ワイ、30歳童貞ニートやけど、マッチングアプリに手を出してもうた。でもな、全然マッチせーへんのや。毎日スワイプしまくっても、誰一人としてワイに興味示さへん。ほんま辛いわ。

「あかんわ...ワイみたいなチー牛顔の残念イケメンじゃ、誰も振り向いてくれへんのや」

そう思いながら、ワイはスマホを投げ出して、布団にもぐり込んだ。せや!明日から本気出して就活するんや!そう決意して、目を閉じた。

翌日、ワイは図書館に向かった。就活対策の本でも読むかと思ってな。ところがよ、目に飛び込んできたんが村上春樹の『海辺のカフカ』やったんや。なんでやろ、急に読みたくなってもうた。

ページをめくるうちに、ワイは村上ワールドにどんどん引き込まれていった。不思議な世界観と哲学的な台詞に、ワイの心は揺さぶられた。

「ほんまに、人生って不思議やな...」

そう呟きながら、ワイは読み続けた。気づけば日が暮れて、図書館の閉館時間になっていた。


家に帰る途中、ワイは急に体がふわっと軽くなるのを感じた。なんやこれ?と思った瞬間、ワイの視界が変わった。全てのものが大きく見えるようになったんや。

「にゃ〜ん?」

声を出そうとしたら、猫の鳴き声が出た。ワイ、猫になってもうたんか!?でも不思議と、怖くはなかった。むしろ、心が軽くなった気がした。

四つ足で歩きながら、ワイは考えた。「もしかして、これが村上春樹の言うところの、自分探しの旅なんかもしれん...」

そうや、マッチングアプリやらなんやらに執着せんでも、ワイには生きる価値があるんや。猫になったからこそ、そんなことに気づけた。

「にゃ〜(ワイ、これからは自分らしく生きていくで!)」

そう決意して、ワイは月明かりの下を颯爽と歩いていった。マッチングアプリの敗北者から、哲学する猫へ。ワイの人生は、いや、猫生は、ここから始まるんや。



105真論君家の猫2

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