付き合ってくれ!」
言葉に詰まりながらも、俺は必死に想いを告げる。
するとティアナは、にやりと不敵な笑みを浮かべた。
「ふん、よくぞ言ってくれた。私も健二のことが気に入っている。…まあ、私の夫にふさわしいとは思っていたがな」
「え? じゃ、じゃあ…」
「ああ、私も健二のことが好きだと言っているのだ。私たちは、夫婦として相応しい」
そう言って、ティアナが俺の唇を奪う。
「む…!?」
柔らかくも、力強い感触。
ティアナの巨乳が、俺の胸に押し付けられる。
「ふふ、これで健二は私の物だ。異世界に持ち帰ってもいいくらいだな」
「ちょ、ちょっと待て! お、俺はまだこの世界で…」
そんな俺たちの様子を、物陰から愛音が見つめていた。
「健二君…でも、私の気持ちは変わらない。負けない、負けないんだから…!」
愛音の瞳に、強い決意の炎が灯る。
ティアナへの対抗心を燃やしながら、彼女はその場を後にした。
「健二、これからは二人で鍛錬だ。そして、私と一緒に異世界へ来い」
「いや、だからそこまでは…」
「ふふ、私からは逃げられないぞ。健二は私だけの物なのだから」
幸せそうに微笑むティアナ。
俺はこの巨乳剣士に翻弄されっぱなしだが、それもまた悪くない。
きっと、彼女と一緒なら、どんな困難も乗り越えられる気がするのだ。
「愛音にはちゃんと話をつけないとな…」
「ふん、あの女とは敵対関係にあるからな。容赦はせんぞ」
「いや、そこは穏便にいこうよ…」
そんなやり取りをしながら、俺たちは手を繋いで歩き出す。
これから先、どんな日々が待っているのか。
わからないことだらけだが、胸の高鳴りは止まらない。
ティアナとの幸せな未来を、俺は心から願うのだった。
〜第7章:新たな日常〜
魔王との戦いから数週間が経ち、街には平和が戻ってきた。
俺、伊藤健二とティアナ・シルバーリーフの新たな日常が始まる。
ティアナとの甘い日々に、俺は有頂天だ。
だが、そんな平和も長くは続かない。
「健二、貴様は怠けすぎだ。もっと鍛錬を積まんか」
「ちょ、ちょっと待て! 魔王を倒したばかりだろ? 休ませてくれよ」
「ふん、そんな甘い考えでは、いつ敵に襲われるかわからんぞ」
容赦ない特訓を強いるティアナ。
その巨乳を揺らしながら、俺に襲いかかってくる。
「痛っ! わ、わかったって! 付き合うから!」
「その意気だ。私と手合わせをしろ」
鋭い剣撃の応酬。
微塵の隙もない攻防に、俺は必死だ。
「くっ…お前、本気か!?」
「当然だ。お前は私の夫なのだから、相応の力量が求められる」
得意げに言い放つティアナ。
そう、俺とティアナは夫婦になったのだ。
正確には、異世界の掟により、魔王討伐を共にした者同士は結ばれるのだという。
「だ、だからって容赦ないだろ! 愛情はどうした!」
「愛情? そんなものこそが甘えだ。お前を鍛え上げることが、私の愛情だと心得よ」
「は? そんな恐ろしい愛情、聞いたことねえよ!」
文句を言いつつも、俺はティアナの想いに騙されていく。
彼女なりの愛情表現なのだと、そう信じたいのだ。
そんなある日、愛音が俺に話しかけてきた。
「ねえ健二君、聞いて欲しいことがあるの」
「愛音? どうしたんだ?」
「私、健二君のことが本当に好きなの。ティアナさんに負けたくない!」
真剣な眼差しで、愛音は俺に想いを告げる。
「だから、健二君とデートがしたいの!」
「で、デート!?」
唐突な申し出に、俺は狼狽える。
そりゃあ愛音は可愛いし、デートも悪くはないが…。
「ふん、私の夫に何を企んでいるのだ」
その時、背後からティアナの声がした。
「て、ティアナ! い、いや、これは…」
「私抜きでデートだと? 健二、貴様…」
怒気を孕んだ声に、俺は背筋が凍る。
「ち、違うんだ! 愛音が言い出したことで…」
「言い訳無用! 不貞の罰として、覚悟せよ!」
ティアナが剣を抜く。
マジかよ、俺の細胞が震える。
「ひ、ひいい! ごめんなさい!」
「ふん、許さん! 覚悟!」
容赦ない斬撃が、俺に襲いかかる。
なんてこった、ティアナの怒りは凄まじい!
