ワイは某大手企業の人事部で働く面接官や。毎日、朝から晩まで就活生と向き合うのが仕事なんや。

「はぁ...今日も面接か...」

鏡に映る自分の顔を見て、ため息が出る。目の下にクマができとるわ。

オフィスに着くと、同僚の田中が声をかけてきた。

田中「おはようございます!今日も頑張りましょう!」

ワイ「あぁ...おはよう...」

田中のやる気に、逆に疲れを感じるワイ。

「今日の予定は...っと」

スケジュールを確認すると、朝9時から夕方6時まで、びっしりと面接が詰まっとる。

ワイ「(うわぁ...休憩時間すらないやんけ...)」

そんな気持ちを押し殺して、最初の面接に臨むんや。

面接官「では、自己PRをお願いします」

就活生A「はい!私は学生時代、サークル活動と勉強の両立に励み...」

ワイ「(あぁ...また同じような話や...)」

頭では聞いてるつもりやのに、心ここにあらずのワイ。気づけば、もう3人目の就活生や。

就活生C「そして、私は御社の経営理念に深く共感し...」

ワイ「(みんな同じこと言うてるやん...本当に共感してんのか?)」

そんな疑問を抱きながらも、表情に出さずに面接を続けるワイ。でも、心の中ではもう限界やった。


昼休みも取れず、午後の面接が始まる。

就活生D「私の長所は、どんな状況でも諦めない粘り強さです」

ワイ「(それ、単にしつこいだけやないか...)」

そう思ってしまった自分に驚くワイ。昔はこんな皮肉な考え方せえへんかったのに。

次の就活生が入ってくる。

就活生E「よろしくお願いします!」

元気いっぱいの挨拶に、ワイはむしろイラッとしてしまう。

ワイ「(なんでそんな元気なんや...疲れへんのか...)」

面接を重ねるごとに、ワイの心は荒んでいく。

就活生F「私は御社の〇〇事業に興味があり...」

ワイ「(興味あるんやったら、もっと深く調べてこいや)」

そんな思いを心の中で叫びながら、表面上は優しく微笑む。この使い分けにも疲れてきたんや。

そして、ついに最後の面接。

就活生G「私は御社でぜひ...」

ワイ「はい、分かりました」

思わず冷たい口調になってしまう。就活生Gは困惑した表情を浮かべる。

ワイ「(しまった...)」

でも、もう取り繕う元気もない。


最後の面接が終わり、ホッとため息をつくワイ。

「やっと終わったぁ...」

そう思ったその時、ノックの音が聞こえた。

ワイ「はい、どうぞ」

ドアが開き、中年の男性が入ってきた。

男性「お疲れ様です。人事部長の佐藤です」

ワイ「部長!?こんな時間まで会社におったんですか?」

佐藤「ああ、君の様子が気になってね」

ワイ「え...」

佐藤「実は、君の面接の様子をモニターで見ていたんだ」

ワイ「(やばい...バレてもうた...)」

佐藤「君、就活に疲れてるだろ?」

ワイ「いえ、そんなことは...」

必死に取り繕おうとするワイ。でも、

佐藤「正直に言っていいんだよ」

その言葉に、ワイの中で何かが崩れた。

ワイ「...はい。正直、もう限界です」

佐藤「うんうん。よく言ってくれた」

ワイ「でも、こんなこと言うたら...クビになるんですかね...」

佐藤「なに言ってるんだ。むしろ、君みたいな正直な社員が必要なんだよ」

ワイ「え...?」

佐藤「就活だけじゃない。世の中には色んな『建前』があるだろう?」

ワイ「はい...」

佐藤「でもな、その建前に疲れちゃいけないんだ。君みたいに『疲れた』って正直に言える人間が、会社を変えていけるんだよ」

ワイ「...」

佐藤「明日から1週間、休暇を取りなさい。そして戻ってきたら、就活のシステムを変える企画を立ててくれ」

ワイ「えっ!?ワイがですか!?」

佐藤「ああ。君なら、就活生の気持ちも、面接官の気持ちも分かるはずだ。両方の立場を理解した上で、新しいシステムを考えてくれ」

ワイ「でも、ワイに務まるんですかね...」

佐藤「大丈夫さ。君ならできる。だって、君は『疲れた』って正直に言えたんだからな」

その言葉に、ワイは涙が込み上げてきた。

ワイ「...分かりました。頑張ります!」

佐藤「よし、期待してるぞ。じゃあ、まずはゆっくり休んでくれ」

佐藤部長が去った後、ワイは窓の外を見た。夜空に輝く星が、今までより明るく感じたんや。

翌日、久しぶりの休暇。ワイは公園のベンチに座って、のんびりしてた。

「就活か...」

今まで面接官として、どれだけ多くの就活生を見てきたか。その全員が、必死に自分をアピールしようとしてた。でも、本当の自分を出せてた奴はどれだけおったんやろ。

「もしかしたら、みんな『疲れた』って言いたかったんちゃうか...」

そう思うと、新しいアイデアがどんどん湧いてきた。

「よっしゃ、1週間あれば色々考えられるわ!」

ワイは早速、メモを取り始めた。「正直に語れる面接」「お互いの本音が聞ける場」「建前じゃない就活」...次々とアイデアが浮かんでくる。

1週間後、ワイは新しい就活システムの企画書を持って出社した。

佐藤「おう、戻ってきたか。で、どんなアイデアだ?」

ワイ「はい!『本音で語る就活』っていうシステムを考えました」

佐藤「ほう、面白そうじゃないか」

ワイは熱心に企画の説明を始めた。面接官も就活生も、お互いの本音を語り合える場を作る。建前や上辺だけの自己PRは禁止。その代わり、自分の弱みや不安も正直に話せる。

佐藤「なるほど...これは画期的だな」

ワイ「ありがとうございます!」

佐藤「よし、さっそく役員会議で提案してみよう」

数ヶ月後、ワイの企画は会社全体で採用された。就活生からの評判も上々や。

「正直に話せて良かった」「企業の本音が聞けて参考になった」という声が多く聞こえてくる。

ワイは今、人事部の中核メンバーとして、新しい就活システムの運営に携わってる。毎日忙しいけど、充実感がある。

そして、面接の最後にはこう言うことにしてるんや。

「お疲れ様でした。正直、就活って疲れるよな。でも、一緒に頑張ろうや」

就活生の顔が、ホッとほぐれるのを見るのが、今じゃワイの一番の楽しみなんや。