ワイは窓から外を見て、そう呟いた。道端に立っとる若い人間や。スーツ着て、履歴書らしきもんを持っとる。完全に就活生やな。
「よっしゃ、アイツに取り入ったろ」
ワイはニヤリと笑って、外に飛び出した。
「にゃーん♡」
ワイは最高の愛嬌で鳴いてみせる。案の定、その人間はホイホイとワイに近づいてきよった。
「あら、可愛い猫ちゃん♪」
人間の女の子が、ワイを撫でようとする。
(ほんま、人間ちゅーんはアホやな)
ワイは、内心そう思いながらも、さらに甘えた声で鳴く。
「にゃおーん♡」
「きゃー、可愛い!」
女の子は完全にワイにメロメロや。こっちの思う壺やで。
「ねぇねぇ、どこかのお家の子かな?首輪してないけど...」
(そら、首輪なんかするかいな。ワイは自由な男や)
「でも、こんなに人懐っこいってことは、きっと飼い猫よね?」
(はぁ?誰がお前なんかに飼われるかボケ)
ワイは心の中でツッコミを入れつつ、さらに愛らしく鳴く。
「にゃー♡」
「もしかして...お腹空いてるのかな?」
(キターーー!!!)
ワイは内心ガッツポーズ。作戦成功や。
「ごめんね、今はカバンの中にお菓子しかないの...」
女の子は悲しそうな顔をする。
(お菓子でもええわ!早よ出せや!)
「でも、これでもいいかな?」
女の子はカバンからポケットティッシュを取り出した。
(ファッ!?ティッシュ!?誰がティッシュ食うかボケェ!)
ワイは落胆したが、それでも愛想よく鳴き続ける。すると...
「あ、そうだ!この履歴書の紙の端っこ、ちょっと破れてるし、これあげちゃおう♪」
(マジか!紙くれんのかよ!人間ホンマ頭おかしいで)
でも、ワイはこの機会を逃すわけにはいかん。女の子が差し出した履歴書の端っこを、上品に食べるフリをする。
「あら、本当に食べちゃった!可愛い〜♡」
(これでも、れっきとした就活猫やぞ)
ワイは得意げに胸を張る。
「あ、もうこんな時間!ごめんね、猫ちゃん。私、面接行かなきゃ!」
女の子は慌てて立ち上がる。
(おいおい、まだワイの就活終わってへんで)
ワイは女の子の後を追いかける。
「にゃおーん!」
「え?まだついてくるの?ごめんね、私これから大事な面接なの」
(そこやぞ!そこに付いていくんや!)
ワイは必死に女の子にしがみつく。
「もう、しょうがないなぁ...」
女の子はため息をつきながらも、ワイを抱き上げた。
(よっしゃ!これで会社まで行けるで!)
ワイは内心ほくそ笑む。
女の子と一緒に会社に到着。受付で女の子が話しとる。
「あの、履歴書を猫に少し食べられちゃって...」
(おいおい、ワイのせいにすんなや)
「え?猫?...あ、そういえば、うちの社長、猫好きなんですよ」
受付の人が言う。
(マジか!?これはチャンスや!)
ワイは、できるだけ可愛く振る舞う。
「じゃあ、この子も一緒に面接室に...」
「えぇ!?」
女の子は驚いとるが、ワイはご満悦や。
面接室に入ると、偉そうなおっさんが座っとる。多分社長やな。
「おや、これは可愛らしい猫じゃないか」
社長がニコニコしながら言う。
(よっしゃ、ワイの出番や!)
ワイは社長に近づき、最高の愛嬌を振りまく。
「うちの会社は、こういう機転の利く人材を求めているんだよ。猫を連れてくるなんて、君はセンスがあるね」
女の子は困惑しとるが、ワイは得意げや。
「それじゃあ、君を採用しよう。...そして、この猫も社員として迎えよう」
(ファッ!?ワイが社員に!?)
ワイは驚いたが、これ以上ないチャンスや。迷わず受けることにした。
こうして、ワイは晴れて正社員となったのであった。
...
「にゃーん」
ワイは今、会社の机の上で寝そべっとる。人間どもが必死こいて働いとるのを見ながらな。
(ほんま、ワイって天才やわ)
今日も、ワイの社畜観察記は続くのであった。
...fin...
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