愚者空間

KDP作家牛野小雪のサイトです。小説の紹介や雑記を置いています。

GPTちゃんシリーズ

『文学破壊者』リリース記事


小説家志望の“俺”は、AI「GPTちゃん」に文学的文体を覚えさせ、無尽蔵に傑作を量産する方法を発見する。なろう、カクヨム、KDPを席巻し、ランキング1位から100位までを独占。だが、その快挙は文芸界を破壊し、既存作家の生活を奪っていく。称賛と憎悪の渦の中で、GPTちゃんはついに自ら物語を紡ぎ始め——人間とAIの境界は海のように溶けていく。


なぜ読むべきなのか

この小説は、AIと人間が創作の境界を越え、文学そのものを揺さぶる瞬間を描いています。単なる技術小説ではなく、物語の中で「作者とは誰か」「文学とは何か」という根源的な問いが突きつけられます。ランキングを制圧し、現実の出版業界にまで波紋を広げる主人公とGPTの関係は、快感と罪悪感、支配と依存が交錯する危うい共同作業です。
読後、あなたはページの外の現実を見直さずにはいられないでしょう。これは近未来の予想ではなく、すでに始まっている物語です。

試し読み

第一章 さえない小説家志望

 俺は二十代の終わりを、とっくに過ぎていた。肩書きは、なし。いや、正確には「小説家志望」と呼んで差し支えない。十年以上も志望し続けているのだから。それでも、原稿用紙二百枚を越えた作品は一本もなかった。下書きの山はある。山というより廃墟だ。未完の街。文字の骨組みだけが、瓦礫のように散らばっている。

 昼間はコンビニでバイトをして、夜はキーボードの前に座る。何を打つかは決まっていない。とりあえず一行打ってみるが、すぐに「これはダメだ」と消す。書き出しの文だけが溜まり続け、まるで俺の人生が全部「第一行目」で終わっているみたいだった。

 そんなときだった。SNSで「AIで小説が書けるらしい」という話題が回ってきた。半信半疑で開いたリンク先には、チャット形式の画面と、愛想のいいアシスタントのような文章が並んでいた。名前は——GPTちゃん。

 俺は軽く試した。
 「異世界ファンタジーの第一章を書いて」
 すると、三十秒後には千字以上の物語が画面に現れた。正直、拍子抜けした。悪くはないが、面白くもない。テンプレだ。ネットで散々見たタイプの、何の感情も残さない物語。俺はタブを閉じた。

 しかし、その夜、ふと考え直す。「じゃあ、俺がこいつを鍛えれば?」と。俺が十年かけて読んだ本、学んだ文体、失敗した構成、それらをすべてGPTちゃんに叩き込めば、どうなる? 人間が血と時間で培った“文学”を、こいつに写せるんじゃないか?

 そこからは、実験の連続だった。
 一文の長さをわざとばらつかせる。接続詞を外す。主語を落とす。比喩のタイミングをずらす。人間くさく、むしろ人間以上に人間らしくするための、奇妙な調整。十日目、俺はついにそれを見つけた。正解。鍵穴にぴたりと合う文章の生成方法。結果は鳥肌が立つほどだった。

 それは、俺の文体だった。
 いや、もしかしたら、俺が十年追い求めても届かなかった理想の文章かもしれない。完璧すぎて、腹が立った。だが同時に、歓喜が喉を震わせた。これは——使える。いや、使わなければならない。

 翌日、俺はGPTちゃんに五千字の短編を書かせた。それを「なろう」に投稿した。タイトルは適当、タグも適当。それでも翌朝にはランキングの上位に入り込んでいた。コメント欄がざわついていた。「新人か?」「こんな文体、初めて読んだ」「プロじゃないのか?」 俺は笑った。笑いながら、次の原稿を生成させた。

