ワイ、モテへんかったんや。高校んときから、ずっとモテへんかった。

「なんでワイだけモテへんのや...」

そう思いながら、友達のカップルを横目に見とった。

大学入って、もしかしたら変わるんちゃうか?って期待したんや。でも、現実は甘くなかった。

「お前、彼女おらんの?」
「まだ童貞なん?ウケるw」

そんな言葉が刺さって、ワイはどんどん自信をなくしていったんや。

そんなある日、ネットでメサイアコンプレックスっちゅう言葉を見つけたんや。

「人を救いたいという強い欲求を持つ人格障害...?」

なんか、ピンときたんや。

「そうか...ワイはみんなを救う存在なんや!」

そう思い込んだら、急に心が軽くなった気がしたわ。

「彼女おらんのは、みんなを平等に愛するためなんや!」

そう自分に言い聞かせて、恋愛とか全部諦めることにしたんや。

「ワイは、愛の救世主や!」

そんな感じで、メサイアコンプレックスをこじらせていったんや。

友達が恋愛の相談してきても、

「そんなもん、所詮は一時の迷いや。本当の愛は、もっと崇高なもんなんや」

なんて説教したりしてた。

バイト先の後輩が告白されたって喜んどっても、

「そんなんで喜んどったらアカンで。お前には、もっと大きな使命があるんや」

って真顔で言うてしまうんや。

周りからは、どんどん浮いていってる感じがした。でも、ワイは気にせえへんかった。

「みんな、ワイの気持ちが分からへんだけや。いつか分かってくれる日が来るはず...」

そう信じて疑わへんかったんや。

大学卒業して、就職したんや。でも、会社でもワイは浮いとった。

飲み会で、「彼女おらんの?紹介したろか?」って言われても、

「ワイには、全人類を愛する使命があるんです」

なんて答えてしまうんや。

みんな、ドン引きやった。

「お前、なんかヤバない?」
「メサイア気取りか?笑」

そんな声も聞こえてきた。でも、ワイは気にせえへんかった。

「みんな、まだ分かってくれへんだけや...」

そんな感じで、ワイはどんどん孤立していったんや。

恋愛市場からは完全に撤退して、誰からもアプローチされへんようになった。

「これでいいんや。ワイは、みんなの上におるんや」

そう思いながら、休日は家で一人過ごすようになった。

ある日、久しぶりに実家に帰ったんや。

マッマが心配そうな顔で言うてきた。

「あんた、最近彼女の話聞かへんけど...大丈夫なん?」

ワイは得意げに答えたんや。

「心配せんでもええで。ワイには、全人類を救う使命があるんや」

マッマは悲しそうな顔をした。

「あんた...そんなんじゃ幸せになれへんで」

その言葉が、なんかグサッときたんや。

「幸せ...?ワイ、幸せちゃうんか...?」

初めて、自分の状況を客観的に見つめ直してみた。

友達はおらん。彼女もおらん。休日は一人きり。

「あかん...ワイ、なんてことしてもうたんや...」

現実に気づいて、ワイは号泣してしもうた。

マッマは優しく背中をさすってくれた。

「遅ないことなんてあらへんで。これからや」

その言葉に勇気づけられて、ワイは決意したんや。

「よし、もう一回やり直すで!」

メサイアコンプレックスから抜け出すんは、めっちゃ大変やった。

でも、一歩ずつ前に進んでいったんや。

まずは、自分を受け入れることから始めた。

「ワイは普通の人間や。完璧やないし、みんなを救えへん。それでええんや」

そう思えるようになったら、少しずつ周りの見え方が変わってきた。

会社でも、素直に人と接するようになった。

「すまん、ワイにも分からへんことあるわ。教えてくれへん?」

そう言えるようになったら、みんなの態度も変わってきたんや。

「お前、最近イイ感じやな」
「一緒に飲みに行かへん?」

少しずつ、人間関係が広がっていった。

そしたら、ある日のこと。

「あの...デートとか行きませんか?」

同じ部署の女の子から誘われたんや。

「えっ...ワイでええの...?」

戸惑いながらも、勇気を出して答えた。

「うん、行きたいです」

こうして、ワイの新しい人生が始まったんや。

メサイアコンプレックスをこじらせて、恋愛市場から撤退してもうたワイ。
でも、それを乗り越えて、やっと普通の幸せを掴めそうや。

「救世主やのうて、ただの平凡な男でええんや」

そう思えるようになった今、ワイは本当の意味で自由になれた気がするわ。

これからは、肩の力抜いて、等身大の自分で生きていくんや。
そうしたら、きっと本当の幸せが見つかるはずや。

「よっしゃ!明日からも頑張るで!」

ワイは今日も、普通の幸せを目指して歩んでいくのでした。



205エバーホワイト2

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