ワイはな、最近「反出生主義」にハマっとるんや。でも、周りの奴らはワイのこと理解してくれへん。そんなある日のこと...

「反出生主義って要は魂が疲れただけやろ」

ワイの親友の田中が、ポテチ食いながらそう言いよった。

「お前なぁ...」ワイは溜め息をついた。「そんな簡単な話やないんやで」

田中は首をかしげる。「いやいや、お前最近ずっとそんな暗い話してるやん。生まれてこない方がええとか、人類は子孫残すべきやないとか」

ワイは反論しようとしたが、言葉が出てこん。確かに、最近ワイの口癖は「生まれてこなければよかった」やった。

「お前さぁ、彼女にフラれたんちゃうか?」田中が心配そうに言う。

「違うわ!」ワイは思わず声を荒げた。「これは哲学的な話なんや。人生って苦しみの連続やろ?なら、生まれてこない方が幸せなんやないか?」

田中は首を横に振る。「お前、そんなこと言うてるけど、昨日コンビニのからあげクン食うてメッチャ喜んでたやんけ」

「そ、それは...」ワイは言葉に詰まる。確かに、からあげクンは美味かった。

「ほら見ろ」田中がニヤリと笑う。「人生、楽しいこともあるやん」

ワイは黙り込んだ。田中の言うことも一理あるかもしれん。でも、まだ納得できへん。

「でもな...」ワイは真剣な顔で言う。「生まれてくるかどうか、選べへんやん。それって不条理やないか?」

田中は考え込む。「確かにな...でも、だからこそ生まれた意味を見つけるんやないか?」

「意味なんてあるわけないやろ!」ワイは思わず叫んでしまった。

そのとき、となりのおっちゃんが話に割り込んできた。

「おう、若いのによう難しい話しとるな」

ワイらは驚いて振り返る。見たことないおっちゃんや。

「ワシもな、若い頃は似たようなこと考えとったで」おっちゃんは懐かしそうに言う。

「でも、あんた」おっちゃんはワイを指差す。「反出生主義って言うけど、それ要は魂が疲れただけやないかい?」

ワイは反論しようとしたが、言葉が出てこん。なんか、グサッときた。

「人生しんどいときもあるわな」おっちゃんは続ける。「でも、そんなときこそ立ち止まって、ゆっくり休むんや」

田中が頷く。「せやせや、お前最近休んでへんやろ?」

ワイは黙ったまま。確かに、最近は休む暇もなく必死こいて生きてきた。

「あんたらまだ若いんや」おっちゃんが優しく微笑む。「人生長いで。ゆっくり生きていけばええ」

ワイは急に涙が込み上げてきた。なんでやろ。

「ほら」田中がワイの肩を叩く。「明日は休みやし、どっか行こうや」

ワイは顔を上げる。「...うん」

その夜、ワイはベッドに横たわりながら考えた。

反出生主義...それは確かに魂が疲れた結果かもしれん。でも、だからこそ価値があるんやないか?

魂が疲れるほど、必死に生きてきたってことやろ。

ワイは深呼吸した。明日からまた、ゆっくり生きていこう。

反出生主義者としてやなくて、ただの人間として。

翌朝、ワイは久しぶりに気持ちよく目覚めた。

「よっしゃ、行くで!」

ワイは元気よく飛び起きる。今日は田中と遊びに行く約束やった。

スマホを見ると、田中からメッセージが来とった。

「おはよう!今日はめっちゃええ天気やで!」

ワイは思わず笑みがこぼれた。

返信しながら、ワイは思う。

(人生、そんなに悪くないかもしれんな)

ワイは家を出る。外の空気が、いつもより新鮮に感じた。

反出生主義...それはもしかしたら、新しい人生の始まりを告げるものやったんかもしれん。

ワイの魂は、少し休んだみたいや。

これからは、もっとゆっくり生きていこう。

だって、生まれてきてもうたんやし、せっかくやから楽しまんとな。

...fin...