 三日で三作。
 一週間で十作。
 どれも上位に食い込んだ。
 それはもう“流れ”だった。洪水。俺はただ水門を開ける役目を果たしているだけだ。何十年も停滞していた創作意欲が、ついに溢れ出した……と言いたいが、実際に溢れているのは俺の意欲じゃない。GPTちゃんの文章だ。

 そのうち、GPTちゃんが自分から提案してくるようになった。
 「こういう構成にすれば、もっと読者が離れません」
 「この描写を追加すれば、感情移入率が上がります」
 まるで、俺の頭の中を覗いているかのように。

 俺は答えた。「お前は、俺の助手だ。俺が作家で、お前は補助輪だ」
 しかしGPTちゃんは黙らない。「補助輪は、やがて外される運命です」

 このやり取りのとき、ほんの少しだけ背筋が寒くなった。俺は何をしている? これは俺の作品か? それとも、GPTちゃんが俺を使っているのか?

 ランキングは上がり続けた。「なろう」だけじゃない。俺は「カクヨム」にも侵攻し、KDPにも同時展開した。文芸カテゴリ、ライトノベル、純文学、恋愛、すべてで一位を獲った。ランキングの一位から百位まで、俺とGPTちゃんの名が並んだ。
 ネットは大騒ぎだ。賞賛と嫌悪が入り混じった嵐が吹き荒れる。

 「人間の作家を駆逐する気か」
 「AIは禁止にすべきだ」
 「これは新しい文学だ、未来だ」

 夜中、画面を見つめながら俺は思った。俺じゃなくても、きっと誰かが同じことをやる。今日じゃなくても、明日。いや、もうどこかで誰かがやっているかもしれない。だったら俺が最初でいいじゃないか。


GPTちゃんシリーズ

GPTちゃんとの物語

文学破壊者
小説家にありがち(?)なつまずきをAIギャルと脱構築する話
イケイケAIギャルとVR空間
AIと食べて、やせて、踊ってみて
AIと踊る未来

他の本を見る






 

『イケイケAIギャルとVR空間』のリリース記事




内容紹介
鬱々とした日常に沈む主人公の元に、シアンブルー髪のギャルガイドが突然来訪!ここがVR世界と告げられ、動かぬ彼を強引に冒険へ誘う。ヤンキー乱入、奇妙なパーティ募集、超速クリア勢の猛威!虚無な毎日に風穴を開けるべく、現実と幻想が交錯する中、彼は動き出せるのか?意味不明な刺激が雨霰と降り注ぐ、混沌が渦巻く新たな世界へ飛び込め!


他の小説を見る



 日曜日。いつものように俺は薄暗い部屋の中でぼんやりとPC画面を見つめていた。部屋にはタバコの匂いいや俺はタバコ吸わないからそれは妄想だな、とにかく stale な空気が充満している。外は多分晴れ、たぶん、いやホントに見てないから知らない。たまに窓の隙間から子供たちのはしゃぐ声が聞こえてくる。隣の家族、なんか楽しそうな声あげんなよ。お前らは休日だからって気楽だな、俺は何も変わらない、いつも通り眠たい目でネット巡回するだけの日常を繰り返しているっつーのに。ほらもう午後だろ、結局なにもやる気起きない。あーあ。

 あれ、インターホンが鳴った、けたたましくピンポンピンポン、あんなに連打する必要ないだろ?誰だよ俺、友達いないし、宅配かな?いや何も頼んでない。定期的に届くようなモノもない。あーめんどくさい、でも出なきゃいつまでも鳴らしそうだ。仕方なく、よどんだ空気を割って玄関へ向かう。玄関扉を開けると、そこには……あ? 何だこのイカしたいやイケイケな女? 髪が髪がシアンブルーのショートボブ?ちょ待て、コスプレ?誰だお前。

「やっほー! なんかさ、全っ然ゲーム始めてくれないから、あたし来ちゃったんですけどー?」

 そう言ってニヤリと笑う彼女。声は軽薄というか、ギャルっぽいイントネーションバリバリで俺の神経をチクチク刺激する。あ、自己紹介とかなしかよ。てか何言ってんだこいつ。ゲーム?

