新東京都東端駅のホームは、朝の10時を迎え、明るさがしっかりと残っている。太陽の光が窓から差し込み、ホーム全体を照らし出す。周囲の建物や街路樹には、朝の新鮮な光が柔らかく影を落としている。しかし、その明るさの中にもどこか陰鬱な雰囲気が漂っている。人々は疲れた表情を浮かべているが、それでもなお生命力の兆しが感じられる。長い間続いた謎の現象に対する諦めと、微かな希望が彼らの動きに交錯しているようだ。
東端駅には一日に13本の暗黒列車が必ず訪れる。この列車は一日に13回も同じルートを往復しているかは不明だが、第一駅と第二駅までは確実に同じルートを辿っている。第一駅に来るのは24時間に12本とされているが、この矛盾については誰もが理解できていない。暗黒列車は自動で動き、乗員は存在しない。いつ来て、いつ発車するかも誰にも分からない。そのため、乗客たちは常に緊張した面持ちで列車を待つことになる。
リン・チーリンは、いつもの時間に合わせて東端駅に到着する。彼女は冷静な表情でホームに足を運び、静かに列車のドアを開ける。座席に腰掛けると、リンはリボルバーを取り出し、慎重に銀の銃弾を確認する。暗黒の住人に対抗する唯一の手段であり、彼女にとってこれは日常的な準備だった。周囲の乗客も同様に、無言で拳銃やその他の装備を確認している。人々は緊張しながらも、どこか誇りを持って暗黒領域に向かう覚悟を決めている姿が見て取れる。
列車が静かに発車し、東端駅を後にすると、外の景色は次第に暗闇に包まれていく。リンはスマホを手に取ったが、すぐに圏外の表示に変わった。通信が途絶えるのは当たり前のことであり、彼女は特に驚かなかった。かつて5000キロメートルのケーブルを通じて通信を試みたが、虚無に吸い込まれるように消えていったことも記憶に新しい。列車に抱きついて第一駅までの道のりを自分の目で観察しようとした人が何人かいたが、彼らもまた消えてしまった。しかし、第一駅には約10分で到着することは確実だった。
列車の中は静寂に包まれ、時折聞こえる機械音が異様な雰囲気を醸し出している。リンは窓のない車内を見つめながら、淡々と自分の目的を再確認する。ダオを探すための旅は、彼女にとっては日常の一部となっている。周囲の乗客たちもまた、特に緊張することなく、自分の席に座り続けている。
列車が暗黒領域に突入する瞬間、空気が一変する。車内の照明も微かに変わった。リンは再びリボルバーを確認し、冷静さを保ったまま旅を続ける。暗黒領域との空間の断絶は確実であり、彼女はその中で目的をやり遂げる覚悟を持っている。
第一駅に到着すると、列車は静かに減速し、ドアが開く。リンはゆっくりと列車を降り立ち、駅の外に出た。そこには軽薄な赤い色の門がそびえ立ち「アnKbrk町ニュー宿」と不完全な文字が刻まれていた。最初は「暗黒新宿」と呼ばれていたこの場所も、いつしか「暗黒破戒都市ニューダーク」として人々に認識されるようになった。門にはネオンが灯っているが、電線はどこにも見当たらない。どういう原理で光がともっているのか誰にも分からない。ある科学者が電力なしで光るネオン管の秘密を探ろうと、それを持って帰ろうとしたが、いまもまだ帰ってきていない。
門をくぐると、周囲には見覚えのあるようでありながら、どこか異質な町並みが広がっている。過去の情報をいくら調べても、この場所と一致するデータは存在しない。東京と何かが融合したかのような風景は、リンにとっても謎のままだった。
薄暗い町の中を歩き始めたリンは、冷たい風が頬を撫でるのを感じながら、次の目的地へと向かって歩みを進めた。町の通りは静まり返り、時折聞こえる足音や遠くの機械音が異様な静けさを破っていた。リンは周囲を見渡しながら、自分の足取りを確かめるように歩いた。
途中、いつものカフェ「暗黒沼」に立ち寄ることにした。扉を開けると、内部には数人の常連客が静かに座っていた。彼らもまた、疲れた表情を浮かべているが、何かを待ち望んでいるような微かな光を宿していた。リンは一人静かにカウンターに向かい、注文を済ませると、窓際の席に腰掛けた。すると、小汚い男が近づいてきて「武器はぜんぶ渡してもらおう」と言い出した。暗黒領域にすっかり毒されて身なりも不潔なその男にリンは「銀の銃弾を撃ち込む価値はない」と冷たく言い放った。カフェにいる他の男たちは笑い声を上げる。男は恥ずかしそうに顔を伏せて店を出て行った。暗黒領域で武器を手放す馬鹿はいない。
店主が「悪いな。何度か見たことはあるがあんなことを言うとはな」と謝った。リンは「見つかった?」と問いかけた。店主は仕事の斡旋をしている。リンは彼にダオの捜索を依頼している。詳細は知らないが常に5人の男がダオを探しているらしい。結果を聞く前からリンは店主の顔でダオがまだ見つかっていないことを知る。
「暗黒破戒都市ニューダーク」の謎を解き明かすための旅は、まだ始まったばかりだ。リンは静かにリボルバーを握りしめ、次の行動に移る準備を整えた。彼女の目には、確固たる決意が宿っていた。暗黒領域の謎、ダオの捜索—これらが彼女の前に立ちはだかる挑戦であり、彼女はその全てに立ち向かう覚悟を持っていた。
町の中を進むにつれ、リンは次第に「暗黒破戒都市ニューダーク」の真の姿に近づいていることを感じ取った。見覚えのある風景と異質な要素が混在するこの町は、彼女にとっても未知の領域だったが、彼女は迷わずその道を進んだ。薄暗い街灯の下、彼女の足音が静かに響き渡り、次章への期待とともに第一章は幕を閉じた。
(おわり)
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