ワイは今日も部屋に引きこもっとるんや。外の世界なんて知らんし、知りたくもない。学校?あんなもん行く意味あるんか?ワイには分からんのや。
「おい、起きろや!」
マッマの声が聞こえる。でもワイは動かん。布団の中が一番ええんや。ここなら誰も何も言わへん。
「もう何ヶ月も学校行ってへんやないか!このままじゃろくな大人にならんで!」
うるさいなぁ。ワイは耳を塞ぐ。大人になりたくないんや。だって大人になったら、みんな苦しそうやん。
ある日、ワイは思いついたんや。「せや!30時間寝たろ!」
なんでや?そんなんできるわけないやろ!って思うかもしれんが、ワイにはできるんや。だって、ワイの世界では時間なんてもんはないからな。
ワイは寝る。寝て、寝て、寝まくる。目が覚めたら、また寝る。何回繰り返したか分からん。でも、ワイは30時間寝たような気がするんや。
「...ん?なんか体が軽くなった気がするで」
ワイはびっくりした。なんや、この感覚は?久しぶりに元気が出てきたんや。
「よっしゃ!学校行ったろ!」
...って思ったけど、やっぱりアカンかったわ。玄関まで行ったけど、ドアを開ける勇気が出えへんかったんや。
「あかん...やっぱりワイにはムリや...」
ワイは再び部屋に戻る。でも、なんか違う。前みたいに布団に潜り込む気にはならんのや。
「せや!散歩いってみよか」
ワイは小さな一歩を踏み出した。外の空気が気持ちええ。でも、人の目が怖い。みんなワイのこと見てる気がするんや。
「あいつ、不登校のやつやん」
「うわ、キモ」
「あんなんなりたくないわ」
幻聴が聞こえてくる。ワイは耳を塞ぐ。でも、足は止まらへん。
公園に着いた。ブランコに座る。誰もおらん。ワイだけや。
「ここなら...ええかもしれん」
ワイはブランコをこぎ始める。上がって、下がって。空を見上げる。雲がゆっくり流れとる。
「なんやろ、この感覚...」
ワイは少し笑えた。久しぶりや。
その日から、ワイは毎日公園に行くようになった。でも、学校には行かへん。行けへんのや。
「おい、お前もう学校行けへんの?」
ある日、知らんやつに声をかけられた。ワイは驚いて振り返る。
「お、おう...」
「ワイもや。もう半年くらい行ってへんわ」
なんや、こいつも不登校なんか。ワイは少し安心した。
「一緒にブランコこがへん?」
ワイは頷く。二人で無言でブランコをこぐ。なんか、ええ感じやな。
それからワイらは毎日会うようになった。話すわけやないけど、一緒にいるだけでなんか落ち着くんや。
「な、学校行く気になった?」
ある日、そいつが聞いてきた。ワイは首を横に振る。
「ワイもや。でもな、このままやとアカンのかもしれん」
ワイは黙って聞く。
「でも、今はこれでええんやないか?ゆっくりでええねん」
ワイは頷く。そうや、ゆっくりでええんや。
30時間寝ても不登校は治らへん。でも、ちょっとずつ元気になれるかもしれん。それでええんや。
ワイらは今日もブランコをこぐ。明日はどうなるか分からへん。でも、今はこれでええんや。
空を見上げる。雲がゆっくり流れとる。ワイらもゆっくり進んでいくんや。
どこに向かうんかは分からへん。でも、それでええんや。
ワイらの時間は、まだまだ続くんや。
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