俺の名前は鈴木マッチョ。ごく普通の高校二年生・・・だった。

「鈴木くん、また0点か。このままじゃ留年するぞ」

担任の村上先生は、テストを突き返しながら言った。

「すみません・・・」

頭を下げる俺。正直、勉強なんてやる気が起きない。だって、どうせ俺なんて・・・

「おい、マッチョ!」

声の主は、幼なじみの佐藤ムキムキ。

「なんだよ、ムキムキ」

「お前、また0点か?」

「うるせえよ」

「このままじゃマズいぞ。ちょっと付き合え」

ムキムキに連れられて屋上に来た。

「お前にはこれをやってもらう」

そう言って、ムキムキが取り出したのは一冊の本。

『自重で最強の肉体を手に入れる!』

「は?筋トレ?」

「そうだ。お前、勉強ダメなら体で勝負しろよ」

「でも、ジムとか高いじゃん・・・」

「だから自重だよ。お前の体重だけで鍛えるんだ」

半信半疑の俺だったが、ムキムキの熱意に押されて始めることにした。

最初は辛かった。腕立て伏せ、腹筋、スクワット・・・全身が筋肉痛だ。

でも、一週間もすると少し楽になってきた。

「お、マッチョ!体、引き締まってきたんじゃね?」

ムキムキの言葉に、俺は鏡を見た。

確かに、少しだけど変化がある。

「よっしゃ!もっと頑張るぞ!」

その日から、俺の筋トレ生活が本格的に始まった。


それから3ヶ月。俺の体は見違えるように変わっていた。

「鈴木くん、最近調子いいみたいだね」

村上先生が話しかけてきた。

「はい!筋トレのおかげで集中力が付いたみたいで」

なんと、成績も上がっていたのだ。

「その調子だ。でも、筋トレのしすぎには気をつけろよ」

「はい!」

順風満帆な筋トレライフ。しかし、ここで異変が起こる。

ある日の朝、目覚めると体が妙に軽い。

「なんだこれ・・・」

立ち上がると、ふわっと浮いてしまった。

「うわっ!?」

慌てて壁を掴む。どうやら重力を感じにくくなっているようだ。

「どうしよう・・・学校、行けないじゃん」

そう思っていると、スマホが鳴った。ムキムキからだ。

「おい、マッチョ!お前も浮いてるか!?」

「えっ、ムキムキも!?」

「ああ。どうやら俺たちだけじゃないみたいだ。ニュース見ろ」

急いでテレビをつけると、驚くべきニュースが流れていた。

『速報:世界中で重力異常が発生。原因不明』

「なんだって!?」

焦る俺。しかし、ムキムキは冷静だった。

「落ち着け。とにかく、今は外に出るな。危険だ」

その通りだ。外を見ると、人や車が宙に浮いている。まるでSFの世界だ。

それから数日、状況は悪化の一途を辿った。

重力はどんどん弱くなり、ついには物が宙に浮くようになった。

そんな中、ついに原因が判明する。

『重力異常の原因が判明:過度の自重トレーニングが地球の質量を増加させた可能性』

「マジかよ・・・」

俺とムキムキは、顔を見合わせた。まさか、自分たちのせいだとは。

しかし、事態はさらに悪化する。

『緊急速報:地球の重力が臨界点を超え、ブラックホール化の恐れ』

「うそだろ・・・」

俺たちの自重トレーニングが、地球を滅ぼすことになるなんて。


絶望的な状況の中、突如として一筋の光明が差し込んだ。

「おい、マッチョ!」

ムキムキが俺の家に飛び込んできた。文字通り、飛んできたのだ。

「どうしたんだよ」

「これを見ろ!」

ムキムキが差し出したのは、一冊の古い本だった。

『究極の逆自重トレーニング~地球を救う筋肉の使い方~』

「なんだこれ・・・」

「俺たちが地球を救えるかもしれない」

ムキムキの目は真剣そのものだった。

本によると、「逆自重トレーニング」なるものを行えば、地球の質量を元に戻せるという。

「よし、やるぞ!」

俺とムキムキは、すぐさま練習を開始した。

逆立ちプッシュアップ、逆さスクワット、逆さ腹筋・・・

通常の動きとは逆の動きで筋トレをする。それが「逆自重トレーニング」だった。

「くそっ、難しいな・・・」

「諦めるな!地球の運命は俺たちにかかってるんだ!」

ムキムキの叱咤激励に、俺も必死に食らいついた。

そして、トレーニング開始から一週間後。

ついに、変化が現れ始めた。

「おい、見ろよ!」

ムキムキが指差す先には、宙に浮いていたはずの車が、ゆっくりと地面に降りていく様子が。

「やった・・・効いてるぞ!」

俺たちは歓喜した。しかし、まだ安心はできない。

「このペースじゃ間に合わないかもしれない。もっと多くの人を巻き込まないと」

ムキムキの言う通りだ。

そこで俺たちは、SNSを使って「逆自重トレーニング」の方法を世界中に発信し始めた。

最初は半信半疑だった人々も、効果が目に見えて分かることから、次第に参加者が増えていった。

そして、トレーニング開始から一ヶ月後。

『速報:地球の重力、正常値に戻る』

「やったぞ、マッチョ!」

「ああ、みんなのおかげだ!」

街には歓声が響き渡り、人々は抱き合って喜んだ。

地球は、ブラックホール化の危機から脱したのだ。

それから数年後。

俺こと鈴木マッチョは、「地球を救った筋トレの達人」として、世界的に有名になっていた。

「マッチョさん、次はどんなトレーニングを考えているんですか?」

インタビューでそう聞かれ、俺はニヤリと笑った。

「それはですね・・・」

俺は、ムキムキと目配せをした。

「宇宙を舞台にした、無重力トレーニングです!」

そう、俺たちの挑戦はまだまだ続く。

地球を救った筋トレ。次は、宇宙の謎に挑む。

果たして、どんな驚きが待っているのか。

それは誰にも分からない。

ただ一つ確かなことは、俺たちが全力で、そして楽しみながら挑戦し続けるということだ。

なぜなら、それこそが「自重に頼りすぎない」人生の極意だからだ。


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