「ま、待って! ティアナさん、私は健二君を幸せにしたいだけなの!」
「幸せ? お前如きに、私の夫の何がわかる」
「…健二君の本当の気持ちを、あなたはわかってあげられてるの?」
愛音の言葉に、ティアナは剣を止める。
「…何だと?」
「だ、だからさ、ティアナ。俺は別に愛音とのデートを望んでるわけじゃ…」
「黙れ健二。確かに、私は健二の気持ちを深くは理解できていなかったのかもしれん」
ティアナが俯く。
その巨乳が、俺の視界に収まる。
「ティアナ…?」
「私はな、健二。元々、異世界の掟に従い、お前を夫としたのだ。だが、お前との日々を通し、私自身もお前を真に想うようになった」
ティアナの瞳に、強い想いが宿る。
「私はお前を、心から愛している。だから、お前の本当の幸せを、もっと真摯に考えねばならぬ」
「ティアナ…俺も、お前のことが…」
「わかった。健二、愛音とのデートを許可しよう」
「え? ほ、本当に?」
「ただし、私も同行させてもらう。異議は認めん」
ティアナの雄々しい宣言に、愛音も俺も唖然。
「ふふ、これで公平というものだろう? 健二の本当の想いは、このデートで明らかになるはずだ」
そう笑うティアナに、俺は溜息をつく。
ティアナ節健在だが、彼女の真摯な想いは伝わってくる。
こうして、俺と愛音、ティアナの奇妙な三人デートが実現した。
街を歩けば、道行く人々が振り返る。
「なあ、あの巨乳の美女は誰だ? モデルか何かか?」
「いや、見ろよ。凄腕の戦士って感じがするぜ」
ティアナの存在感は、やはり際立っている。
「ティアナさん、あんまり目立っちゃ困るんだけど…」
「ふん、大声を出すな愛音。私は普通に歩いているだけだ」
「いや、明らかに浮いてるから…」
二人のやり取りに、俺は苦笑する。
女の バトルは、なかなか厄介だ。
だが、二人に愛されている幸せを、俺は噛みしめずにはいられない。
突如、悲鳴が街に響き渡る。
「キャー! 助けて!」
見れば、獣のような化け物が街の人々を襲っていた。
「あれは…魔王の残党か!?」
ティアナが身構える。
異世界の戦士は、敵の気配を敏感に察知する。
「健二、愛音、下がっていろ。私が相手をする」
「ば、バカを言うな! 俺も戦う!」
「私も! 健二君を守りたいの!」
俺とティアナの決意に、愛音も加わる。
ティアナは一瞬躊躇したが、すぐに頷いた。
「…わかった。だが、危なくなったらすぐ退くのだぞ」
「おうよ! 行くぞ、ティアナ、愛音!」
「うん! 負けないわ!」
俺たち三人は、化け物に立ち向かう。
剣、拳、蹴りが、次々と化け物を薙ぎ払う。
「さすがは健二君! 頼もしいよ!」
愛音に背中を預けながら、俺は必死に戦う。
だが、なかなか化け物の数は減らない。
「くそっ、こいつら…何匹いるんだ!?」
「健二、焦るな! 奴らの急所を狙うのだ!」
ティアナの助言で、俺は我に返る。
そうだ、数で劣る以上、質で勝負するしかない!
「ティアナ! 背中を任せる!」
「ふん、男らしくなってきたな! 任せておけ!」
俺とティアナはコンビネーションを組み、化け物を次々と討伐する。
愛音も、持ち前の柔軟性で敵をかく乱する。
「よし! あともう少しだ!」
「健二君、気を付けて!」
最後の化け物を前に、俺は全力の拳を叩き込む。
「喰らえええ! 俺たちの平和をぶち壊す奴は、許さねえ!」
渾身の一撃が、化け物の急所を貫いた。
「グオオオオ!」
絶命の断末魔を上げ、化け物は消えていく。
街に、歓声が沸き起こる。
「やったぞ健二君! ティアナさん!」
勝利に喜ぶ愛音。
だが、俺とティアナの顔は曇っている。
「どうやら、魔王の脅威は去ってはいないようだな」
「ああ、まだ気が抜けねえ。だが、俺たちは…」
「そうね。私たち三人なら、どんな敵でも倒せるはず」
愛音も頷き、俺たちは固く手を結ぶ。
新たな日常は、常に脅威と隣り合わせだ。
だが、俺にはもう、仲間がいる。
たとえ敵が何者であろうと、俺たちの絆が、きっと勝利をもたらしてくれるだろう。
数日後、ジムでの一コマ。
「健二、集中が足りん! もっと腰を落として構えろ!」
「ああもう、わかったよ! さっきから言ってるだろ!」
相変わらず、ティアナの特訓に付き合わされる日々。
「健二君、頑張って! 私、応援してるから!」
そんな俺を愛音が励ましてくれる。
