俺、25歳。身長170cm、体重58kg。コンビニバイトで細々と生きる負け組だ。
「はぁ...人生つまんねぇ」
毎日、同じようなため息をつく。女にモテたこともないし、正社員になる気力もない。そんな俺が、ある日、街中で奇妙な男と出会った。
「おい、若者!その華奢な体つき、人生諦めてるのか?」
振り向くと、そこには筋肉の塊のような中年男性が立っていた。Tシャツが破れそうなほどの胸筋、そして...とてつもなく発達した僧帽筋。首が見えないほどだ。
「俺はキャプテンマッスル。お前に人生変える方法を教えてやる」
俺は半信半疑だったが、このおっさんについていくことにした。だって、これ以上人生が悪くなるわけがないからな。
キャプテンマッスルは俺を薄暗い地下ジムに連れていった。
「若者よ、聞け!人生を変えたいなら、僧帽筋を鍛えろ!」
「え?僧帽筋だけ?」
「そうだ!僧帽筋は全ての筋肉の王。これを鍛えれば、体も心も人生も変わる!」
俺は目を輝かせた。こんな簡単な方法があったなんて!
「よし、やってみます!」
こうして、俺の僧帽筋トレーニングが始まった。
毎日、シュラッグを1000回。初めは辛かったが、キャプテンマッスルの熱血指導のおかげで続けられた。
1ヶ月後、俺の僧帽筋に小さな変化が。
「おっ、なんか盛り上がってきたぞ?」
キャプテンマッスルは満足気に頷いた。
「そうだ!その調子だ!」
3ヶ月後、俺の僧帽筋はかなりの大きさになっていた。首が見えにくくなるほどだ。
「すげぇ...でも、他の筋肉は変わんないっすね」
キャプテンマッスルは大笑いした。
「心配するな!僧帽筋が極限まで成長すると、他の筋肉も嫉妬して勝手に大きくなる。それより、心の変化に気づいたか?」
言われてみれば、最近自信がついてきた気がする。バイト先でも積極的に仕事をこなせるようになっていた。
6ヶ月後、奇跡が起きた。俺の体全体が見違えるように逞しくなっていたのだ。
「うおおお!すげぇ筋肉!」
鏡の前でポージングする俺。もはや別人だ。
キャプテンマッスルは誇らしげに言った。
「よくやった!お前の僧帽筋は完璧だ。さあ、新しい人生を歩め!」
こうして、俺の僧帽筋トレーニングは終わった。だが、これは新たな人生の始まりに過ぎなかった。
僧帽筋を鍛え上げてから、俺の人生は激変した。
まず、バイト先のコンビニで正社員にスカウトされた。
「君、最近やる気あるね。うちの店長にならないか?」
次に、街を歩いていると、スカウトの声がかかるようになった。
「あなた、モデルやってみない?その僧帽筋、素晴らしいわ!」
そして、何より驚いたのは女性の反応だ。
「ねぇ、連絡先教えて?」
「私と付き合ってください!」
「結婚してほしいの!」
毎日のように告白される。モテすぎて困るなんて、昔の俺には想像もできなかった。
ある日、俺は昔好きだった女の子と再会した。
「ねぇ、私のこと覚えてる?高校の時、あなたの告白断ったの...今なら付き合ってあげるよ?」
俺は困惑した。かつての憧れの人からの告白。でも、今の俺にはもうそんな気持ちはない。
「ごめん。俺、今彼女いるから」
嘘をつくしかなかった。だって、誰とも付き合ってないのに、毎日告白されるんだ。断るのが面倒で仕方ない。
家に帰ると、ポストに山のような恋文。SNSはメッセージで溢れかえっている。
「はぁ...モテすぎるのも困るな」
そう呟きながら、俺は鏡の前に立った。そこには、立派な僧帽筋を持つ自信に満ちた男がいた。
「でも、これが俺の選んだ道だ。」
そうだ。僧帽筋を鍛えたのは俺自身だ。キャプテンマッスルに教えてもらったが、毎日トレーニングを続けたのは俺の意志だ。
「よし、明日からは告白してくる子たちにも誠実に向き合おう。」
俺は決意した。モテることから逃げるんじゃない。ちゃんと向き合って、本当に大切な人を見つけよう。
翌日、いつものように告白されまくる俺。
「ごめん、でも俺にはまだ夢がある。その夢を叶えてから、本気の恋がしたいんだ。」
堂々と答える俺に、告白した子たちは目を輝かせた。
「すごい...!私、あなたの夢を応援します!」
「私も頑張ろうって思えました!」
なんだ、ちゃんと向き合えば良かったんじゃないか。
帰り道、ふと空を見上げる俺。
「キャプテンマッスル...ありがとう。僧帽筋だけじゃなく、心も鍛えられたみたいだ。」
風が僧帽筋をなでていく。俺は明日への希望を胸に、颯爽と歩き出した。
これからの人生、もっともっと面白くなりそうだ。
完
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