俺、佐藤拓也。25歳、職歴なしのニート。毎日、部屋に籠もってゲームとアニメ三昧の生活。外の世界なんて、もう縁がないと思っていた。

「拓也ー!いい加減出てきなさい!」

母さんの怒鳴り声が、また部屋に響く。でも、俺には動く気力もない。布団にくるまったまま、スマホを握りしめる。

「はいはい...」

適当に返事をして、俺はSNSをダラダラ眺め始めた。そこで目に飛び込んできたのは、「バチェロレッテ3」の広告。なんでも、超イケメン揃いの男たちが、美女1人を巡って争うらしい。

「ふーん、どうせ作り物だろ」

そう思いつつも、何となくポチッと再生ボタンを押した。

「うわ...マジかよ...」

画面に映し出される男たちの肉体美に、俺は思わず息を呑んだ。腹筋、胸筋、二頭筋...全てが完璧だ。そして何より、彼らの自信に満ちた態度。

「こいつら、なんでこんなにキラキラしてんだ...」

そう呟きながら、俺は鏡に映る自分を見た。やせ細った腕、膨らんだお腹。まるで別の生き物だ。

「このままじゃ...いけない」

その瞬間、俺の中で何かが動いた。今までなかった感情。それは...劣等感?いや、違う。向上心だ。

俺は立ち上がった。スマホを握りしめ、YouTubeで「初心者 筋トレ」と検索する。

「よーし、俺もやってやる!」

それから1ヶ月。毎日欠かさず筋トレを続けた。最初は5回のスクワットで息が上がったが、今では50回はいける。

「拓也、最近変わったわね」

母さんの声に、少し驚く。

「ちょっとね」

照れ隠しに、そう答える俺。実は、昨日初めて履歴書を書いた。バイトの面接も決まっている。

鏡を見ると、少しだけ引き締まった体が映っていた。まだまだバチェロレッテの男たちには遠く及ばないが、確実に変わりつつある自分がいた。

「バチェロレッテか...ありがとうな」

呟きながら、俺は再び腕立て伏せを始めた。筋肉痛を感じる度に、俺は少しずつ強くなっているんだと実感する。

未来の俺は、どんな姿をしているんだろう。想像すると、少し楽しくなってくる。

「よーし、今日も100回頑張るぞ!」

汗を拭きながら、俺は心の中でガッツポーズをした。バチェロレッテを見たあの日から、俺の人生は確実に動き出していた。

そう、これは俺だけのバチェロレッテ。人生を賭けた、自分磨きのサバイバル。ゴールは、輝く未来の俺だ。

(了)