ワイは幽霊や。生前、大学生やったんやが、卒業間際に事故って死んでしもうてな。せやけど、好きな子に告白できへんまま逝ってしもうて、それが心残りで成仏できへんのや。

「はぁ...美咲ちゃん...」

ワイは毎日のように美咲の名前を呟きながら、キャンパスをさまよってたんや。幽霊やから誰にも見えへんし、触れへんのやけど、それでも美咲の姿を見るのが唯一の楽しみやったんや。

ある日のこと、ワイはふと思いついてしもうたんや。

「そや!幽霊やし、美咲ちゃんの部屋に行けるんちゃう?」

その瞬間、ワイの中で何かが弾けたんや。もう我慢できへん。美咲ちゃんの寝顔が見たい。

「よっしゃ、行ったろ!」

ワイは意気揚々と美咲の住むアパートに向かったんや。幽霊やから、壁もドアも余裕で通り抜けられるで。

「美咲ちゃんの部屋はっと...204号室やな」

ワイはドキドキしながら、部屋に入ろうとしたんや。

「美咲ちゃん、ごめんな...ちょっとだけ見せてな...」

そう言いながら、ワイは壁をすり抜けようとしたんや。

せやけど...

「あれ...?」

壁をすり抜けられへんのや。

「なんやこれ...幽霊やのに...」

ワイは必死に壁に体当たりしたんやけど、ビクともせえへん。

「くそぉ...なんでや...」

ワイは途方に暮れてしもうた。そのとき、突然、空から声が聞こえてきたんや。

『幽霊ワイ、あなたの行動は現実世界の規約に違反しています』

「え?なんやねん?」

『好きな子の部屋に無断で侵入しようとする行為は、たとえ幽霊であっても許可されません』

「ちょ、ちょっと待ってや!ワイ、ただ美咲ちゃんに会いたかっただけや!」

『理由は問いません。あなたの行動により、現実世界からのBANが決定しました』

「えっ!?ちょっと待ってや!話し合いの余地はないんか!?」

せやけど、もう遅かったんや。ワイの体がどんどん透明になっていくんや。

「あかん...消えるぅ...」

ワイは必死に抵抗しようとしたんやけど、体はどんどんフェードアウトしていくんや。

「くそぉ...なんでや...ワイはただ...美咲ちゃんに...」

最後の最後まで、ワイは美咲の名前を呼び続けたんや。

そうして、ワイは完全に消えてしもうたんや。

...

次の日、なんJには新しいスレが立っててな。

「幽霊がBANされるってマ?」

「草」
「お前BANされろ」
「そんなんおらんわ」

みんな信じへんかったみたいやわ。でも、スレ主は必死に説明しとったで。

「ガチやって!昨日、知り合いの幽霊が消えたんや!」

そのスレを見てた美咲は、なんとも言えない表情をしてたんやと。

「もしかして...あいつかな...」

美咲は窓の外を見つめながら、ポツリと呟いたんや。

「ごめんね...気づいてあげられなくて...」

そうして、ワイの話は完全に幕を閉じたんや。でも、なんJには新たな都市伝説として語り継がれていくことになるんやで。

「幽霊、リアルBANされる」

誰かがそう言うたとか言わんとか...

...

ワイが消えた後、美咲の部屋では不思議なことが起こり始めたんや。

時々、窓ガラスに「ごめん」って文字が曇るように浮かび上がったり、美咲の髪を優しく撫でる風が吹いたり...

美咲はそれが誰なのか、うっすらと気づいてたんやと。

「あいつ...まだここにおるんかな...」

美咲は部屋の空気に向かって、そっと語りかけるんや。

「もう、しつこいなぁ...でも、ありがとう」

そんな美咲の言葉に、部屋の空気がほんのり温かくなるんや。

ワイは現実世界からBANされても、美咲の心の中にはちゃんと生き続けてるんやな。

それを知った時、ワイはようやく安らかに眠れたんやと。

「美咲ちゃん...幸せになってな...」

ワイの想いは、永遠に美咲の心の中で生き続けるんや。

現実BANされても、想いは消えへんってことやな。

おしまい。
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204幽霊になった私2

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