ワイこと鈴木純一、33歳の数学者や。某国立大学で准教授しとるんやけど、最近ちょっとした閃きがあってな。それが「世界のすべては二次元に帰納できる」っちゅう理論なんや。
ある日のこと。大学の食堂でカレー食っとったら、同僚の山田がやってきよった。
「おっ、純一!また変なこと考えとるんか?」
「あぁ、山田か。実はな、世界のすべては二次元に帰納できるんちゃうかって思うとんねん」
山田は呆れた顔で言うた。「お前、また何言い出すねん。三次元の世界を二次元に帰納できるわけないやろ」
「いやいや、聞いてくれよ。例えばな、この食堂のカレーや。三次元のルーとご飯が、最終的には舌という二次元の平面で味わわれるやろ?つまり、三次元の味が二次元に集約されとるんや」
「お前、それただの歪んだ例えやろ…」
ワイは構わず続けた。「いやいや、もっと凄いことに気づいたんや。人間の目で見る世界だって、実は網膜という二次元の平面に投影されとるだけやないか。つまり、我々が見とる三次元世界は、すべて脳内で二次元から再構築されとるんやで!」
山田は頭を抱えた。「もうええわ。お前の話聞いとったらワイまで頭おかしなるで」
そんな会話をしとる間にも、ワイの頭の中では次々と新しいアイデアが浮かんできよった。
「そうや!絵画を見てみい。ゴッホやモネの絵、あんなん平面やのに三次元の世界を表現しとるやんか。つまり、二次元で三次元を完全に表現できるってことやんな!」
山田はもう聞く気すらなくなったんか、さっさとどっかいってもうた。でも、ワイはますます興奮してきよった。
その日の夜、家に帰ってパソコンの前に座ったワイは、次々とアイデアをメモしていった。
「そもそも、数学だってほとんどの場合は二次元の紙の上で証明するんや。つまり、高次元の概念だって、最終的には二次元に還元できるってことやないか!」
ワイは興奮のあまり、夜中までパソコンに向かっとった。翌日の朝、目が覚めたらなんと論文の下書きができとった。タイトルは「二次元帰納理論:世界の本質的な平面性について」
大学に着くなり、ワイは同僚たちに声をかけまくった。
「おい、聞いてくれ!世界のすべては二次元に帰納できるんや!」
みんな最初は呆れた顔しとったけど、ワイの熱弁を聞くうちに少しずつ興味を示し始めよった。
物理学科の教授が言うた。「確かに、ホログラフィック原理では、三次元の情報が二次元の表面に符号化できるって言うとるな」
ワイは飛びついた。「そうそう!それや!物理学でもそんな考え方があるんか!」
芸術学部の准教授も加わってきた。「芸術の世界でも、遠近法を使って平面に立体感を表現することはよくありますね」
ワイはますます調子づいてきた。「ほらみい!芸術の世界でもそうなんや!これはもう、分野を超えた普遍的な理論になる可能性があるで!」
そんなこんなで、ワイの「二次元帰納理論」は大学中で話題になってもうた。批判的な意見もあったけど、意外と支持する声も多くてビックリしたわ。
ある日、学長から呼び出しがあった。ワイはビクビクしながら学長室に向かった。
「鈴木君、君の理論のことだが…」
ワイは覚悟を決めた。「はい、申し訳ありません。ちょっと調子に乗りすぎました」
すると学長は笑顔で言うた。「いや、面白い着想だと思うよ。学際的な研究プロジェクトとして発展させてみないか?」
ワイは驚きのあまり、言葉を失ってもうた。
それから数ヶ月後、ワイを中心とした「二次元帰納理論研究プロジェクト」が立ち上がった。数学、物理学、芸術学、心理学など、様々な分野の研究者が集まって、この奇妙な理論について真剣に議論するようになったんや。
もちろん、批判的な意見もたくさんあった。でも、この理論をきっかけに、今まで交流のなかった分野同士が対話を始めるようになったんは、めっちゃ面白い副産物やったな。
ある日、国際学会でワイの理論を発表することになった。緊張しながら壇上に立ったワイは、こう切り出した。
「世界のすべては二次元に帰納できる…と、ワイは考えとります」
会場からはクスクスと笑い声が漏れた。でも、ワイは動じずに話を続けた。
「確かに、一見するとアホな理論に聞こえるかもしれません。でも、この考え方を突き詰めていくと、意外な発見があるんです」
そして、ワイはこれまでの研究成果を発表していった。数学的な証明から始まり、物理学での応用、芸術における表現手法、さらには心理学での知覚理論との関連性まで。
発表が終わったとき、会場は静まり返っとった。そして…
大きな拍手が起こったんや。
質疑応答では、批判的な意見ももちろんあった。でも、多くの研究者が「面白い視点だ」「新しい研究の可能性が見えてきた」と言うてくれたんや。
学会から帰ってきたワイは、なんだか晴れやかな気分やった。世界を二次元に帰納する?アホみたいな理論かもしれん。でも、そのアホみたいな発想が、新しい対話や発見のきっかけになるんやったら、それはそれで意味があるんやないか。
その夜、ワイは久しぶりに飲みに行った。行きつけの居酒屋で、ビールをグビっと飲んで、ふと天井を見上げた。
「世界は三次元なんかもしれん。でも、この瞬間のワイの幸せは、まさに二次元や。コップの中のビールの表面みたいにペラペラで、でもそれでええんや」
ワイはそう呟いて、もう一杯ビールを注文したんや。
そして、ワイの「二次元帰納理論」の冒険は、まだまだ続いていくんやで。
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