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いま書いている小説の仮題は『たくぴとるか』である。このままでいいと思う。でもこの手の話題でありがちなのが、作者は長期間同じものを見ているから愛着が湧いているが、始めて見る読者はまったく意味が分からないということある。

まず、たくぴ、と、るか、と読めない人がほとんどだと思う。これが『たくやとるか』ならほとんどの人はそう読めるだろうが、たくぴは人名ではなかなか見ないつづりなので、たくぴとるか、と一続きに読んでしまう可能性はある。

だいたい、ぴ、ってなんだ。ギャルしか分からんだろ。たくぴはたくやの"や"が"ぴ"に変わっているのだが作中でもなんの説明もなく”ぴ”になっている。たくやが出てくるところは、たぶん両手の指で数えられるんじゃないかな? 題名もそうだけど作中も不親切だ

でも作中で

たくぴ:だいたい、ぴってなんだよ
るか:たくやがぴになって、たくぴなんだよ

みたいな会話を入れるのダサい。むしろなんの説明もなくたくぴである方が、この世界はそういうものなんだって受け入れられるんじゃないかな? 理屈で考えれば不親切だけれど、もっと読者の知能を信頼するべきだ。と言うのは甘えだろうか?

『たくぴとるか』通じない問題の解決策は読者がイメージしやすい題名にすること。『天使がいた夏』なんてどうだろうかなんて思いついたけれど、こんなの講談社文芸文庫にありそうな前世紀の文学の題名みたいだ。トマス・ウルフの『天使よ故郷を見よ』っぽい。というか題名のイメージはここからパクった。

『たくぴとるか』という文字列の呪術っぽい響きと見た目は気に入っている。おまけに内容もたくぴとるかそのものを表している。ただし、それは中身を知っている人でなければならないという欠点がある。もし神様がいて、この小説を絶対にベストセラーにしてくれるなら『たくぴとるか』にする。しかし、神なしでベストセラーにしたいなら、まず表紙の段階で読者になんらかのイメージを喚起させる必要がある。それなら『天使がいた夏』だ。題名だけで内容は分からないが、夏に天使となにかするんだろうなってのは類推できる。

でもどうしても『たくぴとるか』は捨てられなかったので『天使がいた夏』はサブタイトルにして『たくぴとるか:天使がいた夏』にした。これなら物語の中心たくぴとるかを表して、なおかつ読者にイメージを喚起しやすいはず。よし、新しい小説はこれでいこう。

(おわり)

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