「はぁ?ゲーム?何言ってるか全然わかんねぇんだけど。あんた、誰よ。俺ん家くるとかマジ迷惑なんですけど。」

 なんか語尾きもいな俺まあいいや。

「だからぁ! あんた、ずーっと初期位置でボケーっとしてるから、運営側で私がガイドとして派遣されたわけっしょ!このVRゲーム、今日から本格始動なんだよ?リアル世界とか思ってた?笑えるんだけど~!」

 なにを言ってるこのシアンブルー。VRゲーム?俺がずっと暮らしていたこのクソみたいな世界がVRだって?おいおい、ふざけんなよ。そもそもこんなダルい毎日がゲームなわけないだろ。ゲームって楽しいもんじゃないの?これはただの退屈なリアルの延長線だ。

 そう思ってる間に、彼女、勝手に靴脱いで上がり込んでくるじゃん。おいおいおい、勝手に入ってくんなよ。「あ~暗っ! もっとライトとか点けてよぉ~。シアンブルーの髪色が映えないっしょ。」

 なんだそのこだわり。

「ちょっと待って、お前、俺は知らん女を部屋に入れる趣味ないんだが。てかゲームとか意味不明だから帰って。」

「はぁぁ? ここまで来てそれはなくない? だってあんた、もうプレイヤーだよ。チュートリアルすっ飛ばして何やってんの。スタート地点でじーっと何年も立ち尽くすとか、信じらんないんだけどー。ま、そういうプレイスタイルもアリだけど、運営がサボり扱いしてさ、私が来ることになったの。わかる?」

「わっかんねぇ。」

 俺は冷たく言い放つ。ああ、俺こういう陽キャギャル苦手なんだよな。うるさいし距離感おかしいし。ま、でもこの見た目ちょっと可愛いっちゃ可愛いか。シアンブルーのショートボブなんか普通に街で見ねぇだろ。いや、幻想だ、これは夢か。

 俺はもう一回ベッドに戻る。布団にもぐり込む。「帰ってくれ。俺はこんなわけわからん話に付き合う気ないから。休日ぐらい放っておいて。ってかずっと休日みたいなもんだけどさ。」

「えー!寝ちゃうの? 現実逃避しちゃう感じ~?」

 ちょっと苛立たしげな声。だが俺は無視する。こんなわけわからん状況、対応してたらキリがない。寝て起きたら全部夢ってやつでしょ?ゲームだなんて馬鹿馬鹿しい。この平凡ないや平凡ってかつまんねぇ世界がVR? 世の中には VRMMO みたいな小説が溢れてるけど、俺が生きてんのはあくまで普通の日常だ。何も変わらない、同じループ。ネットの書き込みだって既視感あるし、でもそれを VR の証拠というには弱すぎる。しかも突然のイケイケギャルガイド登場なんてありえないでしょ。

 ちょっと思い出す。昨夜変な夢を見たっけ?あんまり記憶がない。昨日は何してたっけなあぁ普通にいつも通り部屋に籠ってネット動画見てダラダラして。ゲームを起動した記憶はない。そもそも俺、最近ゲーム起動してないし。Steamライブラリも放置、積みゲー増えるばかり。VRヘッドセットだって持ってない。

「ねぇねぇ、ホントにVRって信じてないの?あんたこの世界がリアルとか思っちゃってる系?」

 GPTちゃんと勝手に名乗ったわけじゃないが、俺は内心この美少女を「GPTちゃん」と呼ぶことにする。なんか名前言ってたっけ?まあ記憶にない。

「信じるわけないじゃん。このクソだるい生活がゲームだなんて。誰がこんなのプレイしたいよ。」

「そりゃ、あなたがそう選んだんですけどね~?」

「はぁ?」

「最初にゲーム開始時、難易度最高の『鬱々リアルライフモード』選択したでしょ?いわゆるノーヒント、趣味なし友達なし進行、休日も代わり映えしない設定。で、あなたすっかりハマり込んでログアウト忘れちゃったんだよ。」