「ったく、こんな日々がいつまで続くやら…」
文句を言いつつも、俺はこの日常が嫌いじゃない。
「…なあティアナ。お前、なんでこの世界に来たんだ? それに、なんで俺なんかを?」
ふと、ティアナに聞いてみる。
「フン、忘れたのか? 異世界の掟で夫になったのがお前なのだ。文句があるのか?」
確かに、そうだったな。
「いや、そうじゃなくて…俺みたいな奴を選んだ理由が知りたいんだ」
「…………」
ティアナの顔が、一瞬物憂げに見えた。
「それは、健二。私の心が、お前を求めたからだ。お前は私の理想であり、私の生きる希望なのだよ」
優しく微笑むティアナ。
その笑顔を、俺は初めて見た気がした。
「ふざけるな。理想だの希望だの、大袈裟すぎるだろ」
「ふん、嫌ならやめてもいいんだぞ? 代わりはいくらでもいる」
「…俺は、お前じゃなきゃダメなんだ。お前と出会えて、本当に良かった」
素直な俺の言葉に、ティアナが目を見開く。
そして、まるで少女のように頬を赤らめる。
「バ、バカを言うな…///」
照れるティアナに、愛音も微笑む。
「ティアナさんも、素直じゃないんだから」
「う、うるさいぞ愛音! 貴様も鍛錬に付き合え!」
「えええ!? 私まで!?」
慌てふためく愛音に、俺は大笑いだ。
「ハハハ! こんな日々も、悪くないよな!」
「健二、お前も笑っていないで鍛錬だ! 覚悟しろ!」
「はいはい、わかったよ旦那!」
こうして、俺たち三人の賑やかで、愛に満ちた日々は続いていく。
時にぶつかり合い、支え合いながら。
俺は、この幸せな日常が、ずっと続くことを願うのだった。
(おしまい)
〜第4章:三角関係の行方〜
俺、伊藤健二。元ボクシング日本チャンピオンにして、今はジムの経営者兼トレーナーだ。
そんな俺の前に突如として現れたのが、異世界から来た巨乳美女の騎士団長、ティアナ・シルバーリーフ。
一方、ジムに通うOLの愛音は俺に好意を寄せているらしく、ティアナを恋のライバルだと意識している。
…なんて状況だ。
日常は瞬く間にファンタジーへと染め上げられ、ドタバタの日々が始まった。
「我が夫よ、朝のトレーニングの時間だ。さっさと起きんか」
「んあああ…! ってティアナ、お前俺の部屋で何してんだ!」
目覚めた俺を出迎えるのは、ティアナの豊満すぎるバストだった。
「何とは何だ。妻たる者、夫の寝顔を見守るのは当然のことだろう」
「だから夫じゃねえ! って、お前その格好は何だよ!」
そう、ティアナときたら全裸にエプロン姿だというのだ。
もはやギリギリすぎて、何も隠せていない!
「フン、偶然にも愛音のやつから『裸エプロンで男を誘惑する』という戦術を聞いたのだ。どうだ、参ったか?」
「参ったも何も、俺はそういうのは愛音とだな…」
がしっ! と俺の顔面にティアナの拳が炸裂する。
「浮気は許さんぞ、この不届き夫!」
「いてえ! 何すんだ! いきなり殴るな!」
頬を押さえながら文句を言うと、ティアナは不敵な笑みを浮かべた。
「ほう、私に反抗するつもりか? いいだろう、まずは朝の組手といこうではないか!」
「おいおい勘弁してくれ! 俺、今日は仕事が…」
「先日の敵襲で散々だったお前の姿を見れば、特訓の必要性は明白だ。さあ、覚悟!」
容赦ない蹴りが俺の顔面を襲う。
ティアナの戦闘力の前では、俺の全盛期でさえ歯が立たない。
「うおお! 分かった、付き合うから! せめて外でやろうぜ!」
「ふん、場所など関係ない。お前は私に捧げられた存在なのだからな」
なんて理不尽な…。
こうして俺の苦悩に満ちた朝が始まるのだった。
ジムに向かう途中、俺は愛音と出くわした。
「あ、健二君…おはよう」
「よお、愛音。珍しいな、こんな時間に」
「ちょっと早起きしちゃって。健二君は…」
チラリとティアナを見る愛音。
二人の間に一瞬、奇妙な沈黙が流れる。
「ふん、こんなところで何をしている。早く特訓を始めんか、健二」
「ちょ、ちょっと待てって! 愛音とは久しぶりに会ったんだから、ゆっくり話したいだろ?」
「私は許可しないぞ。お前は今日一日、私の手中にあるのだからな」
ティアナの凄みに、思わず固まる俺。
「健二君、私…応援してるから。だからティアナさんと、楽しんできてね」
「あ、愛音…」
寂しそうに微笑む愛音に、俺は言葉を失った。
こんな、すれ違いっぱなしでいいのか?
