ワイは幽霊や。生前、大学生やったんやが、卒業前に不慮の事故で死んでしもうてな。せやけど、就活せんと成仏できへんのや。そやから、幽霊のまま就活することにしたんや。
朝イチの面接に向かう道中、ワイは震えてたわ。「うわぁ〜緊張するンゴ...」って感じやな。スーツはバッチリ決めてるつもりやけど、透けてへんかなぁ...なんて考えてたら、もう会社に着いてもうた。
受付で名前言うても、当然スルーされるわな。幽霊やし。でも、なんとか面接会場まで辿り着いたで。
「失礼します」
ワイが部屋に入ったんやけど、面接官は全然気づいてくれへんのや。3人おるのに、誰も振り向いてくれへん。ワイ、泣きそうになってきたわ。
「あの...ワイです...」
声かけても無駄や。面接官たちは、ワイがおらんかのように喋り続けてるんや。
「次の面接者さんは...おや?まだ来てないのかな」
「ちょっと遅刻みたいですね」
ワイ、必死で叫んだで。「ここにおるんです!見てください!」
でも、誰も聞こえへんのや。ワイの声、届いてへんのや。
もう限界やった。ワイは泣きながら部屋を飛び出したんや。廊下で立ち尽くすワイを、他の就活生たちがすり抜けていくんや。みんな生きてて、みんな面接受けられて...ワイだけが...
そんとき、ふと横を見たら、同じように泣いてる幽霊の女の子がおったんや。
「あんたも...?」
「うん...私も就活の途中で...」
お互いの境遇を察し合って、二人で号泣してもうた。でも不思議と、ちょっと心が軽くなった気がしたで。
「なぁ...一緒に頑張らへん?」
ワイが声かけたら、女の子は涙ながらに頷いてくれたんや。
そうして、幽霊就活仲間ができたワイ。まぁ、認知してもらえへんのは相変わらずやけど、一緒に頑張る仲間ができて心強なったわ。
次の日、ワイらは別の会社の面接に向かったんや。今度こそ認知してもらえるかもしれへんって期待を胸に...
会社に着いたら、なんと受付のお姉さんがワイらに気づいてくれたんや!
「あら、幽霊さんたち。就活頑張ってるのね」
ワイら、びっくりして目を丸くしてもうた。
「え?見えるんですか?」
「ええ、私も幽霊なの。でも、ここの社長さんが霊感強くて、私を雇ってくれたのよ」
受付のお姉さんは優しく微笑んでくれたんや。
「さぁ、面接頑張ってね。きっと大丈夫よ」
その言葉に勇気づけられて、ワイらは面接会場に向かったんや。
扉を開けると、中にはおっさんが一人。
「おぉ、来たか。幽霊の就活生さんたちやな」
社長はニコニコしながら、ワイらに椅子を勧めてくれたんや。
「うちはな、幽霊でも働けるような会社にしたいと思ってるんや。霊界と現世の架け橋になるような仕事や。君らの力を貸してくれへんか?」
ワイ、思わず泣いてもうた。やっと、やっと認めてもらえた。やっと、ワイらの存在を受け入れてくれる人に会えたんや。
「は、はい!よろしくお願いします!」
ワイらは声を揃えて答えたんや。
面接が終わって外に出たら、なんか体が軽なってきたんや。
「あれ...?」
ワイらの体が、ゆっくりと光り始めたんや。
「もしかして...成仏...?」
女の子と顔を見合わせて、ワイらは笑ったんや。
「やったな」
「うん、やったね」
そうして、ワイらは光に包まれて消えていったんや。就活、ようやく終わったわ。
...
「おい、起きろ」
「ん...?」
目を覚ますと、大学の講義室やった。隣の奴が肩叩いて起こしてくれたんや。
「お前、就活の夢でも見てたんか?寝言で『面接...面接...』って言うてたで」
「あ、ああ...そうみたいやな」
ワイは頭をポリポリ掻きながら、なんとも言えない気分になったんや。
「よっしゃ、これからは本気で就活するで!」
ワイは心の中で誓ったんや。幽霊になる前に、ちゃんと就職決めたるで!
おしまい。
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