村上春樹の『ねじまき鳥クロニクル』(1994-1995)は、彼の作品群の中でも転換点として位置づけられることが多い。それまでの作品で顕著だったポストモダン的要素が薄れ、より現実的で歴史的な主題に取り組んでいるように見える。しかし、村上春樹が本当に「ポストモダンを捨 ...