「ほら、行くぞ健二! 朝一番のスパーリングだ!」
「お、おう…じゃ、愛音。また今度…」
「うん、気をつけて」
小さく手を振る愛音の姿に、胸が締め付けられる思いだった。
ジムでは、容赦ないティアナの特訓が待っていた。
「 このダンベルをもったままスクワットを100回だと!?」
「当然だ。この程度で音を上げるな。ほら、もっと下まで落とせ!」
ギリギリまで膝を曲げさせられ、地獄のようなトレーニングが続く。
その間、リングでは暇を持て余したティアナがスパーリングをしていた。
「ふん、この程度の男では私の相手にならんな」
ボクサーたちを次々と打ち倒す巨乳の女騎士。
その姿はまさに圧巻で、ジム中が彼女に釘付けだ。
「健二、お前も私とやるぞ」
「はあ!? 流石に無理だって!」
「これは特訓だ。真剣に来い!」
ティアナの剣が俺に迫る。
必死で避け、カウンターを狙うが、彼女の動きは俊敏すぎた。
「くっ…こんなの絶対おかしいだろ…」
「甘いな健二。私はまだ本気を出していないというのに」
まるで遊ばれているようで、俺の自尊心は打ち砕かれていく。
ティアナの強さの前に、俺は無力すぎる。
そんな時、ジムの扉が開いた。
「健二君、話があるの…って、ってええええ!?」
そこには、愛音の姿があった。
しかし彼女の目の前で、俺はティアナに組み伏せられていた。
「愛音、これは特訓だからな。誤解するなよ」
「ふん、特訓だと言うなら仕方ないか。見てろ愛音、私が健二を鍛え上げる姿を」
楽しげに告げるティアナ。
だが、愛音の表情は曇っていた。
「ごめん、邪魔したみたいね。健二君、また…」
「ま、待ってくれ愛音! 俺はお前と…」
立ち去る愛音を追いかけようとするが、ティアナに腕を掴まれ、身動きが取れない。
「どこに行くつもりだ。特訓はまだ終わっていないぞ」
「離せってんだ! 愛音を置いていくわけには…」
俺の心は葛藤に満ちていた。
ティアナを受け入れるべきなのか、愛音の元へ行くべきなのか。
自分の気持ちが、どちらに傾いているのかもわからない。
「俺は…俺は一体、何をすればいいんだ…」
込み上げてくるモヤモヤを抑えきれず、俺はその場に崩れ落ちた。
ティアナと愛音、二人の想いに挟まれ、身動きが取れない。
このままじゃ、俺は何も前に進めないじゃないか…!
〜第5章:魔王襲来〜
ある日、いつものようにジムで特訓に明け暮れていると、外から凄まじい爆発音が聞こえてくる。
「な、なんだ!?」
俺は驚いて窓の外を見やる。
そこには、巨大な魔物の姿があった。
「まさか…私の予感は的中したようだな」
ティアナが険しい表情で呟く。
「どういうことだ? お前、何か知ってるのか?」
「ああ、あれは間違いなく魔王軍の残党だ。奴らはきっと、この世界を魔王軍の支配下に置こうと画策している」
そう言えば、以前公園で襲われた時も、ティアナは同じようなことを言っていた。
「でも、お前が倒したんじゃないのか?」
「あれはほんの一部に過ぎん。本隊はこれから現れるはずだ」
ティアナの言葉に、俺は戦慄する。
こんな異世界の戦争に巻き込まれるなんて…。
「健二、行くぞ」
「は? どこに?」
「決まっている。魔王軍と戦うのだ」
ティアナは迷いのない眼差しで俺を見つめる。
いつもの巨乳が、今は頼もしく見えた。
「ちょ、ちょっと待て! 俺は戦えるわけないだろ!」
「お前は私の夫だ。共に戦うのが務めだろう」
「だからお前の夫じゃねえ!」
言い合いをしている間にも、魔物の数は増えていく。
このままじゃ、街が壊滅してしまう…!
「健二君!」
その時、愛音が駆け寄ってきた。
「愛音、危ないから離れろ!」
「でも…健二君も危険じゃない! 私、健二君を守りたいの!」
涙を浮かべる愛音の姿に、俺は胸が締め付けられる。
「愛音…」
「ふん、こんな時に情に流されるとは。私の夫としてあるまじき行為だな」
容赦ないティアナの一言。
だが、そんな彼女も、愛音を案じているのは明らかだった。
「…わかったよ。俺も行く」
「健二君!」
「健二、そう来なくては」
俺の決意に、二人は驚きと嬉しそうな表情を浮かべる。
「よし、そろそろ行くか。健二、私の後について来い」
「ちょ、鎧もなしで!?」
「お前には私という盾がある。それだけで十分だ」
強気なティアナに、俺は溜息をつく。
…でも、なんだかんだ言って、心強い味方だと思ってしまう自分がいる。
そうして、俺たちは街の中心へと向かった。
そこには、魔王軍の大群が待ち構えていた。
「喰らえ! 愚かな人間どもめ!」
魔物たちが一斉に襲いかかってくる。
「ふん、行くぞ健二!」
ティアナが颯爽と剣を振るう。
巨乳を揺らしながら、次々と魔物を斬り伏せていく姿は、まさに圧巻だ。
対する俺は、必死で後方支援に回る。
拳では魔物に歯が立たないことは、もう思い知った。
「健二、後ろだ!」
ティアナの声に振り向くと、巨大な魔物が俺に迫っていた。
「うわあああ!」
咄嗟に身をかわすが、間一髪のところで魔物の爪が俺の腕を掠める。
「く、くそお…」
傷口から血が滲み、痛みが走る。
このままじゃ、俺はティアナの足手まといになってしまう…!
