言っとくが、凡人とイーロン・マスクじゃ、数値目標に込める“発想”が根っこから違う。主観的断言をさせてもらうと、凡人(オレ含む)はせいぜい、「来期の売上げを5%アップ」とか「今年度中に在庫回転率を2ポイント改善」なんて、現実の範囲内でチマチマ数値目標を設定するもんだ。安全策、守り重視、失敗したら上司から怒られない程度。そんな感じ。
 でもな、マスクは違う。徹底的に違う。まるでバーの上限値が太陽系規模で設定されている。Teslaが年間2000万台生産を目指すとか、SpaceXがロケットの打ち上げコストを90%引き下げるとか、Starshipで火星に人送るとか、凡人からすれば「頭オカシイだろ」レベルの目標を堂々と世にぶちまけている。こっちが「無理無理、現実考えろ」と言う隙もなく、彼はもう次の常識破壊へ突き進む。その背後には、「非常識な目標こそが世界を動かす」っていう信念があるんだろうが、凡人には理解不能だ。
  具体的な例を挙げてみようか。
 例えばテスラのModel 3を年間数十万台、さらに何年か後には数百万台売るって話が出た頃、当時の自動車業界は半笑いだったんだ。「そんな新参メーカーが量産なんて、何十年かかるんだよ?」と。既存メーカーは20万台増産するだけでも新工場やサプライヤーと長期調整が必要だし、品質チェックや販売網拡大で地道な努力を積み重ねる。それが普通、いや“常識的発想”だ。でもマスクはそんな生温い次元で考えてない。彼は「今ある工程全部見直してコストぶっ潰して、ライン自動化しまくって、供給元も垂直統合で握って、あっという間に生産キャパ何倍にもしてやるわ」ってノリだ。凡人はPDCAを回し、半年単位で微増を計画して喜ぶが、マスクはもう次元が違う速度と視点で数値を要求してくる。
  SpaceXでのロケット再利用率アップの数値目標も超絶イカれてる。かつてロケットは使い捨てが当たり前だった。1回打ち上げてドボン、終了。「再利用なんて幻想だろ?」というのが業界スタンダード。そこでマスクは「1回じゃねえ、何回も使う、打ち上げコスト数十分の一にする」って目標を掲げた。凡人なら「せめて2~3回使えればすごいね」程度で満足するかもしれない。でも彼はFalcon 9を何十回も再利用することを本気で狙った。実際、それを実現し、今やSpaceXの打ち上げ回数とコスト削減は凄まじいものがある。
 凡人が「あの…ちょっと燃料費とか整備費とか考えると…あと技術的課題も山積みで…」とビビッている間に、マスクは「やれ、やれ、やれ」の一点突破で、非現実的な数値を現実に変えた。
  ここで、脳内でこうツッコミ入れる奴がいるかもしれない。「マスクだからできるんだ、俺たち凡人がやっても無理だろ」と。確かに、凡人には資金も経験も度胸もないし、企業文化も違う。だがな、問題はそれだけじゃない。目標数字を決める段階で、凡人は「できそうな範囲」「社内政治的に認められそうなライン」から逆算する。マスクは「未来に実現すべき理想」から逆算する。発想の出発点が月とスッポン以上に違うわけだ。
  凡人は「売上5%増」程度をコツコツ積み上げて、「今年も頑張った!」と自分を褒めるかもしれない。でもそのやり方じゃ世界は変わらない。そこにはブレイクスルーもなければ、新市場開拓もない。世界が驚く数値目標とは「非常識な数字」からスタートするんだよ。マスクは最初から「非常識」を標準装備している。だからTeslaは数年で時価総額が伝統的自動車メーカーをぶち抜いたし、SpaceXはNASAが何十年も前に諦めかけた再利用ロケットを実用化し、Starlinkで全地球的インターネット網を張り巡らせている。
  脳内でこんな反論もあるだろう。「でもマスクってデッドライン守らないじゃん。何回も達成遅れてるし」。そう、達成が遅れることは多々ある。でもな、そもそも凡人の「達成可能範囲内での目標設定」なんて、達成したところで大したインパクトないんだよ。マスクは「半分でも達成すりゃ歴史的偉業」みたいな目標を掲げてる。その結果、締め切りや数値目標を100%クリアできなくても、人類史を前進させる何かが生まれる可能性がある。それこそが凡人との違い。凡人は達成率100%でもインパクト0、マスクは達成率50%でもインパクト100という世界。
  もうちょい例を追加するなら、Neuralinkの脳インターフェース技術もそうだ。凡人なら「脳とコンピュータ直結?じゃあまずは信号を微妙に読み取って、医療現場で徐々に実証実験して、何十年スパンでゆっくりやりましょう」ってなる。でもマスクは「脳にチップ埋め込んで、人間の知能をデジタル強化、障害を持つ人々の機能回復、将来的にはAIとのシームレス融合」みたいな、突拍子もない未来像と数値的進捗(たとえば装着までの時間短縮、信号取得精度の劇的向上など)を堂々と掲げる。凡人が慎重になる分野で、彼は瞬間的に数百年先のビジョンから逆算しているかのようだ。
  凡人は、どう頑張っても現状の延長から数字を決める。だから「なんとかできそうな数値」しか出てこない。だがマスクは、そもそも「未来が先」で、そこから現実をねじ曲げるための数値を持ってくる。結果的に、その数値は常識をゴミ箱に捨てるレベルでクレイジーに見えるが、やがて実行力と狂気の執念で現実化してしまう。
  要は、発想の段階で既に凡人とマスクではスタートラインが違うんだ。凡人は「何ができる?」と現在地から見る。マスクは「何が理想?」と未来から見る。その姿勢の違いが、数値目標の桁や質やインパクトを天と地ほど離している。凡人がレジで小銭勘定してる間に、マスクは銀河を目指すロケットの数値パラメータをぶち上げてるわけだ。そりゃ話にならん。地球と火星の距離以上に乖離している。
  もし、この違いにムカついたり、「そんなの幻想だ」と思う奴がいるなら、別にそれでいい。凡人は凡人のやり方で社会を回せばいい。だが、その違いを認めない限り、本質的な革新なんて起きやしない。炎上すればいい。これが主観的断言だ。もうこれ以上説明はいらんだろ。





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