空は青かった。とても青くて、まるで海のようだった。いや、海よりも青かったかもしれない。

私の名前は夢見る瞳子。今年で高校2年生になった。そう、私には夢がある。小説家になることだ。

「瞳子!朝ごはんよ!」

母の声が階下から聞こえてきた。

「はーい!」

私は重い腰を上げて階段を降りた。階段を一段、また一段と。

朝食のテーブルには、トーストとスクランブルエッグ、そしてサラダが置いてあった。いつもの朝食だ。

「いただきます」

私はナイフとフォークを手に取った。

トーストをかじる。サクサクとした音が口の中で響く。スクランブルエッグをフォークで突き刺す。黄色い卵が崩れていく。

「瞳子、今日も学校頑張ってね」

母が優しく微笑みかける。

「うん、頑張る」

そう答えながら、私の心の中では小説の構想が膨らんでいた。

今日こそ、素晴らしい小説を書いてやる。そう心に誓いながら、私は家を出た。

空は相変わらず青かった。


放課後、私は図書室に向かった。

本棚には無数の本が並んでいる。夏目漱石、芥川龍之介、太宰治...。そして、最近の人気ラノベ作家たちの作品も。

私はため息をついた。これらの作家たちは、どうやってこんなに素晴らしい作品を書けるのだろう。

「よし、今日こそ書くぞ!」

私は意を決して、ノートを広げペンを握った。

しかし、白い紙を前にすると、頭の中が真っ白になる。

何を書けばいいのだろう。どんな物語を紡げばいいのだろう。

「あぁ...」

うめき声が漏れる。

時計の針はチクタクと音を立てて進んでいく。

1時間が過ぎた。2時間が過ぎた。

ノートには、たった一行。

「主人公の名前は...」

そこで止まっていた。

窓の外を見ると、夕日が赤々と燃えていた。まるで私の挫折を嘲笑うかのように。

「もう帰ろう...」

重たい足を引きずりながら、私は図書室を後にした。

今日もまた、何も書けなかった。


それから1週間が過ぎた。

相変わらず、私の小説は進まない。

そんなある日のこと。

「ねぇ、瞳子」

クラスメイトの美咲が話しかけてきた。

「なぁに?」

「あのね、私、小説書いてるんだ」

「えっ!?」

驚きのあまり、声が裏返ってしまった。

「ちょっと見てくれない?」

美咲は恥ずかしそうに、一冊のノートを差し出した。

私は恐る恐るそのノートを開いた。

そこには...

「えっ...」

信じられないものが書かれていた。

文章は稚拙で、誤字脱字だらけ。設定は陳腐で、展開は唐突。

でも...

「なんだろう、この...」

胸が熱くなる。

美咲の文章には、確かに"何か"があった。

情熱とでも言おうか、魂とでも言おうか。

それは決して上手くはないけれど、心を揺さぶるものがあった。

「どう...かな?」

美咲が不安そうに聞いてきた。

「素晴らしいよ」

私は心からそう言った。

「えっ!?本当に!?」

美咲の目が輝いた。

「うん。完璧じゃないけど、すごくいい」

そう言いながら、私は自分の愚かさに気づいた。

私は"完璧な小説"を書こうとしていた。

でも、それは間違いだった。

大切なのは、心を込めて書くこと。

たとえ稚拙でも、自分の思いを素直に表現すること。

「ねぇ、美咲」

「なに?」

「私も、小説書くの手伝ってもらっていい?」

美咲は驚いた顔をした。でもすぐに、満面の笑みを浮かべた。

「うん!一緒に書こう!」

その日から、私たちの共同執筆が始まった。

時には笑い、時には泣き、時には喧嘩もした。

でも、二人で書いていく物語は、少しずつ形になっていった。

完璧じゃない。むしろ、欠点だらけかもしれない。

でも、それは私たちにとって、かけがえのない物語だった。

そうして...

「できた!」

二人で声を上げた。

それは決して洗練された小説ではなかった。

でも、確かに私たちの思いが詰まった小説だった。

「ねぇ、瞳子」

「なに?」

「これ、文学賞に応募してみない?」

美咲がキラキラした目で言った。

「うん、そうしよう!」

私も決意を込めて頷いた。

結果はどうあれ、これは私たちの青春の結晶だ。

空を見上げると、そこには満天の星。

私たちの物語は、まだまだ続いていく。

...

そう、これが私の処女作「小説家志望にありがちな宇宙よりもスカスカな文章」。

なんだか、タイトル負けしてる気がするなぁ...。

でも、これでいいんだ。

完璧じゃなくたって、これが今の私にできる精一杯の物語なんだから。

さぁ、次の物語を書こう。

今度は、もう少しだけマシな文章で。



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