「健二君、しっかりして!」
駆け寄ってきた愛音が、俺の傷口を必死に押さえる。
「すまん…愛音。俺は、役立たずで…」
「そんなことない! 健二君は、頑張ってるじゃない!」
愛音の言葉に、俺は我に返る。
そうだ、俺だって戦えるはずだ。
ティアナのためにも、愛音のためにも、俺は強くならなきゃいけない!
「ティアナ! 俺に武器を貸してくれ!」
「よく言った。ほら、これを使え」
ティアナが差し出したのは、銀色に輝く短剣だった。
俺は短剣を手に取ると、魔物へと向き直る。
「覚悟しろ、魔物ども! 俺は…俺はもう逃げない!」
拳から武器に持ち替えた俺は、新たな気持ちで戦いに臨む。
ティアナの指導のおかげで、少しは剣の扱いを心得ていた。
俺の短剣が、次々と魔物の急所を突く。
「いいぞ健二! その調子だ!」
「健二君、頑張って!」
二人の声援を受け、俺は勇気百倍だ。
魔物の数は減っていき、形勢は俺たちに傾いていく。
「くっ、気持ち悪い人間めが…私の美しき世界を汚すな!」
その時、魔物の大群を押しのけるようにして、一人の男が現れた。
黒いローブに身を包み、禍々しいオーラを放つ男。
間違いない、あれが魔王その人だ。
「ようやく顔を見せたか、魔王よ」
「ティアナ…いつまでも私から逃げ続けるつもりか」
二人は剣を交えながら、睨み合う。
まるで、因縁の対決のようだ。
「お前の野望は、私が必ず打ち砕いてみせる!」
「ふん、望むところだ。人間など、私の玩具に過ぎぬ」
魔王の剣撃は凄まじく、ティアナも一歩一歩押し込まれていく。
このままでは、ティアナが…!
「ティアナ!」
俺は魔王に向かって短剣を投げつける。
「ぬうっ!」
不意打ちに魔王は一瞬怯む。
その隙に、ティアナの剣が魔王の急所を貫いた。
「ば、馬鹿な…私が、ティアナめに…」
「これで終わりだ、魔王よ。二度と、私たちの前に姿を現すな」
ティアナの凛とした声が、戦場に響き渡る。
魔王は絶命し、残る魔物たちも一斉に崩れ去っていった。
「やった! 勝ったぞ健二君!」
歓喜の声を上げる愛音。
俺も思わずガッツポーズをとる。
「ああ、やったな! ティアナ、俺たち…」
振り向いた先には、疲労の色を隠せないティアナの姿があった。
俺は慌てて駆け寄り、そっと彼女の体を支える。
「無茶しやがって…でも、よくやった」
「ふん、誰に言われる筋合いもないだろう」
そう言いながらも、ティアナは嬉しそうに微笑む。
その笑顔を見て、俺は改めてこの巨乳女騎士に惹かれていることを実感するのだった。
「よし、みんなジムに戻るぞ。今日はとことん飲もう!」
「ええ、そうね。みんなで乾杯しましょ!」
「ふん、たまには付き合ってやるか」
戦いを終えた俺たちは、笑顔で凱旋の歩みを進めるのだった。
魔王との戦いを通して、俺とティアナの絆は深まったように思う。
これからは、もっと彼女のことを理解していきたい。
そう心に誓うのだった。
(つづく)
第1章:異世界騎士団長、現る!
「ただいま〜」
いつものように玄関のドアを開けて家に入ると、そこには信じられない光景が広がっていた。
リビングのど真ん中で、銀髪碧眼の美女が堂々と立っているではないか!
しかも、その服装ときたら、まるでファンタジー世界から飛び出してきたかのような鎧に身を包み、腰には長剣までぶら下げている。
一体何なんだ、この状況は?
「お、お前は誰だ?」
思わず声を上げると、美女はこちらを見下ろすような目線で言い放った。
「私はティアナ・シルバーリーフ。精霊王国の騎士団長よ。ここが貴様の住処で間違いないな?」
「は? 騎士団長? 精霊王国? って、お前、人の家に勝手に上がり込んでおいて、その態度はなんだよ!」
思わず突っ込みを入れると、ティアナと名乗った女は不敵な笑みを浮かべた。
「ふん、私を受け入れる準備はできているはずよ。だって、貴様は私の夫になる男なのだから」
「は? 夫? 俺が? 何言ってんだ、お前!」
頭の中が「?」マークでいっぱいになる。
夫だって? 俺は独身だし、この女とは初対面だ。
一体何を言っているのか全然わからない。
「ええい、わけのわからん事を言ってないで、とっとと出ていけ! 不法侵入だぞ!」
「ほう、私を追い出すつもりか。いいだろう、その覚悟、見せてもらおうではないか」
そう言うと、ティアナは長剣に手を伸ばした。
マズい、こいつ、本気で戦うつもりか?
