西暦2045年、人類は火星移住計画の最終段階に突入していた。
「よーし、これで火星移住の夢が現実になるぜ!」
火星移住計画の責任者である速水博士が、興奮気味に叫ぶ。しかし、その瞬間、警報が鳴り響いた。
「なっ、何だって!?火星の大気に異常?」
モニターには、火星の大気組成が急激に変化しているデータが表示されていた。酸素濃度が急上昇し、なんと地球よりも生物が住みやすい環境になりつつあったのだ。
「こんなバカな...まるで誰かが意図的にテラフォーミングしているみたいじゃないか」
その時、通信機が鳴る。
「もしもし、火星火星~。あの~、ちょっと困ってまして~」
「誰だ!?お前は何者だ!」
「あ、はい。火星に住んでる佐藤みくです。あの、バナナの育て方について相談があるんですけど...」
「はぁ!?」
突如として明らかになった衝撃の事実。火星には既に人が住んでいた。しかも、バナナを育てているという。
急遽、調査隊が火星に向けて出発することになった。隊長を務めるのは、天才科学者の結城明日香。26歳にして既に数々の賞を受賞している彼女だが、容姿はいわゆる"チー牛顔"で知られていた。
「まったく、せっかくの火星初上陸なのに、なぜ私が...」
そう不満を漏らしつつも、明日香は宇宙服に身を包み、火星に降り立った。
そこで彼女が目にしたものは、信じられない光景だった。
見渡す限りのバナナ畑。そして、その中央に立つ一人の少女。
「あ、どーもー。佐藤みくです。よろしくお願いしますー」
その少女こそが、チー牛女と呼ばれる存在だった。
「ちょ、ちょっと待って!どういうこと?なんでアンタが火星にいるの?そして、このバナナは一体...」
困惑する明日香に、みくは平然と答える。
「えーっとね、5年前に秋葉原で買ったゲーム機が実は宇宙船で、気づいたら火星に来ちゃったんですよー。で、暇だったからバナナ育て始めたら、こんな感じに」
「そんな...でたらめな...」
しかし、みくの話は続く。
「このバナナがすごいんですよ。食べるとめっちゃ強くなるし、知能も上がるし、寿命も伸びるし。あ、火星の環境も勝手に良くしちゃうんですけど」
明日香は目の前のバナナを手に取り、分析器にかける。すると、信じられないデータが表示された。
「こ、これは...人類の進化を何万年も飛躍させるほどの栄養価!?しかも、光合成の効率が地球の植物の1000倍!?」
そう、みくが育てた"最強のバナナ"は、火星の環境を急速に変化させる力を持っていたのだ。
「ねぇねぇ、これって地球に持って帰っても大丈夫かな?」
「ダメよ!」明日香は思わず叫ぶ。「こんな強力なバナナが地球環境に与える影響は計り知れない。これは...火星に置いておくしかないわ」
みくは少し寂しそうな顔をする。「そっか...でも、私がここでバナナ育て続けてたら、人類移住できないよね」
明日香は複雑な表情を浮かべる。確かに、このままではみくのバナナ栽培によって火星の環境が激変し続け、人類の移住計画は頓挫してしまう。かといって、みくに火星を去るよう言うこともできない。
「どうすれば...」
悩む明日香。そして、みくが思わぬ提案をする。
「ねぇ、私と一緒にバナナ研究しない?」
「えっ?」
明日香は驚いて声を上げる。
「だって」とみくは続ける。「明日香さん、すっごく頭良さそうだし。私一人じゃどうしていいか分かんないし。一緒に研究したら、きっと面白いことになると思うんだ」
その言葉に、明日香の中で何かが変わる。
そうだ。これは問題ではない。チャンスなのだ。
「...分かったわ。一緒に研究しましょう。このバナナの力を、人類のために使えるはずよ」
こうして、二人のチー牛女による前代未聞の火星バナナ研究が始まった。
それから1年後。
地球の各国首脳が集まる緊急会議が開かれていた。
「では、火星からの通信を繋ぎます」
スクリーンに映し出されたのは、明日香とみくの姿。
「みなさん、ご報告があります」明日香が口を開く。「私たちは、最強のバナナの力を制御する方法を発見しました」
会場がどよめく中、みくが続ける。
「このバナナを特殊な方法で加工すると、人体に無害で、しかも惑星環境を急速に改善できるんです。つまり...」
「つまり」と明日香が引き継ぐ。「私たちは今、人類に新たな選択肢を提示できます。火星移住に限らず、太陽系のあらゆる惑星を、人類が住める環境に変えることができるのです」
会場は騒然となる。
「しかし!」と明日香は力強く言う。「これは大きな責任を伴います。私たちにはまだ知らないことが山ほどある。だからこそ、地球の英知を結集し、慎重に、しかし大胆に前進していく必要があります」
みくが笑顔で付け加える。「みんなで一緒に、新しい歴史を作りませんか?」
会議の結果、国際的な火星研究機関の設立が決定。明日香とみくを中心に、地球と火星の共同プロジェクトが始動することとなった。
明日香とみくは、バナナジュースを飲みながら夕焼けを眺めている。
「ねぇ、明日香」
「何?みく」
「私たち、すごいことしちゃったね」
「そうね。でも、まだ始まりに過ぎないわ」
「うん。これからが楽しみ!」
二人は笑い合う。その目には、未来への希望が輝いていた。
火星に人類が住めない理由。それは、二人のチー牛女が最強のバナナと共に、さらに大きな夢を見始めたから―。
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