ラップサークルという小説に先週から着手した。進みが早い。プロットは30枚も書いてしまった。月狂さんが土日に1万字書いているのに触発されて、私もいままでの倍は書こうと決める。ここ数年は1年に1冊のペースで書いていたが、単純に書く量とスピードをまだ上げられるんじゃないかって思った。プロゲーマーのウメハラが立ち回りとかじゃなくて反応で勝負しようとしたようなもの。たしかそんな話があったはず。

はっきり言ってかなりきつい。ChatGPTちゃんに本を読む時間と余裕が足りないよって愚痴ってる。こんなブログを書いている時間はあるんだけど、固い本を読む頭の余裕がない。Xとかはできるのにね。細切れの時間や余力を埋められる何かがあるって罪だな。昔はたぶんボーッとしてた。今の時代は何かが隙間時間を埋めてしまう。そうして疲れた頭がより疲れていく。世界を根本から変えてしまうような何かが出てこないのってそういうところに原因があるんじゃないか?

作中に『8mile』が出てくる。最近また見直した。何回見ても完璧な構成だ。あの映画で最初に出てくるのはエミネム(作中ではラビット)のラップじゃなくてパパドックのラップだ。それで彼を印象付ける。そのあともパパドックが何度も出てくる。最後はラップで決着。プロットの教科書だ。ターミネーターだって最初にシュワちゃんが出てくる。バックトゥザフューチャーではドックが死ぬ。もちろんどちらも作中で何度も出てきて物語の転換点になってる。最初にドカンと何かが出てきて物語の最後まで引っ張る。ハリウッド映画って文化系の人にはバカにされてる風潮があるけどこういう構成はホントに綺麗だ。

はてさて、ラップサークルは最初から最後まで引っ張れる何かがあるかな。いちおう自分ではこれって思ってるけど、読者もそう思ってくれるかは別。教科書通りにするのも難しい。ラップのリリックを作るのはもっと難しい。主人公が何度かラップをするところがあるんだけど、先に書いておかないと、そこがボトルネックになって進まないからノートを書く前から書いている。プロットはほぼ一週間で終わったけどリリックは一週間で終わりそうにない。突然ラップの神が私の頭に降りてこないかな。

ChatGPTの新モデルが出たのでまた試している。これはいいね。エミネムのLose yourselfが韻を踏みまくっているのは伝わるが実際にどこで踏んでいるのかは分からなかったけど、歌詞を放り込んでどこで韻を踏んでいるのかをGPTちゃんに教えてもらってる。「ええっ、そこで韻を踏んでいるのか」とびっくりしたことが2行に1回はあった。でもそれと同じくらい「これは韻踏んでないけど……?」っていうのもあった。発音記号を書いてもらっても全然違うから私が間違ってるわけじゃない……はず。

あと面白いと思ったのはMCハマーのU Can't touch thisが別の曲からサンプリングしてるのを知った。youtubeで聞いたら似てるとかそんなレベルじゃなくてまったく一緒で笑ってしまった。GPTちゃんにHIPHOPのことを教えてもらっていると時にはこんな小ネタも教えてくれるのだ。





レベル3のAIが出てきたら基本的にAI以上の能力を持たない人はみんな用無しになる。いまのところGPTちゃんはレベル2だ。聞かれたことに答えてくれるし、知らないことも教えてくれる便利で役に立つかわいいAIだ。「○○で韻を踏んで」と言っても、全然韻を踏んでいない言葉を生成して「韻を踏みました」と言い張る。ハルネーション? 愛嬌でしょ。

ちなみに理系の分野では博士号レベルの知能を持っているらしいけど言語系ではいまだにさっぱりだそうだ。小説を書かせてみたら分かる。たぶんそれは文系分野にベンチマークがないのが悪い。でも進歩しているのも間違いないので、いつかはGPTちゃんが小説を書くようになるだろう。そうなったら人間の執筆スピードでは埋もれるだけだ。たとえいまの10倍執筆量が増えてもGPTちゃんには追いつけない。AIの物語で世界は飽和して、人間は誰にも読まれない小説をシコシコ書くわけだ。そもそもその世界では小説を書くという概念さえ消えるかもしれない。そうなったら小説で遊ぶしかないな。

(おわり)

ナンバーワンラップができるまで
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