慌てて身構えると、彼女は不敵な笑みを浮かべ、剣を抜いた。
「受けて立て、我が夫よ!」
「だから夫じゃねえっての!」
間一髪で剣をかわし、反撃の突きを繰り出す。
だが、ティアナは軽々とそれを避けると、逆に斬りかかってきた。
「なっ!」
彼女の剣捌きは速すぎる。
このままじゃ分が悪い。
何とか間合いを取ろうと下がると、足が何かに引っかかって、派手にコケてしまった。
「情けないぞ、伊藤健二。私が異世界から転生してきた理由、貴様にはわかっているはずだ」
「は? 転生? そんな設定聞いてねえよ!」
ティアナが剣を突きつけながら詰め寄ってくる。
完全に形勢不利だ。
このままじゃ、マジでヤバい!
と、そこに救世主が現れた。
「ちょっと、ティアナさん! 何やってるんですか!」
ドアを開けて飛び込んできたのは、愛音だ。
彼女は呆然とした表情で、俺とティアナを交互に見ている。
「邪魔をするな! これは私と健二の問題よ!」
「問題も何も、初対面の男に剣突きつけて、夫だの何だの言ってるあなたが間違ってるに決まってるでしょ! ねえ、健二君!」
うわ、愛音の鋭い突っ込み! さすがだ。
「お、お前、何者なんだ? 健二の女か?」
今度はティアナが愛音に剣を向ける。
いかん、巻き添えを食らわせるわけにはいかない!
「ち、違う! 愛音は俺のボクシングジムに通ってる会員で…」
「ほう、私への挑戦を望むというのか。いいだろう、相手になってやろうではないか」
「ひ、人の話を聞けっつーの!」
頭を抱えながら、俺は狼狽した。
こんな異世界人の登場から始まるドタバタな日常、誰が予想しただろう。
だが、男として、ここは愛音を守らねば!
「ティアナ、愛音には手を出すな! 俺が…俺が相手になる!」
「健二君、何カッコつけてんの? 私だって武道の心得くらいありますよ」
愛音が苦笑しながら構える。
なんだ、俺の格好良いところ見せようと思ったのに…ちょっとガッカリだ。
「二人まとめて相手になってやろう! この剣がいったいどれほどの物か、味わうが良い!」
「だからぁ、味わいたくないって! もう、誰か助けてくれ〜!」
「私たちで何とかしましょう、健二君! さあ、かかってきなさい、ティアナさん!」
こんな調子で、果たして平和な日常は訪れるのだろうか。
だが、ティアナという予測不能な存在が現れた今、退屈だけはしなさそうだ。
〜第2章:ジムに潜む影〜
「おい健二、大変だ!」
ジムに着くなり、翼が慌てた様子で駆け寄ってきた。
「なんだよ、どうしたんだ?」
「山田が、お前のジムを潰すって言い触らしてるらしいぞ!」
山田、あの野郎…!
うちのジムつぶしに躍起になってるって噂は聞いていたが、まさか本当に動き出すとはな。
「ふざけんな! このジムは俺の夢なんだ。誰にも潰させるか!」
怒りに任せて拳を握りしめる。
「でも、山田は連盟の幹部だろ? 下手に逆らったら…」
「それでも黙ってられるか! 俺は正々堂々と戦うだけだ」
翼の心配ごともっともだが、ここで引くわけにはいかない。
そこへ、例の騎士団長が颯爽と現れた。
「どうやら厄介な敵が現れたようだな、我が夫よ」
「だから夫じゃねえって! それに、お前は関係ないだろ」
「ふん、私に関係ないことなどない。お前が望むなら、山田とやらを叩きのめしてやろう」
はあ? マジで言ってるのか、こいつ。
「バカ言うなよ。暴力では何も解決しねえ。俺は俺のやり方で戦う」
「何だ、その弱気な態度は。まあいい、好きにするが良い」
ティアナは不服そうに言うと、すたすたとジムの中に入っていった。
「健二君、大丈夫?」
心配そうに覗き込む愛音の顔。
「ありがとな。でも、俺は負ける気はねえよ」
「無理しちゃダメだからね。私も協力するから」
少し安心した様子の愛音に笑顔を向けて、俺はジムに向かった。
山田の野郎、どんな手を使ってくるかわからねえが、負けるものか。
俺にはこのジムを守る義務があるんだ。
必ず守り抜いてみせる!
その日の夕方、例の山田が怪しいツラした連中を引き連れてジムにやってきた。
「伊藤、お前のジムはもう終わりだ。あきらめろ」
開口一番、上から目線で言いやがる。
「ざけんな! 俺のジムを潰させるもんか!」
「それはどうかな。用意周到というやつさ」
不敵な笑みを浮かべる山田。
裏でいろいろ根回ししてきたらしい。
「お前如きに負けるわけにはいかねえんだよ!」
「言ってろ。お前の意地なんざ、こんなもんで折れてやる」
山田の合図で、例の連中が俺に襲いかかってきた。
この野郎! 卑怯な真似しやがって!
「健二君!」
愛音が悲鳴を上げる。
心配かけまいと思ったが、一人じゃきつい…!
