「はぁ...金なんか意味ないわ...」

ワイこと鈴木金太郎(32)は、高級マンションの最上階で溜め息をついていた。

「年収1億円です!」
「資産100億円あります!」
「高級車10台持ってます!」

そんな自慢をしたところで、ワイには彼女ができない。

「モテたことあらへん...ガチの金持ちやのに...」

鏡に映る自分を見て、金太郎は首を傾げた。

身長165cm、体重80kg、ハゲかけ、メガネ。
顔は...まぁ、母ちゃん以外に褒められたことない。

「こんなんじゃ、誰も振り向いてくれへんわ...」

そんな時、金太郎の携帯が鳴った。

「もしもし、金ちゃん?」

声の主は、金太郎の幼なじみ・田中。

「どないしたん、急に」

「お前さぁ、そろそろ結婚せえへんの?」

「はぁ?」

金太郎は、思わず吹き出した。

「無理やて。ワイみたいなんが結婚できるわけないやろ」

「いや、お前金あるやん。お見合いすれば余裕やで」

「...マ?」

「せやで。ワイが紹介したるわ。明日の夜、時間あるか?」

「あ、ある...」

「よっしゃ。じゃあ明日な!」

電話を切った金太郎は、複雑な表情を浮かべた。

「お見合いか...まぁ、ええか。どうせ断られるやろ」

翌日の夜。

高級レストランの個室で、金太郎は汗だくになっていた。

「こ、こんばんは...」

相手の女性・美咲(28)は、驚くほど美人だった。

「はじめまして。鈴木さんですね」

「は、はい...」

緊張しすぎて、ろくに会話もできない金太郎。

しかし、美咲は優しく微笑んでくれた。

「鈴木さんって、すごい会社の社長さんなんですよね」

「え?あ、はい...まぁ」

「素敵ですね。私、頑張ってる人尊敬します」

金太郎は、なんだか胸がキュンとした。

「ほ、本当ですか?」

「はい。私、鈴木さんみたいな方を探してたんです」

「えっ...」

信じられない展開に、金太郎は戸惑った。

お見合いは、驚くほどうまくいった。

そして、3ヶ月後。

「えっ!?結婚!?」

田中が驚いた声を上げた。

「お、おう...」

金太郎は、照れくさそうに頷いた。

「すげぇな、お前...よくやったで!」

「ありがとう...」

そして、結婚式。

美咲は純白のドレス姿で輝いていた。

「私、幸せです」

美咲の言葉に、金太郎は涙を流した。

「ワイも...幸せや」

こうして、金太郎の新生活が始まった。

しかし...

「ねぇ、お金ちょうだい」

結婚して1ヶ月。美咲の態度が急変した。

「えっ?」

「だって、あなたお金持ちでしょ?私に毎月1000万くらいくれてもいいじゃない」

「そ、そんな...」

「えー、ケチ!」

美咲は、ふくれっ面をした。

「わ、分かった...」

金太郎は、しぶしぶ1000万を渡した。

そして、2ヶ月目。

「ねぇ、もっと高い家に引っ越したい」

「えっ...でも、ここ最高級マンションやで?」

「いやよ!もっと豪邸がいい!」

金太郎は、また要求を飲んでしまった。

3ヶ月目。

「私、外車欲しい」

「はぁ...」

4ヶ月目。

「ハワイに行きたい!ファーストクラスで!」

「...」

5ヶ月目。

「私のお母さんにもお金あげて!」

「...............」

金太郎の貯金は、みるみる減っていった。

「はぁ...こんなはずじゃなかった...」

ある日、金太郎は会社から帰宅した。

「ただいま〜」

返事がない。

「美咲?」

リビングに行くと、そこには見知らぬ男がいた。

「お、お前誰や!」

男は、ニヤリと笑った。

「美咲の彼氏だよ。おまえが留守の間、いつも呼ばれてるんだ」

「はっ?」

その時、美咲が現れた。

「あら、帰ってきたの?」

「美咲...これはどういうことや」

美咲は、冷たい目で金太郎を見た。

「もう隠す必要ないでしょ。あなたなんて、お金目当てで結婚しただけよ」

金太郎は、その場に崩れ落ちた。

「なんで...ワイのことを...」

「だって、あなたみたいなブサイクじゃ愛せないもの」

美咲の言葉が、金太郎の心を刺した。

「ほな...出てって」

「えっ?」

「ここはワイの家や。出てけ」

美咲は、驚いた顔をした。

「ふん、いいわよ。でも慰謝料よこしなさい!」

「あかん」

「はぁ?」

金太郎は、静かに言った。

「もう、お前にはビタ一文やらん」

「な、なによ!訴えてやる!」

「ええで。ワイには最高の弁護士がおるしな」

美咲は、激怒して出ていった。

その後、金太郎は離婚訴訟で勝利。
美咲からの慰謝料請求も退けられた。

「はぁ...疲れたわ」

金太郎は、再び一人暮らしに戻った。

「金があっても、幸せやないんやな...」

そんな時、再び田中から電話がかかってきた。

「金ちゃん、大丈夫か?」

「ああ...なんとかな」

「すまんな。ワイが紹介しといて...」

「ええねん。ワイが悪かったんや」

田中は、少し沈黙した後、言った。

「な、金ちゃん。今度ワイらと飲みに行かへんか?」

「ワイら?」

「せや。昔の同級生とかも来るで」

金太郎は、少し考えてから答えた。

「...ああ、行くわ」

翌週、居酒屋にて。

「久しぶり〜!」
「金ちゃん、元気にしとった?」
「相変わらずやな〜」

懐かしい顔ぶれに囲まれ、金太郎は少しずつ笑顔を取り戻した。

「みんな、ありがとう...」

そして、ふと隣に座った女性に目が留まった。

「あの...君は?」

「あ、初めまして。私、田中の後輩の佐藤です」

「へぇ...」

佐藤さんは、特別美人というわけではない。
でも、なんだか温かい雰囲気を持っていた。

「鈴木さんって、すごい会社の社長さんなんですよね」

「え?ああ...まぁね」

「すごいです!私、頑張ってる人尊敬します」

「...!」

金太郎は、デジャヴを感じた。
でも、今回は違う。佐藤さんの目に、打算的なものは見えない。

「あの...佐藤さん」

「はい?」

「良かったら...また話したいんですけど」

佐藤さんは、優しく微笑んだ。

「はい、喜んで」

その夜、金太郎は久しぶりに心から笑顔になれた。

「やっぱり、金より大事なもんがあるんやな」

金太郎は、これからの人生に希望を見出した。

「今度は、ゆっくりとお付き合いしていこう」

そう決意した金太郎の顔は、少し輝いて見えた。