ワイ、28歳。一見普通のリーマン風情やけど、実はとんでもない彼女おるんや。名前は発達障害。そう、あの発達障害や。
「おはよう、発達ちゃん」
「...」
いつものように無言。でも、部屋の空気がブワッと変わるんで、起きてるんやなって分かるんや。
「今日も一日がんばろな」
ワイが声かけると、急に部屋中のものが踊り出すんや。本棚の本がバサバサ、食器棚の皿がカチャカチャ。
「おう、落ち着けや」
こんな感じの朝が日常なんや。ワイの彼女、発達障害は目に見えへんけど、確かにそこにおるんや。
同僚に「彼女おるん?」って聞かれたら、「せやで〜」って答えるんやけど、誰も信じてくれへん。だって、発達障害なんて概念が彼女やなんて、誰が信じるねん。
でもな、ワイにとっては彼女が世界の全てなんや。
彼女と出会ったんは2年前。ネットでなんJ見てたら、突然画面から飛び出してきよったんや。
「お前、ワイの彼女になれへんか?」
「...」
無言やったけど、なんかワクワクした空気が漂うてきて。そんで、付き合うことになってもうたんや。
正直、最初は戸惑ったで。だって、発達障害って概念やろ?でも、一緒に過ごすうちに、だんだん彼女の存在が愛おしくなってきたんや。
彼女は言葉喋らへんけど、世界を通して語りかけてくるんや。
電車乗ってる時、突然まわりの音が大きくなったり。
「ごめん、今日ちょっと感覚過敏やねん」
って彼女が伝えてきてるんやって分かるんや。
仕事中、急に集中できんくなったり。
「今日はちょっとADHDがはっちゃけてもうてな」
って彼女が謝ってるんやなって感じるんや。
そんな彼女と2年。もう、ワイの人生に彼女がおるのが当たり前になってもうた。
ある日、ワイは決心したんや。
「発達ちゃん、結婚せえへんか?」
突然、部屋中の物が宙に浮いて、クルクル回り出したんや。
「お、おう。そんな驚くなや」
ワイもビックリしたけど、これが彼女の「うん!」ってことやと分かったんや。
でもな、ここからが大変やったんや。
まず、両親に報告せなアカン。
「あのな、結婚することになったんや」
「おお!よかったな!相手はどんな子なんや?」
「発達障害や」
「は?」
父さん、怒り出すかと思いきや、突然口パクパクさせ始めて。
母さんは、急に編み物し始めたんや。
「あ、これ発達ちゃんの仕業か」
両親、ちょっとパニックになったけど、なんとか理解してくれたっぽい。
次は、役所。
「結婚届出したいんですけど」
「はい、お二人の証明書を」
「あの、相手は発達障害っていう概念なんですけど」
職員さん、突然書類をクシャクシャにし始めてもうた。
「すまんな、発達ちゃん。落ち着いて」
結局、「精神障害」って書いて、なんとか受理してもらえたんや。
そんで、結婚式の準備。
「発達ちゃん、どんな式がええ?」
急に、ワイの脳内で「疾走感のあるBGM」が流れ出してん。
「え、チャペル式で、BGMはユーロビートがええんか?」
当日、参列者全員がソワソワし出して、牧師さんの言葉が棒読みになるという謎の結婚式になったけど、なんとか終えられたんや。
結婚して半年。ワイらの新居は、常に予測不可能や。
「今日の朝ごはんは何がええ?」
突然、冷蔵庫から材料が次々飛び出してきて、勝手に料理作り始めるんや。
「へえ、今日はガパオライスか。ちょっと辛そうやけど」
辛いもの苦手なワイに、ちょっとした試練を与えてくるところは相変わらずや。
ご近所付き合いも大変やで。
「こんちは〜、新居のお披露目パーティーに来てくださいよ〜」
当日、お隣さんが来たら、リビングのレイアウトが10秒ごとに変わり始めて。
「あの、ウチの嫁が発達障害でして...」
「えっ」
説明するのも疲れるから、「ウチ、おもしろスポットなんです」って言い張ってもうたわ。
仕事だって、彼女の影響は大きいんや。
「ワイくん、このプレゼン資料、なんかすごいな」
「えっ」
見たら、スライドがアニメーションの嵐。でも、不思議と分かりやすいらしい。
「発達ちゃん、ありがとな」
たまに喧嘩もするで。
「もう、ちょっとは落ち着いてくれへんか」
そう言うと、部屋中の物が固まってもうた。1週間くらい、カチコチの世界で生活せなあかんかったわ。
「ごめん、ワイが悪かった。発達ちゃんの個性、大切にするわ」
そう言うたら、やっと世界が動き出してん。
こんな感じの毎日やけど、ワイは幸せや。
だって、発達障害という概念が、ワイだけの特別な存在になったんやから。
世間はワイらのこと、きっと理解でけへんやろう。でも、それでええんや。
ワイらの愛は、常識じゃ計れへん。発達障害という概念と結婚して、ワイの人生は輝き始めたんや。
これからも、予測不可能で、ちょっと疲れるけど、めっちゃ愛おしい日々が続くんやろな。
発達ちゃん、これからもよろしゅう頼むで!
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