「クソッ、卑怯者め! やるならフェアにやれ!」
「フェア? ああ、リングの上じゃ俺もフェアにやるさ。だが、ビジネスはそうはいかねえ。弱肉強食なんだよ」
「ふざけた考えだと思わねえのか! ボクシングの精神に反するぞ!」
俺の言葉に、山田はあざ笑った。
「ボクシングの精神? そんなもん、金にはかなわねえよ」
この野郎…!
「いい加減にしろ! お前みてえな奴に、ボクシングを語る資格はねえ!」
怒りが頂点に達し、俺は山田に殴りかかった。
だが、すぐさま取り押さえられ、身動きが取れない。
クソッ、こんなところで…!
「伊藤、お前の負けだ。観念しろ」
「まだだ…! 俺は、諦めない…!」
「健二君! 健二君!」
愛音の叫び声が、遠くに聞こえる。
すまない、愛音…。
俺は、こんなところで…。
「諦めるな、健二。まだ戦えるはずだ」
不意に、ティアナの声が響いた。
「てめえは…遅せえよ…!」
「ふん、お前一人で何とかできると思っていたのだろう。甘い考えだ」
そう言って、ティアナが剣を抜く。
山田の手下どもが、怯んだ様子で後ずさる。
「何だ、お前は!」
動揺を隠せない山田。
ざまあみやがれ。
「俺の夫を痛めつける罰として、叩きのめしてくれる!」
おい、勝手に夫認定すんな!
「お前ら、何をしている! あの女を押さえろ!」
山田の号令で、手下どもがティアナに襲いかかる。
だが、彼女は軽々とかわして反撃。
次々と薙ぎ倒していく。
「な、何だと…!」
あっけにとられる山田の前に、ティアナが立ちはだかった。
「山田とやら、どうやら只者ではないようだな。健二への妨害、ここまでにしておけ」
「ば、馬鹿な…! 俺は、負けるわけには…!」
「ならば、私が相手になろう。かかってこい!」
剣を構えるティアナに、山田は怯んでしまった。
結局、大したことねえのな。
「く、覚えてろ! 伊藤! お前のジムは必ずつぶしてやる!」
そう捨て台詞を吐いて、山田は逃げ去った。
ざまあみやがれ。
「ティアナ…助かった。礼を言う」
「ふん、礼を言われる筋合いはない。私は私の夫を守っただけだ」
「だから夫じゃ…」
「健二君! 怪我は!?」
駆け寄ってくる愛音。
確かに痛いところはあるが、大丈夫だ。
「心配かけてすまなかった。もう大丈夫だ」
「もう、心配で心配で…! 一人で何とかしようとしないで!」
「ああ、わかった。次からは助けを求めるよ」
俺の言葉に、愛音は安堵の表情を浮かべた。
本当は格好悪いとこ見せたくなかったんだけどな…。
「ふん、私抜きでは何もできない、頼りない夫だな」
「てめえ、礼を言ったばかりだろうが!」
「ほら、ケンカしないの!」
愛音に叱られ、俺は頭を掻いた。
「わかったよ。もう、仲良くしようぜ」
「仲良くだと? 私は別に…」
照れくさそうに顔を背けるティアナ。
こいつ、素直じゃねえんだから。
「ほら、ティアナさんも! 健二君のために力を貸してあげてよ」
「…わかったわ。健二の役に立つなら、私は協力しよう」
「助かるよ、ティアナ。これからよろしくな」
「ふん、当然だ。私は精霊騎士団長だからな」
まあ、異世界がどうだとか、よくわかんねえけど。
「愛音も、これからもジムに通ってくれよな」
「もちろん! 健二君と一緒に頑張るんだから!」
ティアナと愛音、二人に支えられた俺は、新たな気持ちで山田に立ち向かう決意を固めた。
俺のジムを、絶対に守り抜いてみせる!
〜第3章:すれ違う心〜
ジムでのトレーニングを終えた俺は、ふと愛音の姿が見当たらないことに気づいた。
「おい翼、愛音は今日来てないのか?」
「ああ、どうも最近はあまり顔を出してないみたいだぜ」
そういや、ここ数日、愛音とゆっくり話せてなかったな…。
一方、ティアナは相変わらずジムに入り浸っている。
「我が夫よ、そろそろ真剣に私と組手をしてみないか?」
「だから夫じゃねえって! それに、お前とやったら俺の骨が幾つ折れるかわかったもんじゃない」
「ふん、どうせ怪我をするなら、私の手によるものがいいだろう?」
はあ? どっちも御免だ。
だが、ティアナはニヤリと笑うと、突然俺に向かって剣を振るってきた。
「おわっ! 危ねえだろ!」
「私を本気にさせたお前が悪い。さあ、覚悟!」
容赦ない攻撃の嵐。必死でかわすも、切りつけられ、突き飛ばされる。
「く…、参ったな…」
「まだまだ甘い! 次は容赦せんぞ!」
「もう勘弁してくれ…」
息も絶え絶えに倒れ込む俺。
ティアナはまだ余裕の表情だ。
やれやれ、こんなので夫だの何だの言われてもなぁ…。
ふと、ドアの方に目をやると、愛音が立っていた。
「あ、愛音…」
「ごめん、邪魔だったみたい。また今度来るね」
そう言って、愛音はするりとドアの向こうに消えてしまった。
おい、待ってくれよ!
