ワイ、まだ生まれる前の魂や。人間界に降り立つ前の、あの世とこの世の狭間におるんや。周りには、同じく生まれる前の魂がウヨウヨおるわ。

「はぁ...生まれたくないンゴ...」

そう呟きながら、ワイは魂たちが集まる掲示板「霊界J」をウロウヨしとるんや。

「おっ?なんやこのスレ...」

ついつい開いてしまったんや。

「人間界降臨した報告スレ」

「くっそ...リア降臨爆発しろや...」

嫉妬に狂いそうになりながらも、ワイはスレを覗き続けるんや。

「ワイ、今日人間界に降臨したで!」

「ワイも受精完了や!」

「無事出産や!」

「はぁ!? 人間界なんて最悪やろ!」

ワイは思わず書き込んでしまったんや。

「なんやお前...反出生主義者か?」

「そうや!生まれるなんて最悪の行為や!」

「でもお前、まだ霊界におるやろ?」

「ぐぬぬ...そ、そんなん関係ないわ!」

顔...いや、魂を真っ赤にしながら必死に反論するワイ。でも、霊界J民は容赦なかったんや。

「霊界童貞が何言っとんねん」

「経験もないくせに偉そうやな」

「お前、降臨できへんからそんなこと言っとるだけやろ」

「違うわ!ワイは真剣に考えて反出生主義になったんや!」

必死に言い訳するワイやけど、誰も聞く耳を持たへんのや。

「はぁ...もういいわ...」

落ち込んだワイは、霊界の片隅に籠もることにしたんや。

そんなある日、ワイの魂生に転機が訪れたんや。

「おい、お前いつまで霊界におるつもりや」

大霊に怒鳴られて、ワイは仕方なく人間界行きの準備を始めたんや。

「はぁ...生まれなければ苦しむ必要もないのに...」

そう思いながら、受精卵探しを始めたワイ。

そこで、ワイは運命の出会いをしてしまったんや。

「あの...この受精卵どこにありますか?」

「はい、こちらにございます...って、か、可愛い魂...」

思わず見惚れてしまったワイ。相手の魂も、なぜかワイのことをじっと見つめとるんや。

「あの...私、反出生主義なんですけど...」

「えっ!? ワイも反出生主義や!」

「え!? すごい偶然ですね!」

そこから二つの魂は意気投合してしまったんや。

「ワイくんも人間界には行きたくないんですか?」

「そうや!絶対に生まれたくない!」

「私も同じです!でも...」

ワイは思わず...魂が赤くなってしまったんや。

「でも...一緒に降臨するのもアリかな...」

「え...私も...そう思ってました...」

こうして、反出生主義者同士の魂の触れ合いが始まったんや。

二つの魂で霊界を漂ったり、転生の記憶を語り合ったり...今まで経験したことのない幸せを、ワイは味わったんや。

「でも...こんな幸せを感じるのって、存在してるからやな...」

「そうですね...でも、だからこそ人間界には行きたくない。あの苦しみを味わいたくない」

「せやな...」

二つの魂で語り合ううちに、ワイの中で何かが変わっていったんや。

「生まれたくないけど...君に出会えてよかった」

「私も...ワイくんに出会えて本当によかった」

そして、ついにその日がやってきたんや。

「ワイくん...その...」

「う、うん...」

二つの魂は震えながら、受精卵に近づいたんや。

「あの...ワイ...実は...」

「ワイも...実は...」

「怖いんです...」

「ワイも怖いんや...」

二つの魂は、初めての人間界降臨を前に震えていたんや。でも、お互いを思いやりながら、ゆっくりと受精卵に近づいていったんや。

「ワイくん...一緒なら...」

「ワイも...一緒なら...」

こうして、反出生主義のワイくんは、ついに人間界に降臨することになったんや。

その後、二つの魂は双子として生まれ、反出生主義を貫きながらも、お互いを支え合って生きていったんや。

「生まれてきたことは後悔してるけど...君と一緒で良かった」

「私も...ワイくんと一緒で本当によかった」

二人で寄り添いながら、そう呟くのであった。

おしまいや。


105真論君家の猫2

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