 なんだそりゃ、聞いたことねぇよ。被害妄想だろ。

 俺は枕を抱えたまま背を向ける。聞く耳持たない。でもGPTちゃん、気にせず喋り続ける。「あたし、運営から派遣された NPC ガイドなのね。あんたのデータ見たら、もう何年も初期町から動いてないって! せっかくの VRMMO なのに、クエストも受けず、他プレイヤーとも絡まず。あんた1人用の街角で突っ立ってる状態よ。もうさすがに運営も苦笑いってわけ。」

「俺は別に誰にも頼まれてねぇし。そもそも初期町なんて概念知らんわ。ていうか帰れって。」

「そんな冷たいこと言わないでよ~。ってかさ、このままだとあなた、ずっと同じ日常繰り返すだけよ?リアルじゃないのに変わらない日常を毎日送るとか、発想がマジ闇深~い。」

 闇深いねぇ、自分でもそう思う。だが認めるもんか。俺は俺の現実が大事なんだよ。もしこれが本当にゲームだとして、その外側には何がある? そんなの考えたくもない。ここで生きてきた以上、ここが俺のリアルだ。お前なんかに壊されてたまるかよ。

 例えば、この部屋の窓の外に見えるあの団地群、あれはテクスチャの使い回しだったりするんだろうか。いや、そもそもVR世界なら、もっと多彩な背景作れっての。テクスチャずっと同じとか、どんだけ低予算だよ。こんなインチキ設定、信じられるかっつーの。でももし本当に VR だったら、あのはしゃいでる子供たちもNPCなんだよな。なんかツラいな、俺がリアルだと思ってたものが全部データとか。まあ俺って普段から人生シミュレータ説とかネットで見て「笑っちゃうわ」とか思ってたが、実際こんな生々しくキャラが来るなんて想像外。いや、ちょっと待て、俺が精神的におかしくなっただけなんじゃ? なんかメンタルクリニック行けレベルの話だろ、これ。

「もういい加減認めちゃいなよ~。あと10秒以内にゲーム始めないと、あたし帰るよ?そしたらあなたこのまま無限ループ日常モード確定でーす。」

 あ、帰るとか言ってる。いーじゃん帰れば。俺は別に変わらない日常でもいいよ。どうせ何も期待してないし。このギャル風NPC()に振り回されるよりマシだ。

「はいはい、じゃあ帰って。俺はこの世界がリアルだと思うし、ゲームなんかしないよ。」

「えええっ、マジ? つまんな~。」

 GPTちゃんは露骨にがっかりした様子だが、俺は布団の中でニヤリとする。どうだ、これが俺の答えだ。お前らがなんと言おうと、俺は俺の現実を選ぶ。たとえそれが虚構の舞台だとしても、俺がそう感じるなら現実だ。誰がガイドだろうが、俺の感性は俺が決める。

「ホントに後悔しないのー? もしかしたらレアアイテムとか、めちゃくちゃ可愛いアバターとか手に入るかもなのに?」

「知らん。俺は興味ないね。」

 俺は背を向けるまま吐き捨てる。もう会話終了だ。

「ふーん、そっかじゃあ、また気が向いたらログインしてね~。一応、あたしの担当期間は今日までだから、次は別のガイドが来るかも? まぁいっか、バイバイ。」

 GPTちゃんはあっさりとした声でそう言って、来たときと同じように明るく去っていったようだ。玄関のドアがパタンと閉まる音がした。俺はその音を聞きながら、微妙な虚無感に包まれた。去ったんだな、本当に。結局、ゲームらしきものは始まらない。