「ほう、あの女が帰ってしまったな。ならば、邪魔者もいないことだし、存分に鍛えてやろう」
「だからもう勘弁してくれって! 俺、愛音のとこ行ってくるわ」
「何だと! 私より、あの女が大事なのか!」
怒り心頭のティアナに、俺は必死で言い訳した。
「そ、そういうわけじゃねえけど…。ただ、愛音が何か悩んでるみたいだから、ちょっと話を聞いてやりたいんだよ」
「ふん、私には関係ないことだ。勝手にするがいい」
そう言って、ティアナはプイッと横を向いた。
まったく、分かり合えねえな…。
俺は急いでジムを飛び出し、愛音を探した。
公園のベンチで座り込んでいる彼女を見つけ、そっと近づいた。
「愛音…」
「あ、健二君…」
愛音は寂しそうな表情で俺を見上げる。
「どうしたんだ? 最近、ジムに来てないじゃないか」
「ごめんなさい…。私、健二君のことが…」
俯いて言葉を濁す愛音。
まさか、俺に気があるのか…?
「健二君は、ティアナさんが好きなんでしょ? 私なんか、きっと邪魔なだけだから…」
「ば、バカ言うなよ! 俺は別にティアナのことは…」
「でも、あんなに一緒にいるじゃない。私より、ティアナさんの方が健二君に合ってる気がして…」
愛音の瞳に、涙が滲む。
俺は思わず彼女の手を取った。
「愛音、聞いてくれ。俺にとって大事なのは…」
その時、公園に恐ろしいオーラを放つ一団が現れた。
愛音の悲鳴に、公園にいた人々が一斉に逃げ出す。
だが、正体不明の一団は容赦なく人々に襲いかかる。
次々と魔法のようなものを放ち、建物を破壊していく。
「クソッ…! こいつらには俺が食らいついてやる!」
「ダメよ健二君! あなたの拳法じゃ敵わない!」
愛音に止められるが、男としてここで引くわけにはいかない。
俺は屈強そうな怪物めいた連中に向かって突進した。
「てめえら! こっちへ来やがれ!」
だが、いくら頑張っても、魔法のようなものを打ち破ることはできない。
あっけなく吹き飛ばされ、地面に叩きつけられる。
「がはっ…! く、そ…」
「健二君!」
愛音が駆け寄ってくるが、もはや俺には立ち上がる力もない。
その時、颯爽とティアナが現れた。
「ふん、どこの馬の骨だかわからんゴミ虫どもが、私の夫に指一本触れることを許さん!」
「夫…だと…? お前は誰だ!」
「私はティアナ・シルバーリーフ。異世界の精霊王国から来た騎士団長にして、健二の妻となる運命の女だ」
堂々と言い放つティアナに、怪物めいた連中が怯む。
「精霊王国だと!? まさか我らが倒したはずの…!」
「そうだ。そしてお前たちは、あの愚かな魔王に付き従っていた悪しき存在。もはやお前たちに存在価値はない!」
そう言うと、ティアナは稲妻のような速さで敵に斬りかかっていった。
次々と斬り伏せていく姿は、まさに騎士団長の風格だ。
「なんて強さだ…」
「ティアナ…さん…」
俺と愛音は、唖然としながらもティアナの戦いぶりを見守る。
魔王軍の残党は、あっというまに全滅させられた。
「ふん、所詮はこの程度か。健二、大丈夫か?」
「あ、ああ…。助かった…」
俺は情けない姿を晒してしまったが、ティアナは気にする様子もない。
「私がいる限り、お前に指一本触れさせはせん。安心して私に身を委ねるがいい」
「お、お前…」
その言葉に、思わず胸が熱くなる。
こいつは、俺のことを本気で思ってくれているのか…。
「健二君、ごめんなさい…。私、勘違いしてた…」
シュンとした表情の愛音。
「愛音…」
「ティアナさんのことも、健二君のことも、応援するから。だから、もう私のことは気にしないで」
そう言い残して、愛音はその場を去っていった。
「おい、愛音!」
俺は思わず彼女を追いかけようとしたが、ティアナに腕を掴まれて止められた。
「彼女には、整理する時間が必要なのだろう。お前が追うべきではない」
「でも…!」
「それに、お前にはもっと大事なことがあるだろう? 私との特訓だ」
そう言って、ティアナは剣を俺に突きつけた。
「…わかったよ。付き合ってやる」
「ふん、それでこそ我が夫だ。さあ、いくぞ!」
「だから夫じゃねえ!」
ティアナに振り回されながらも、俺は愛音への思いを胸に秘めた。
いつか、ちゃんと伝えなきゃな…。
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