ワイこと鈴木太郎、今日も無気力にパソコンに向かっとるんや。29歳、フリーターで夢は作家になること。でも、現実は厳しいんよ。

「はぁ...今日も全然書けへんわ...」

ため息をつきながら、空っぽの原稿用紙を眺める。そんなワイの携帯が鳴った。

「もしもし?」

「太郎?久しぶり。美咲やけど」

ワイの心臓が高鳴る。美咲は元カノや。2年前に別れたんやけど、まだ忘れられへんのや。

「お、おう...元気にしとったか?」

「うん、元気よ。ところで...あんた、まだ作家になる夢追いかけてるの?」

ワイは少し躊躇いながら答える。「あ、ああ...まあな」

美咲はため息をつく。「もう、諦めたら?あんたに才能ないって言ったやん」

その言葉に、ワイの心に深い傷が刻まれる。

「そ、そんなこと...」

「現実見なよ。普通の仕事して、普通に生きたほうがいいって」

電話を切った後、ワイは呆然とする。

「才能ない...か」

その夜、ワイは酒に溺れた。朝、二日酔いで目覚めると、パソコンの画面にあるものが映っていた。

「Kindle...?」

どうやら酔っ払いながらAmazonを徘徊してたらしい。

「そうや...kindleで電子書籍出したろ!」

勢いで、ワイは書き始める。テーマは「才能のないやつの逆襲」

「よっしゃ!書くで!」

一週間後、なんとか5万字の小説が完成。タイトルは「才能ゼロから始める異世界書籍部」

「ふぅ...なんとか形になったわ」

 ワイはKindleに投稿するボタンを押す。

「これで...ワイの人生変わるかもしれん...」

そして、運命の一ヶ月が過ぎた。

「え...?」

ワイは自分の目を疑う。売上ランキングを見ると、なんとワイの本が上位に食い込んでいる。

「うそやろ...?」

さらに驚いたことに、出版社から連絡が来た。

「鈴木様、是非単行本化させていただきたいのですが」

ワイは思わず声を上げる。「マ?マジで?」

それからというもの、ワイの人生は激変する。

テレビ番組に呼ばれ、
「鈴木さん、この本を書いたきっかけは?」

ワイは少し照れながら答える。「ま、まあ...元カノに才能ないって言われて...」

本はどんどん売れていき、ワイの銀行口座は膨らんでいく。

「すげぇ...これが印税っちゅうやつか...」

ある日、ワイは高級レストランで食事をしていた。そこへ、見覚えのある顔が。

「た...太郎?」

美咲やった。

「お、おう...久しぶりやな」

美咲は驚いた顔でワイを見る。「あんた...テレビで見たわ。本当に作家になったんやね」

ワイは少し得意げに答える。「ああ、まあな。kindleのおかげやけどな」

美咲は申し訳なさそうな顔をする。「ごめんね...あの時、才能ないなんて言って」

ワイは優しく微笑む。「ええんや。あれがあったからこそ、今のワイがあるんや」

その日を境に、ワイと美咲は再び付き合い始める。

「太郎、次の本のアイデアは?」

「それが...なかなか浮かばんのや」

美咲は優しく微笑む。「大丈夫よ。あんたなら絶対書けるって」

その言葉に、ワイは勇気をもらう。

「そやな...頑張るわ」

しかし、現実は甘くなかった。次の本はまったく売れず、批評家からもボロクソに叩かれる。

「やっぱり、一発屋か...」

落ち込むワイに、美咲が声をかける。

「太郎、諦めんといて」

「でも...やっぱりワイには才能ないんやで」

美咲は強く首を振る。「違うよ。あんたには才能あるの。ただ、まだ眠ってるだけ」

その言葉に、ワイは涙が出そうになる。

「美咲...」

「さあ、もう一度頑張ろう?」

ワイは決意を新たにする。「おう...もう一回やってみるわ」

それから毎日、必死で書き続けた。夜遅くまでパソコンに向かい、朝まで考え込む日々。

「太郎、無理せんといてな」

美咲の心配をよそに、ワイはひたすら書き続ける。

そして、3ヶ月後。新作が完成した。

「よし...これや」

タイトルは「才能じゃない。才能じゃなかった」

 再びKindleに投稿するボタンを押す。

「どうか...」

1週間後、奇跡が起きた。

「うそやろ...」

ワイの新作が、Kindleランキング1位に躍り出たんや。

「や...やったんか...ワイ」

出版社からの電話が鳴り止まない。テレビ局からのオファーも殺到する。

「鈴木さん!新作の映画化が決定しました!」

ワイは呆然とする。「マ...マジか...」

美咲は涙を流して喜ぶ。「やったね、太郎!」

そして、1年後。

ワイは大きな会場で、サイン会を開いていた。

「先生!サインお願いします!」

「あの...応援してます!」

ファンの声に、ワイは照れくさそうに答える。

「ありがとう...みんなのおかげや」

サイン会が終わり、美咲と二人きりになったワイ。

「なあ、美咲」

「なに?太郎」

ワイは深呼吸をして言う。「結婚...せえへんか?」

美咲は驚いた顔をする。でも、すぐに満面の笑みに変わる。

「うん!喜んで!」

その日の夜、ワイは空を見上げながら思う。

「才能なんて、最初からあったわけやないんや。努力して、失敗して、それでも諦めんかったら、いつかは花開くんや」

そして、新しい小説のアイデアが浮かぶ。

「よっしゃ...次はこれや!」

ワイは、新たな物語を紡ぎ始めるのであった。

「才能なんて、最初から完璧なもんやない。磨いていくもんなんや」

そう心に誓いながら、ワイは再びパソコンに向かうのであった。

~完~