ワイ、25歳ニート。人生終わっとると思いながら毎日を過ごしとったんや。

「はぁ...ワイの人生、もうアカンわ...」

そう呟きながら、ワイはまたベッドに潜り込んだ。

朝は昼過ぎ。起きてスマホいじって、コンビニ飯食って、またスマホ。夜はアニメ見て、寝るのは朝方。

こんな生活を3年も続けとるんや。

マッマは毎日のように言うてくる。

「いつまでそないな生活しとんねん!」
「はよ仕事探せ!」
「このままじゃ将来どないすんねん!」

ワイの返事はいつも同じや。

「ごめん...明日から頑張る...」

でも、その「明日」が永遠に来ーへんのや。

そんなワイの人生に、ある日変化が起きたんや。

朝いつものように起きて、スマホ見てたら、なんJに気になるスレが立っとった。

「ワイ、イギリス人になりたくて海の紅茶投げたら人生変わったで」

「なんやそれ?」

興味津々でスレ開いてみたら、驚きの内容やった。

「ボストン茶会事件みたいに、海に紅茶投げたらイギリス人の血が目覚めて人生変わったわ」

「はぇ〜」

ワイ、なんか寒気がしてきたわ。

「イギリス人になれるんか...?」

そう思いながら、スレをどんどん読み進めていった。

「紅茶投げたら突然英語ペラペラになってもうた」
「急に紅茶が美味く感じるようになった」
「スコーンが毎日食べたくなる」

ワイ、なんかワクワクしてきた。

「ワイも...イギリス人になりたいンゴ...」

そう思い立ったが早いか、ワイは行動を起こしたんや。

まずは近所のスーパーで紅茶を大量に買い込んだ。

「よし、これで準備オッケーや」

次の日、ワイは早起きして海岸に向かったんや。

朝もやの立ち込める海岸に立つワイ。
手には紅茶の箱を抱えとる。

「ふぅ...」

深呼吸して、ワイは紅茶を海に向かって投げ始めたんや。

「うおおおお!イギリス人になるんやあああ!」

ティーバッグが次々と海に投げ込まれていく。

「エリザベス女王!ビッグベン!ハリーポッター!」

ワイは叫びながら、紅茶を投げ続けた。

30分後、全ての紅茶を投げ終えたワイは、膝をつきながら海を見つめとった。

「はぁ...はぁ...これで、ワイもイギリス人や...」

そう思った瞬間、突然の頭痛に襲われたんや。

「うっ...!」

目の前がぐるぐる回り始めた。

「な、なんや...これ...」

そのまま、ワイは砂浜に倒れ込んでしまったんや。

目が覚めたら、なんと病院のベッドの上やった。

「あれ...?ワイ、どないしたんや...?」

「おお、目が覚めたか」

そう声をかけてきたんは、白衣を着たお医者さんや。

「どないしたんですか...?」

「君、海岸で倒れてたんだよ。熱中症だね」

「えっ...」

ワイ、がっかりしてもうた。イギリス人になれへんかったんや。

「それにしても、君は何をしてたんだい?海岸にティーバッグが散らばってたよ」

「あ、あの...」

ワイ、顔を真っ赤にしながら事情を説明したんや。

お医者さん、最初は呆れた顔しとったけど、だんだん優しい顔になってきた。

「君、イギリスに憧れてるんだね」

「はい...」

「でも、イギリス人になるには、そんな方法じゃダメだよ」

「そうですよね...」

ワイ、しょんぼりしてもうた。

「イギリスのことをもっと知りたいなら、まずは英語の勉強から始めてみたらどうだい?」

「英語...ですか?」

「そう。それから、イギリスの文化や歴史も学んでみるといい」

お医者さんの言葉に、ワイはなんか希望が湧いてきたんや。

「分かりました!頑張ってみます!」

その日から、ワイの生活は大きく変わったんや。

毎朝早起きして、英語の勉強を始めた。
YouTubeでイギリス英語の動画を見たり、BBC のニュースを聴いたり。

イギリスの歴史本も読むようになった。
ヘンリー8世のこととか、エリザベス1世のこととか、めっちゃ面白いんや。

紅茶の淹れ方も勉強した。
ミルクを先に入れるか後に入れるかで、イギリス人は大激論になるらしいで。

休日には、近所の英会話教室にも通い始めた。

「Hello, my name is...」

最初はめっちゃ緊張したけど、だんだん楽しくなってきたんや。