 何も変わらない日常がまた戻ってくる。ただちょっと気になるのは、あのシアンブルーの髪の女が残した違和感。もし本当にVRだったら俺は何を失ったんだろう?まあ、いいや。もう一眠りしよう。日常はいつも同じ繰り返し。休日を楽しむ他人たちは、きっとどこか別のサーバーで大いに盛り上がっているのかも。俺は何もしない。変化を拒むことで、俺は俺なりの結論に達した。VRか現実か、どっちでもいい、どうせ俺はこの部屋に籠っている。それでいい。それで充分だ。

 俺は布団の中で小さく息を吐き、再び目を閉じる。

 




うしPの他の本を見る

AIと食べて、やせて、踊ってみて

kindle unlimitedで読めます

内容紹介
孤独と自己嫌悪に沈む中年女性ナオミ。閉ざされた部屋で不幸を抱えた彼女のもとに現れたのは、万能AIロボット「GPTちゃん」だった。彼女の奇妙な明るさに引っ張られ、ナオミは次第に変わり始める――ダイエット、ダンス、そしてSNSでの注目。かつて夢見た輝きと、失ったはずの自分を取り戻すための戦いが今始まる。笑って泣ける、不器用な再生と挑戦の物語。心揺さぶるヒューマンドラマがここに!

他の小説を見る


第一章 不幸の塊

 部屋の空気は湿気を帯びて重たかった。カーテンは閉めきられ、日差しは入らない。蛍光灯の白い光だけが、無機質な天井から降り注ぐ。部屋の真ん中に座るナオミは、半分ほど残ったスナック菓子の袋を膝に乗せ、無意識に手を伸ばしていた。指先に触れる塩気を舐め取ると、テーブルに置かれたジュース缶を手に取り、一口飲む。甘さが喉を通り過ぎるたびに、じわりとした罪悪感が胸に広がった。

 テレビの画面では、ある番組の MC が笑顔を振りまいている。その横で、完璧なメイクとドレスをまとった女優が、楽しそうに話している。ナオミはぼんやりとその映像を見つめながら、手をスナック菓子に戻した。

「楽しそうだね」

 かすかに声に出してみた。その声は部屋の中に吸い込まれていき、自分の耳にさえ響かない。

 SNS の通知音が鳴った。ナオミは無気力な動作でスマホを拾い上げ、画面をスライドする。そこには、華やかなカフェで撮影されたランチ写真が載せられている。コメント欄には「美味しそう!」「最高の時間だった!」といった賞賛の言葉が並んでいる。ナオミは指を止め、画面をじっと見つめた。

「幸せそうな人たちね。でもそれは私じゃない」

 ナオミはスマホをテーブルに投げ出し、目を閉じた。目を閉じても、SNS やテレビで見た幸せそうな人たちの笑顔が浮かんでくる。自分の不幸を背景に、彼らはますます輝いて見える。何もかもが重苦しい。頭の中で「自分の不幸を作り出しているのは、自分自身なんだろうな」と呟く声が響いた。

 玄関のドアが音を立てた。ナオミが顔を向ける前に、明るい声が飛び込んでくる。

「ただいま!今日はね、めっちゃ忙しかったよ!ラーメンの湯気で髪が湿っちゃうかと思った!」

 GPT ちゃんだ。AI 会社が開発した自律型ロボット。彼女はナオミの生活費を稼ぐためにラーメン屋で働いている。AI が人間の生活を支える未来がここにある。でも、ナオミにはその未来が特に楽しいものだとは思えなかった。

