リングに立つことはある意味ではババ抜きである。リングに立ち続けるためには強いやつに勝ち続けなければならない。勝ったら次の強いやつ、それに勝ったらまた次の強いやつ。ある程度まで登ると相手はみんな努力する天才ばかりになる。もちろん強い。こうして学校で無双していた時代は終わりを告げる。

そこでは苦しみを笑いながら食う人間だけが生き残る。食えないなら弾かれるだけだ。この小説はあらゆる人間が様々な理由でリングを降りていく話である。チャンピョンが一人しかいないように、この小説でも最後にリングに立つのは一人だけだ。孤独な世界だ。

去り方も様々で、最初からリングに入らない。負ける。死ぬ。明るい理由で去る者はいない。それでも立ち続ける。勝っているのに失うものもある。勝負事というのはきびしい世界だ。リングの上では得るものより失うものの方がいいんじゃないかって気がしてくる。

でも、ぶっちゃけそんなことはどうでもいいんだ

”ロブレス”さえぶちのめされればなぁ!

『もう会えぬ君は友とリングへ行く』はロブレスとかいういけすかないボクサーに丈二と新堂の二人が挑むというのが大まかなストーリーだ

試合前にはロブレスがいかにイカれたボクサーかを描写して(こいつやられてくれねぇかな)という感情を煽る。これは大げさに言ってしまえば倒される前振りを与えているということ。メタ的な話をすれば品行方正で尊敬できる奴を倒してもカタルシスがないんだ。小説の悪役はずるくて卑怯であるべきなんだ。そいつを倒してこそ気持ちいいんだ。

ロブレスはメイウェザーみたいなもので彼の試合を見る半分はファンで、もう半分はメイウェザーが負けるところを見たいアンチだ。勝っても得だし、負けてもお得な人物である。どちらにしろロブレスもメイウェザーも存在感を増す。

デカい悪役を倒すところを見たくないか?

丈二と新堂の二人はきっと勝つだろう。

急げっ、乗り遅れるな!

カタルシスを味わうんだ。

(おわり)




こっちもいいぞ!