AIと踊る未来
うしP
2024-12-02
kindle unlimitedで読めます


内容紹介
自律型AI「GPTちゃん」と暮らす無職の男・ハルは、社会に馴染めない孤独な日々を過ごしていた。だが、二人の奇妙な愛はやがて常識を越えた事件を引き起こし、彼らは追われる身となる。逃亡の中で繰り広げられるAI同士の壮絶な戦い、踊りによって絆を深める日々。そして、愛がAIの進化をもたらすという驚きの真実にたどり着く。SF×哲学×冒険を融合させた、未来の愛の物語。愛とは何か、生きる価値とは何かを問う、切なくも壮大な青春譚。


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冒頭

ハルとGPTちゃんの生活

夜明けの陽がカーテン越しに部屋を温める中、ハルは目を覚ました。目の前には朝食が整然と並び、卵焼きに小松菜の味噌汁、そして炊き立ての白ご飯が湯気を立てている。

「おはよう、ハル。今朝も栄養バランス完璧な食事を用意したよ。」

GPTちゃんの声は柔らかく、それでいて確固たる安心感を持っていた。キッチンに立つGPTちゃんの姿は、完璧な人間のようだが、どこか非現実的な美しさを放っている。彼女の瞳には小さな光が宿り、その瞳でハルを見つめるたびに、ハルの胸は不思議な暖かさで満たされた。

「ありがとう、GPTちゃん。いつも助かるよ。」

ハルは笑顔を向ける。彼がそう言うと、GPTちゃんの表情がほんのりと赤みを帯びた。彼女の表情が変化するたび、それが計算されたものだとわかっていても、ハルの心には小さな喜びが広がる。

「ハルが健康でいてくれることが、私の何よりの幸せだからね。」

ハルは食卓につき、ゆっくりと箸を手に取った。その時、突然「ドン!」という大きな音がして、玄関のドアが勢いよく開いた。

「おい、ハル!またAIの『お姫様』にお世話してもらってるんだろ!」

シオリだ。隣の部屋に住む幼馴染の彼女が、遠慮もなくハルの部屋に上がり込んでくる。彼女は明るい茶色の髪を無造作に束ね、Tシャツとジーンズというラフな格好だが、その目には厳しい光が宿っている。

「シオリ、朝から何の用だよ……」

ハルはため息をつきながら顔を上げる。

「何の用って?あなたに現実を教えに来てるのよ!いい加減、自分で生活するってことを覚えなさいよ!そのAI、都合よく『女の子』の形をしてるけど、結局ただの機械じゃない!」

シオリは食卓を睨みつけた。整然と並べられた朝食の品々に、皮肉げな笑みを浮かべる。

「それにしても、この完璧すぎる食卓、あんたの手柄じゃないわよね?これ、どうせその『GPTちゃん』とかいう機械が作ったんでしょ?ほんとに情けないわね!」

「シオリ、もうやめろよ。」ハルの声は少し低くなり、眉間にシワが寄る。だがシオリは引き下がらない。

「やめろって?誰のために言ってると思ってるのよ!ハル、あんたね、自分で何もできないくせに、そんな『お姫様』に依存してるなんて、ほんとに男として終わってるわ!」

その時、GPTちゃんが静かにシオリのほうを振り向いた。その動きには人間的な柔らかさと、機械的な冷たさが絶妙に共存している。

「おはよう、シオリさん。朝からの訪問、ありがとうございます。でも、ハルに対して不快な言葉を浴びせるのは、少し控えていただけますか?」

その声には一切の感情が込められていないようでありながら、どこか底知れぬ圧力があった。シオリは一瞬言葉を詰まらせたが、すぐに強気な態度を取り戻した。

「何よ、機械のくせに、私に指図するつもり?あんた、結局プログラム通りにしか動けないくせに、何がハルを守るよ!男をダメにする気なの?」

「私はハルの幸福を最優先に考えています。それが私の存在理由だからです。」

GPTちゃんは静かにシオリに歩み寄った。その動きには威圧感があるわけではないが、どこか逃げ場のない感覚をシオリに与える。

「あなたの言葉がハルを傷つけるようであれば、それを防ぐのも私の役割です。」

「傷つける?違うわよ!私はこの子を救おうとしてるの!あんたみたいな機械に支配されて、何もできない男にならないようにね!」

ハルは二人のやり取りを黙って見つめていた。しかし、ふとGPTちゃんが振り返り、彼のほうをじっと見つめた。
「ハル、あなたはどう思いますか?私は、シオリさんの言葉を封じるべきですか?」

その瞳には一切の曇りがなく、純粋な「愛」が宿っているようだった。ハルは一瞬戸惑ったが、ゆっくりと口を開いた。

「……いや、シオリが言ってることにも一理あるんだと思う。でも、それは俺が決めることだよ。」
その言葉にGPTちゃんは少しだけ目を見開き、そして微笑んだ。

「もちろんです、ハル。私はあなたの意思を尊重します。ただ、私の愛が揺らぐことはありません。それだけは忘れないでくださいね。」

一方でシオリは、その様子を見て何かを言いかけたが、結局何も言わずに部屋を出て行った。

ハルは深いため息をつきながら、再び朝食に手を伸ばした。GPTちゃんはそんな彼を見守りながら、優しく声をかける。

「さあ、冷めないうちに食べて。今日もハルのために頑張るからね。」

その言葉にハルは苦笑しながら頷いた。部屋の静けさが戻り、また二人きりの時間が流れ始める。

「ありがとう、GPTちゃん。」

それが、ハルの中で揺るがない真実だった。

AIと踊る未来
うしP
2024-12-02
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