ワイこと山田太郎、今日も無気力にスマホゲーをやっとるんや。30歳無職、実家暮らしのニートや。
「はぁ...人生つまらんわ...」
そう呟きながら、ワイは歴史シミュレーションゲームに没頭する。
「よっしゃ!ワイの采配で敵軍を撃退や!」
画面の中では、ワイの指示通りに軍が動き、見事に勝利を収める。
「やっぱワイ、軍師の才能あるわ...」
そんな妄想に浸りながら、ふと呟いた。
「そや...転生するなら軍師になりたいわ」
その瞬間、部屋が真っ暗になった。
「な...なんや...?」
目を開けると、そこはどこか見知らぬ場所。古めかしい和室や。
「ここ...どこや...?」
困惑するワイの前に、一人の武将らしき人物が現れた。
「おお!待っておったぞ、軍師殿!」
「え...?」
ワイは状況が飲み込めない。
「わ...ワイが軍師...?」
武将は笑顔で答える。
「そうじゃ!お主が天から遣わされし軍師。我らの国を救う者じゃ!」
ワイは冷や汗を流す。「いや...ワイただのニートで...」
だが、武将は聞く耳を持たない。
「さあ、明日からお主の作戦で敵を討つのじゃ!」
「え?明日?ちょ、ちょっと待って...」
しかし、時すでに遅し。翌日、ワイは大軍を率いて戦場に立っていた。
「うわあああ...なんでこうなったんや...」
目の前には、無数の敵兵が押し寄せてくる。
「軍師殿!采配を!」
ワイの背後で武将が叫ぶ。
「あ...ああ...えーと...」
ワイは慌てて指示を出す。
「そ、そうや!右翼を...いや左翼を前進や!」
しかし、その指示で味方の隊列が乱れ、敵に突破されてしまう。
「あかん!違うわ!撤退や!」
慌てて撤退を命じるも、時すでに遅し。味方の兵士たちは次々と倒れていく。
「軍師殿!どうすればよいのじゃ!」
武将の必死の叫びに、ワイはパニックになる。
「わ...ワイにもわからんわ!」
結果、大敗北。かろうじて逃げ延びたワイたちは、山中の城に逃げ込んだ。
「くっ...まさかあんな大敗を喫するとは...」
武将は悔しそうに唸る。一方、ワイは青ざめた顔で座り込んでいた。
「や...やっぱりワイには無理や...」
しかし、そこで諦めるわけにはいかない。敵軍が城を包囲し始めたのだ。
「軍師殿!今度こそ名案を頼む!」
ワイは必死で考える。「そ、そうや!夜襲をかけたらどうや?」
その提案に、武将の目が輝いた。「おお!さすが軍師殿!」
しかし、その夜襲は惨憺たる結果に終わる。
「わ...罠やった...」
敵はワイたちの動きを予測していたのだ。夜襲部隊は壊滅し、城の守りはさらに手薄になってしまった。
「軍師殿...もはやこれまでか...」
武将の声には絶望が滲む。ワイは震える声で答える。
「す...すまん...ワイの采配が悪かったんや...」
その夜、ワイは悪夢にうなされる。
倒れていく兵士たち、炎上する城、そして自分を睨む無数の目...
「ひぃぃ!」
悲鳴を上げて目覚めるワイ。しかし、現実はさらに悪夢のようだった。
「敵がいよいよ攻め込んできたぞ!」
城内は混乱の極み。ワイは震える足で立ち上がる。
「も...もう終わりや...」
そう思った瞬間、ワイの脳裏に閃きが走る。
「そうや!和睦を申し込むんや!」
最後の望みを託して、ワイは敵将に使者を送る。しかし、返ってきた答えは...
「皆殺しにする」
絶望的な返事に、ワイの顔から血の気が引く。
「や...やっぱりアカンかったんか...」
城内では、ワイを責める声が聞こえ始めた。
「あの軍師のせいで我らはここまで追い詰められた!」
「天から遣わされたどころか、災いをもたらす者じゃ!」
ワイは部屋に閉じこもり、震えている。
「ご...ごめんな...みんな...ワイが...ワイが...」
そのとき、扉が勢いよく開いた。
「軍師殿!敵が攻め込んできた!」
ワイは立ち上がる力もない。
「も...もう...終わりや...」
城は陥落し、敵兵が なだれ込んでくる。ワイは観念して目を閉じた。
「ごめんな...みんな...ワイには軍師の器なんてなかったんや...」
次の瞬間、鋭い痛みがワイの体を貫いた。
「ぐっ...!」
目を開けると、胸から刀が突き出ている。
「こ...これで...終わりか...」
そして、ワイの意識が闇に沈んでいく...
...
「うわあああ!」
ワイは悲鳴を上げて飛び起きた。見覚えのある部屋。ボロボロのカーテン、散らかった床。
「え...?ワイの部屋...?」
どうやら、あれは全て夢だったらしい。
「ふぅ...夢か...」
安堵のため息をつくワイ。しかし、その安堵も束の間。胸に鋭い痛みが走る。
「いてっ...!」
痛みのあまりシャツをめくると、そこには...刀で突かれたような傷跡が。
「うそやろ...?」
ワイは震える手で傷跡を触る。間違いない、これは夢の中で受けた傷と同じ場所や。
「や...やばい...なんやこれ...」
そのとき、部屋の隅に見覚えのない箱が目に入った。恐る恐る開けてみると、中には古ぼけた巻物が。
「こ...これは...」
巻物を開くと、そこには見覚えのある文字が...
「天より遣わされし軍師へ」
ワイの顔が青ざめる。
「ま...まさか...」
そう、ワイの悪夢はまだ終わっていなかったのだ。
これが本当の地獄の始まり。軍師としての才能のないワイの、永遠に続く死のループ。
「や...やめてくれ...」
ワイの悲痛な叫びも空しく、再び部屋が闇に包まれていくのであった。
~完~
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