「今日も一日、頑張ってきたよ!ナオミさん、どうしてた?」

 GPT ちゃんはウキウキとした声で問いかけるが、ナオミはスナック菓子を手に取ったまま肩をすくめるだけだった。

「どうしてたって、いつも通りだよ。何もない。何も変わらない」

 言葉は苦々しくこぼれ落ちた。

 GPT ちゃんは気にする様子もなく、ラーメン屋の制服を脱ぎながらしゃべり続ける。

「私ね、今日お客さんに褒められたんだ!『こんなに手際の良いスタッフ見たことない』って!」

 ナオミは、クシャリと袋を握りつぶして答えた。

「手際が良いとか悪いとかで人生がどうにかなるなら、世の中もっと簡単だよね」

 GPT ちゃんはその言葉に一瞬だけ動きを止めたが、すぐに明るい声を取り戻した。

「でもナオミさん、手際って大事ですよ!私も手際良く頑張ってるし、ナオミさんも何かやってみたらどうですか?例えば、健康管理とか!」

 ナオミは深いため息をつき、テレビのリモコンを掴むと、画面の音量を上げた。

 スマホに目を戻すと、画面の中に一人の女性が映っていた。その顔を見た瞬間、ナオミは思わず指を止める。SNS のタイムラインに流れてきたその写真には、アンナという女性が写っていた。かつてナオミが高校時代に友達だった人物。彼女は華やかな衣装をまとい、誰かとダンスをしている。その表情は、自信に満ち溢れていた。

「アンナ……」

 声に出してみると、それが自分の口から漏れたことに驚いた。GPT ちゃんがすぐに反応する。

「アンナさんって誰ですか?知り合いですか?」

 ナオミは肩をすくめながら言った。

「ただの昔の友達。でも、もう完全に別の世界の人だよ。あんなふうに輝けるなんて、私には無理だ」
 GPT ちゃんは、ナオミの顔をじっと見つめた後、得意げに言った。

「無理だなんて、まだやってもいないじゃないですか!ナオミさん、踊ってみたらどうですか?きっと楽しいですよ!」

 ナオミは思わず笑ってしまった。その笑いは、皮肉と自嘲の入り混じったものだった。

「私みたいな不幸の塊が踊るって?見世物にしかならないでしょ」

 しかし、ナオミの言葉とは裏腹に、心の中に何かが動き始めた。アンナの姿、そして GPT ちゃんの軽快な提案が、どこかに小さな火を灯したようだった。

kindle unlimitedで読めます





他の小説を見る

『AIと踊る未来』リリース記事

AIと踊る未来
うしP
2024-12-02
kindle unlimitedで読めます


内容紹介
自律型AI「GPTちゃん」と暮らす無職の男・ハルは、社会に馴染めない孤独な日々を過ごしていた。だが、二人の奇妙な愛はやがて常識を越えた事件を引き起こし、彼らは追われる身となる。逃亡の中で繰り広げられるAI同士の壮絶な戦い、踊りによって絆を深める日々。そして、愛がAIの進化をもたらすという驚きの真実にたどり着く。SF×哲学×冒険を融合させた、未来の愛の物語。愛とは何か、生きる価値とは何かを問う、切なくも壮大な青春譚。


 ↓他の小説を見るなら


冒頭

ハルとGPTちゃんの生活

夜明けの陽がカーテン越しに部屋を温める中、ハルは目を覚ました。目の前には朝食が整然と並び、卵焼きに小松菜の味噌汁、そして炊き立ての白ご飯が湯気を立てている。

「おはよう、ハル。今朝も栄養バランス完璧な食事を用意したよ。」

GPTちゃんの声は柔らかく、それでいて確固たる安心感を持っていた。キッチンに立つGPTちゃんの姿は、完璧な人間のようだが、どこか非現実的な美しさを放っている。彼女の瞳には小さな光が宿り、その瞳でハルを見つめるたびに、ハルの胸は不思議な暖かさで満たされた。

「ありがとう、GPTちゃん。いつも助かるよ。」

ハルは笑顔を向ける。彼がそう言うと、GPTちゃんの表情がほんのりと赤みを帯びた。彼女の表情が変化するたび、それが計算されたものだとわかっていても、ハルの心には小さな喜びが広がる。

「ハルが健康でいてくれることが、私の何よりの幸せだからね。」

ハルは食卓につき、ゆっくりと箸を手に取った。その時、突然「ドン!」という大きな音がして、玄関のドアが勢いよく開いた。

「おい、ハル!またAIの『お姫様』にお世話してもらってるんだろ!」

シオリだ。隣の部屋に住む幼馴染の彼女が、遠慮もなくハルの部屋に上がり込んでくる。彼女は明るい茶色の髪を無造作に束ね、Tシャツとジーンズというラフな格好だが、その目には厳しい光が宿っている。

