ワイ、28歳のチー牛系社畜。彼女いない歴=年齢のモテない陰キャや。周りの奴らがどんどん結婚していくのを横目に、ワイはずっと独り身を貫いてきたんや。

「もう諦めてるし、ええんや...」

そう思いながらも、夜な夜な枕を濡らす日々。そんなある日、会社の陽キャ先輩から声かけられたんや。

「おい、お前もそろそろマッチングアプリ使ってみろよ」

「えっ...ワイには無理っす...」

「いいから使ってみろって。これ、俺が使ってる最新のやつだ」

そう言って、先輩はワイのスマホに見たこともないアプリをインストールしたんや。

「『量子マッチング』...?」

「ああ、最新の量子コンピューターを使った神アプリらしいぜ。絶対にお前にピッタリの相手見つかるはずだ」

半信半疑のワイ。でも、藁にもすがる思いで、その夜アプリを起動したんや。

するとどうよ。画面がビカーッと光って、なんか不思議な空間に吸い込まれていくような感覚になったんや。

「な、なんやこれ...」

気がつくと、ワイは奇妙な空間におったんや。周りを見渡すと、無数の糸みたいなもんがフワフワ浮いとる。

「ここは...どこや...」

『ようこそ、量子マッチングの世界へ』

突如、声が聞こえてきたんや。

「誰や!?」

『私は、このアプリの管理AIよ。ここは超ひも理論によって作られた11次元空間。あなたの運命の相手を見つけるために作られた特別な場所なの』

ワイ、もう意味わからんくなってきたわ。

「超ひも理論って...あの物理学の難しいやつか?」

『そうよ。この理論を使えば、あなたの全ての可能性を一度に観測できるの。つまり、無限の平行世界のあなたを同時に見ることができるってこと』

「えぇ...」

『さあ、あなたの運命の相手を見つけましょう』

そう言うや否や、周りの糸がビョンビョン動き出したんや。

ワイの目の前に、様々な世界線が現れたんや。

モテモテになったワイ、スポーツマンになったワイ、天才科学者になったワイ...

「すげぇ...こんなワイもおるんか...」

でも、どの世界線を見ても、なんかピンとくるもんがない。

『おかしいわね...どの世界線にも、あなたにピッタリの相手がいないなんて...』

AIの声が焦ってきたんや。

『仕方ない。最後の手段よ』

AIがそう言った瞬間、ワイの体がバラバラに分解され始めたんや!

「うわあああ!なんや    これ!?」

『心配しないで。あなたを超ひもレベルまで分解して、完璧な状態に再構築するの』

ワイの意識は、超ひもとなって宇宙を漂い始めたんや。

そこで、ワイは全てを理解したんや。

自分が恋愛に臆病だった理由。
自分が本当に求めていたもの。
そして、自分の無限の可能性。

『再構築完了よ』

AIの声と共に、ワイは元の姿に戻ったんや。

でも、なんか違う。今のワイは、全く新しいワイや。

「ワイ...わかったで」

『何がわかったの?』

「ワイは...ワイのままでええねん」

そう言った瞬間、ワイはアプリの世界から現実に戻されたんや。

目を覚ますと、ワイは自分の部屋のベッドの上。
でも、なんか全てが新鮮に見えるんや。

翌日、会社に行くと、周りの反応が変わっとったんや。

「お、お前...なんか雰囲気変わったな?」
「なんかモテそうな感じになってね?」

ワイは気づいたんや。マッチングアプリは確かにワイを破壊した。でも、それは古い自分を壊して、新しい自分を作り出したってことやったんや。

超ひも理論を通して、ワイは自分の無限の可能性を知った。そして、その全ての可能性を含んだ「今のワイ」こそが、最高のワイやってことに気づいたんや。

その日から、ワイの人生は大きく変わったんや。
恋愛も仕事も、全てが上手くいき始めた。

マッチングアプリ?もう必要ないわ。だって、ワイは自分自身とマッチしたからな。

これからは、ありのままのワイで、人生を楽しんでいくで!

おわり



20240803バナナランド


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