マッマも、ワイの変化に気づいてきた。

「お前...最近えらい頑張っとるな」

「せやろ?ワイ、イギリス人になるんや!」

マッマ、最初は呆れとったけど、だんだん応援してくれるようになってん。

「ほな、スコーンでも作ってあげるわ」

「おお!サンキューマッマ!」

半年後、ワイの部屋は完全にイギリス風に変わっとった。

ユニオンジャックの旗が壁に貼ってあって、
本棚にはシェイクスピアの全集が並んどる。
紅茶セットも、本場イギリスから取り寄せたんや。

「Jolly good!(素晴らしいですね!)」

ワイ、鏡の前で英語の練習をしとる。

発音も、だいぶイギリス英語っぽくなってきたで。

そんなある日、ワイにとって大きなチャンスが訪れたんや。

英会話教室の先生が言うてきた。

「君、イギリスに短期留学してみない?」

「えっ!マジっすか!?」

ワイ、飛び上がるぐらい嬉しかったんや。

「うん、君の頑張りを見てたら、これは絶対いい経験になると思ってね」

「行きます!絶対行きます!」

家に帰って、マッマに報告したんや。

「マッマ!ワイ、イギリス行くで!」

マッマ、最初は心配そうやったけど、

「お前の夢やもんな。頑張ってこい」

って、背中を押してくれたんや。

そして、ついにその日がやってきた。

ワイ、生まれて初めて飛行機に乗って、イギリスの地を踏んだんや。

「うおおお...ここが本場や...!」

ロンドン・ヒースロー空港に降り立った瞬間、ワイの目に涙が光った。

「I'm home...(ただいま...)」

そう呟いて、ワイはイギリスでの生活を始めたんや。

ホームステイ先のファミリーは、めっちゃええ人たちやった。

「Welcome to England! (イングランドへようこそ!)」

ワイの拙い英語も、優しく聞いてくれる。

毎日が新しい発見の連続や。

本場のフィッシュアンドチップスを食べたり、
ビッグベンを見上げたり、
ハリーポッターのロケ地を巡ったり。

「Amazing! (すごい!)」

ワイ、毎日「Amazing!」を連発しとる。

そんなある日、ホストファミリーのお父さんが言うてきた。

「君は本当に日本人なのかい?まるでイギリス人みたいだよ」

その言葉を聞いて、ワイは思わず涙が出そうになったんや。

「Thank you... That means a lot to me. (ありがとうございます...とても嬉しいです)」

1ヶ月の留学期間はあっという間に過ぎて、日本に帰る日がやってきた。

空港で、ホストファミリーとお別れする時、みんな泣いとったんや。

「また来てね」
「次は長期で来い」
「君はもう、私たちの家族だよ」

ワイ、もうボロボロや。

「I'll be back... I promise. (必ず戻ってきます...約束します)」

そう言って、ワイは飛行機に乗ったんや。

日本に帰ってきて、マッマと再会した時。

「お帰り!どやった?イギリス」

ワイ、満面の笑みで答えたんや。

「最高やった!ワイ、絶対またイギリス行くで!」

マッマ、ニコニコしながら言うた。

「お前、顔つきが変わったなぁ」

確かに、鏡を見ると、昔のワイとは別人みたいや。

目に力があるっていうか、自信に満ち溢れとるっていうか。

「せやろ?ワイ、もうイギリス人や!」

冗談めかして言うたけど、心の中では本気やった。

今のワイは、イギリス人になりたくて海に紅茶投げてた頃の自分とは全然違う。

イギリス人になれへんかったけど、イギリスへの愛は本物になったんや。

そして何より、自分の人生を変えられたんや。

ワイは今、イギリスの大学への留学を目指して勉強しとる。
将来は、日本とイギリスの架け橋になりたいんや。

たまに思い出すわ。
あの日、海に紅茶投げてた自分のこと。

「あの時のワイに教えてやりたいわ。イギリス人になるのに必要なんは、紅茶やのうて、情熱やってな」

そう思いながら、ワイは今日も紅茶を淹れて、英語の勉強を始めるんや。

「Cheerio! (じゃあね!)」

おしまい。

204幽霊になった私2

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