ワイは本や。30代のベストセラーになりそこねた哀れな本や。
「はぁ...もうアカンわ。ワイみたいな本、誰も読んでくれへんのや...」
書店の棚の隅っこ。ホコリまみれ。背表紙すら見えへん。
隣の新刊さん、またも売れていく。
「クソッ...なんでワイじゃアカンのや...」
その時、不思議な声が聞こえてきたんや。
『本さん、マッチングアプリ、試してみる?』
「ファッ!?本にマッチングアプリ!?そんなんアリかい!」
でも、藁にもすがる気持ち。ワイ、意を決して返事するんや。
「...やるで」
突然、ワイの中身がデータ化される感覚。
そして気づいたら、アプリの中。
プロフィール:
・名前:『30代の生き方』
・年齢:30代(本歴)
・趣味:積ん読される、埃を集める
・特技:存在感ゼロ
「なんやこのしょーもないプロフィール...」
でも、もう後には引けへん。
ワイ、スワイプの海に身を投じるんや。
右スワイプ。左スワイプ。
読者を求めて、ワイは必死にページをめくる...じゃなくて、画面をスワイプするんや。
『新しいマッチングがあります!』
「マ?ホンマか!?」
相手の名前は「積ん読愛好家」。
ワイ「よろしくニキ〜!読んでクレメンス!」
積ん読愛好家「おう、さっそく買ったで!」
ワイ「マ?ホンマか!嬉しいンゴ!」
積ん読愛好家「今度読むわ」
一週間後。
積ん読愛好家「あかん、忙しくて読めへんわ」
ワイ「...」
また一ヶ月後。
ワイ「...読んでくれた?」
積ん読愛好家「おっと、忘れてたわ。今度読むで!」
「嘘つき...」
ワイ、また虚しくなる。
でも、諦めへん。だって、これがワイの最後のチャンスやから。
そんな時、新しいマッチング。
相手の名前は「自己啓発嫌い」。
ワイ「よろしくニキ〜」
自己啓発嫌い「お前、自己啓発本やろ?」
ワイ「せや...」
自己啓発嫌い「なんで30代なん?」
ワイ「...そら...」
ワイ、答えに詰まる。なんでやろ。なんでワイは30代の本なんやろ。
自己啓発嫌い「まぁ、読んでみるわ」
「マ?ホンマか!?」
ワイ、期待に胸を膨らませる。
数日後、自己啓発嫌いから連絡。
自己啓発嫌い「読んだで」
ワイ「どうやった!?」
自己啓発嫌い「正直、クソやった」
「ファーーーッ!?」
自己啓発嫌い「でもな」
ワイ「で、でも...?」
自己啓発嫌い「なんか、お前の必死さが伝わってきたわ」
ワイ、動揺する。こんな風に言われたの初めてや。
自己啓発嫌い「30代の本って、20代には若すぎて、40代には古すぎる。中途半端なんや」
ワイ「...」
自己啓発嫌い「でも、その中途半端さがええねん」
「ファッ!?」
自己啓発嫌い「人生なんて、みんな中途半端なんやで。お前は、その中途半端さを認めてるんや」
ワイ、インクで涙する。
「ワイ...ワイは...」
自己啓発嫌い「お前は、ありのままでええんやで」
その瞬間、ワイの中で何かが弾ける。
そうや。ワイは30代の本や。中途半端で、売れなくて、でも必死な本や。
それでええんや。
ワイは叫ぶ。
「ワイは30代の売れない本や!!!でも、それでええんや!!!」
突然、アプリが光り出す。
「なんや!?」
気づいたら、ワイはまた書店の棚の上。
でも、今度は違う。
ワイの隣には、「中途半端な人生讃歌」って帯がついとる。
そして、読者が手に取ってくれる。
「へぇ...面白そうやん」
ワイ、またインクで涙する。
売れなくてもええ。ベストセラーやなくてもええ。
ただ、誰かの心に響けばええ。
それが、本の存在意義なんや。
ワイは気づいたんや。
30代ってのは、不安で、中途半端で、でも可能性に満ちた時期なんやって。
ワイはその気持ちを、ページに込めたんや。
だから、きっと誰かの心に響くはず。
「よっしゃ...頑張るで!」
ワイ、決意を新たにする。
マッチングアプリはもう要らん。
だって、ワイにはワイの言葉がある。
それを信じて、これからも読者を待ち続けるんや。
そう、永遠に。
だって、本の人生に、終わりなんてないんやから。
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