深夜3時、なんJ民のタロウは、いつものように布団の中でスマホをポチポチしとった。

「はぁ...人生つまらんわ。生まれてこんかったらよかったのに」

そう呟きながら、タロウは「反出生主義」についてのスレを立てた。

「ワイ、反出生主義に目覚める」

レスがつき始める。

「草」
「お前が産まれんかったら誰がなんJするんや」
「そら、そう思う時期もあるやろ」

タロウは続けて書き込む。

「だって、生きるって苦しいだけやん。死んだら楽になれるのに」

その瞬間、タロウのスマホ画面が激しく光り出した。

「なんやこれ!?」

眩しさに目を閉じたタロウが、おそるおそる目を開けると...

「ファッ!?ワイどこにおるんや!?」

タロウの周りには、ただ真っ白な空間が広がっていた。

「やぁ、タロウくん」

突如、声が聞こえてきた。振り向くと、そこにはヒゲを生やした老人が立っていた。

「あんた、誰や?」

「ワシか?ワシは...そうやな、『存在』とでも呼んでくれ」

タロウは困惑する。

「はぁ?何言うとんねん。つか、ここどこや?」

老人は微笑む。

「ここは『無』の世界や。お前が望んでいた世界やな」

タロウは驚愕する。

「え?ワイが...死んだってこと?」

老人は首を振る。

「いや、まだ生きとるで。ただ、お前の『意識』だけをここに連れてきたんや」

タロウは頭を抱える。

「もうわけわからんわ...」

老人は続ける。

「タロウくん、お前は『反出生主義』とかいうのに惹かれとるみたいやけど、本当にそれでええんか?」

タロウは反論する。

「だって、生きるって苦しいだけやん。産まれてこんかったら、苦しまんですむのに」

老人はニヤリと笑う。

「ほな、聞くけど。お前、好きな食べ物はなんや?」

タロウは少し考えて答える。

「う〜ん、やっぱチーズ牛丼かなぁ」

「ほな、チーズ牛丼が美味しいって感覚は、生まれてこんかったら味わえへんかったんやで?」

タロウは黙り込む。

老人は続ける。

「人生には確かに苦しいこともあるけど、楽しいこともあるんや。それを味わえるのは、生まれてきたからこそやで」

タロウは反論しようとするが、言葉が出てこない。

老人はさらに畳みかける。

「そもそも、『苦しい』って感覚も、生きとるからこそあるんや。死んだら、苦しいも楽しいもないで」

タロウは混乱する。

「でも...でも...」

老人は優しく微笑む。

「タロウくん、生きるっていうのは、苦しいことも楽しいことも、全部ひっくるめての経験なんや。それを否定するんは、人生そのものを否定することになるんやで」

タロウは黙ってうつむく。

老人は続ける。

「そして、死んだ後は永遠の『無』や。反出生主義も、哲学も、思想も、全部無くなるんや。お前の存在そのものが消えてしまうんや」

タロウは顔を上げる。

「じゃあ、ワイはどうすればええんや...」

老人はにっこりと笑う。

「生きるんや。苦しいこともあるやろう。でも、その中で小さな幸せを見つけていくんや。それが人生っちゅうもんや」

タロウは深く考え込む。

そのとき、周りの白い空間が揺らぎ始めた。

「お!タロウくん、そろそろ時間みたいやな。現実に戻る頃や」

タロウは慌てて叫ぶ。

「ちょ、ちょっと待って!まだ聞きたいことが...」

老人は手を振る。

「またな、タロウくん。人生楽しんでいけよ!」

目が眩む。

「うおおおお!」

タロウが目を覚ますと、元の部屋に戻っていた。時計を見ると、まだ深夜3時5分。

「夢...か?」

タロウはスマホを見る。「反出生主義」のスレはまだ残っていた。

タロウは深く息をつき、こう書き込んだ。

「すまん、ワイの負けや。生きていくわ」

レスがつく。

「お、悟ったか」
「よう言うた!」
「明日チーズ牛丼食べに行こうや」

タロウは微笑む。確かに人生は苦しいこともある。でも、こうしてなんJ民と馬鹿話ができるのも、生きているからこそなんや。

「よっしゃ!明日は朝からチーズ牛丼や!」

タロウは意気揚々とそう書き込んだ。

死んだら永遠に無。反出生主義も無や。だからこそ、今を精一杯生きていこう。

そう心に誓いながら、タロウは布団に潜り込んだのであった。

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