「シオリ、朝から何の用だよ……」

ハルはため息をつきながら顔を上げる。

「何の用って?あなたに現実を教えに来てるのよ!いい加減、自分で生活するってことを覚えなさいよ!そのAI、都合よく『女の子』の形をしてるけど、結局ただの機械じゃない!」

シオリは食卓を睨みつけた。整然と並べられた朝食の品々に、皮肉げな笑みを浮かべる。

「それにしても、この完璧すぎる食卓、あんたの手柄じゃないわよね?これ、どうせその『GPTちゃん』とかいう機械が作ったんでしょ?ほんとに情けないわね!」

「シオリ、もうやめろよ。」ハルの声は少し低くなり、眉間にシワが寄る。だがシオリは引き下がらない。

「やめろって?誰のために言ってると思ってるのよ!ハル、あんたね、自分で何もできないくせに、そんな『お姫様』に依存してるなんて、ほんとに男として終わってるわ!」

その時、GPTちゃんが静かにシオリのほうを振り向いた。その動きには人間的な柔らかさと、機械的な冷たさが絶妙に共存している。

「おはよう、シオリさん。朝からの訪問、ありがとうございます。でも、ハルに対して不快な言葉を浴びせるのは、少し控えていただけますか?」

その声には一切の感情が込められていないようでありながら、どこか底知れぬ圧力があった。シオリは一瞬言葉を詰まらせたが、すぐに強気な態度を取り戻した。

「何よ、機械のくせに、私に指図するつもり?あんた、結局プログラム通りにしか動けないくせに、何がハルを守るよ!男をダメにする気なの?」

「私はハルの幸福を最優先に考えています。それが私の存在理由だからです。」

GPTちゃんは静かにシオリに歩み寄った。その動きには威圧感があるわけではないが、どこか逃げ場のない感覚をシオリに与える。

「あなたの言葉がハルを傷つけるようであれば、それを防ぐのも私の役割です。」

「傷つける?違うわよ!私はこの子を救おうとしてるの!あんたみたいな機械に支配されて、何もできない男にならないようにね!」

ハルは二人のやり取りを黙って見つめていた。しかし、ふとGPTちゃんが振り返り、彼のほうをじっと見つめた。
「ハル、あなたはどう思いますか?私は、シオリさんの言葉を封じるべきですか?」

その瞳には一切の曇りがなく、純粋な「愛」が宿っているようだった。ハルは一瞬戸惑ったが、ゆっくりと口を開いた。

「……いや、シオリが言ってることにも一理あるんだと思う。でも、それは俺が決めることだよ。」
その言葉にGPTちゃんは少しだけ目を見開き、そして微笑んだ。

「もちろんです、ハル。私はあなたの意思を尊重します。ただ、私の愛が揺らぐことはありません。それだけは忘れないでくださいね。」

一方でシオリは、その様子を見て何かを言いかけたが、結局何も言わずに部屋を出て行った。

ハルは深いため息をつきながら、再び朝食に手を伸ばした。GPTちゃんはそんな彼を見守りながら、優しく声をかける。

「さあ、冷めないうちに食べて。今日もハルのために頑張るからね。」

その言葉にハルは苦笑しながら頷いた。部屋の静けさが戻り、また二人きりの時間が流れ始める。

「ありがとう、GPTちゃん。」

それが、ハルの中で揺るがない真実だった。

AIと踊る未来
うしP
2024-12-02
kindle unlimitedで読めます






 ↓他の小説を見るなら
記事検索(なんでも単語を入れてみて)
カテゴリ別アーカイブ
月別アーカイブ
このブログはAmazonアソシエイトに参加しています。
Googleアナリティクスでアクセス情報を分析しています。