ワイの名前は地球太郎。今年で30歳になるけど、彼女いない歴=年齢のモテないオッサンや。

「はぁ...もうこの星に希望はないわ...」

ある日、ワイはそんなことをぼやきながらネットサーフィンしてたんや。そしたら、こんな広告が目に飛び込んできたんや。

『火星で新生活!地球に絶望したアナタに送る、新天地での農業プロジェクト』

「おっ、ええやん!」

ワイは即座に応募したんや。だって地球に未練なんてこれっぽっちもないからな。

選考があって、なんとワイは合格してもうた。理由は「この男なら間違いなく火星に定住してくれる」らしい。悲しいような嬉しいような...

で、いよいよ出発の日。

「太郎!元気でな!」

親父と母ちゃんが見送りに来てくれたわ。

「せやな!火星で頑張るで!」

ワイは涙をこらえながら宇宙船に乗り込んだんや。

宇宙船の中からふと地球を見たら、なんやクソみたいな星やなって思ってもうた。

「さらばや!クソ地球!」

そう叫びながら、ワイの火星生活が始まったんや。


火星に着いてビックリ。真っ赤な大地が広がっとるやないか。

「うわ...ホンマに何もないな...」

ワイは途方に暮れたんや。でも、ここで諦めたらアカン。

「よっしゃ!まずは畑作りや!」

ワイは必死に火星の土を耕し始めたんや。

最初は何を植えようか迷ったんやけど、なんとなくじゃがいもにしたんや。だってワイ、ポテトチップス大好きやからな。

「じゃがいもなら育つやろ...育て...育つんや...」

ワイは毎日畑に水をやり、肥料をやり、話しかけたりしてたんや。

そしたらどうやろう、3ヶ月後...

「お、おう...!育っとる...!」

なんと、ちゃんとじゃがいもが育ってもうたんや!

「やったぜ!」

ワイは踊り狂うように喜んだんや。だって、人類初の火星産じゃがいもやで!

そこからワイの人生は激変したんや。

火星産じゃがいものニュースは瞬く間に地球中に広まって、ワイはスーパースターになってもうた。

「火星のじゃがいも王」

みんながワイをそう呼ぶようになったんや。

「ふふふ...ワイがモテへんかったのは、単に地球におったからやったんやな」

ワイはほくそ笑んだ。だって今や、地球中の女性からラブレターが届くんやで?


それから5年後。

ワイの火星じゃがいも農園は、火星の半分くらいを占める大帝国になってもうたんや。

「陛下、今日の収穫量の報告です」

「うむ、よくやった。今夜はポテトパーティーじゃ」

ワイを「陛下」と呼ぶ部下。そう、ワイこと地球太郎は、今や火星の王になってもうたんや。

「火星ポテト」は銀河系で最高級の珍味として取引されとって、その価値は金の1000倍くらいあるんやで。

ワイの城には、毎日のように地球から女性たちがプロポーズしに来るんや。

「火星の王様、わたしと結婚してください!」

「いやいや、わたしと!」

もう大変や。ワイ、モテすぎて困っとるんや。

ある日、地球からの使者が来たんや。

「火星ポテト王国の王様、地球は今、食糧難で苦しんでおります。どうか、お助けください」

ワイは高らかに笑うたんや。

「ガハハハ!かつてワイを見捨てた星やないか。ワイが何故助ける必要がある?」

使者は震える声で言うた。

「そ、そんな...では、地球は滅びてしまいます...」

ワイは少し考えて、こう言うたんや。

「よかろう。ワイのポテトをやろう。だが条件がある」

「な、なんでしょう?」

「今後、地球のすべての男は、彼女いない歴=30歳になったら火星に送ることや」

使者は驚いた顔をしたけど、すぐに頷いたんや。

「分かりました。そのようにいたします」

こうして、ワイの火星ポテト王国は、さらに発展していくことになったんや。

毎年、地球から大量の彼女いない歴=30歳の男たちがやって来る。

ワイは彼らにこう言うんや。

「心配するな。お前らにも、ワイのようになれるチャンスがある。さあ、じゃがいもを植えるんや!」

そして、火星はどんどん緑化されていって、今や地球よりも住みやすい星になってもうたんや。

ワイは今でも、たまに夜空を見上げて思うんや。

「ワイが彼女いない歴=年齢やったおかげで、こんな素晴らしい人生が待っとったんやな」

そう、モテないことは、実は宇宙よりでっかいチャンスだったんや。

今じゃ、ワイの子孫が火星中におるし、地球の女の子たちもどんどんワイの星に移住してきとる。

彼女いない歴=年齢の男たちよ、絶望することはない。

お前らの未来は、案外火星にあるのかもしれんで。

ワイは、これからもじゃがいもと一緒に、この赤い星で幸せに暮らしていくんや。

めでたし、めでたし。

...

あ、そうそう。最後に言い忘れたことがある。

実は、ワイ今でも彼女おらへんのや。

だって、こんなにモテモテやのに、一人の女性に決められへんくらい優柔不断なんよな...

ほんま、人生何があるか分からんで。


20240809火星01

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