「ファッ!?これがワイの顔なんか?」

鏡に映る自分の姿に、ワイこと田中ブサ夫(25)は絶望した。

現実:ブサイク、デブ、コミュ障
ゲーム内:ブサイク、デブ、コミュ障

「なんやねん!このゲーム!リアルすぎるやろ!」

ワイが遊んでいるのは、話題の最新VRMMORPG「ポリコレファンタジア・オンライン」。

キャッチコピーは「誰もが主人公になれる世界」。

現実の姿がそのままアバターになるという、画期的(笑)なシステム。

「くそっ...こんなん絶対モテへんやん...」

ワイは、街中を歩きながらため息をついた。

イケメンや美女のアバターが颯爽と歩く中、ワイだけポツンと浮いている。

「あれ?あのキャラ、もしかして...」

ふと目に入ったのは、ワイと同じようなブサイクアバター。

「おい、お前もか?」

声をかけると、相手は驚いた表情を浮かべた。

「えっ...ワイと同じ境遇の人がおるんか...」

こうして、ブサイク同士の会話が始まった。

名前は、山田ブス子(22)。

「ワイな、このゲームのシステムに騙されたんや...」

「わかる...『誰もが主人公』言うから、ワイらでも輝けると思ったのに...」

二人は、互いの不幸を語り合った。

そんな時、町の掲示板に目を引く告知が。

『史上初!ブサイク限定イベント開催!』

「なんやこれ...」

興味本位で、二人はイベント会場に向かった。

会場には、様々な姿のブサイクたちが集まっていた。

「おお!ようこそ、ブサイクの皆様!」

主催者らしき人物が、高らかに宣言した。

「本日は、『ブサイク・ファッションショー』を開催します!」

「はぁ?」

会場がざわついた。

「皆様に、素敵な装備をご用意しました!さぁ、着替えてください!」

配られた装備は、どれも派手で奇抜なデザイン。

「こんなん...絶対似合わへんやろ...」

ワイは、渋々着替えた。

鏡に映る自分の姿。

ド派手な原色のローブに、キラキラしたアクセサリー。

「うわ...めっちゃ痛い...」

周りを見渡すと、みんな同じように悲惨な姿。

「さぁ、ランウェイウォーキングの始まりです!」

強制的にステージに立たされるブサイクたち。

「やだ...あの人たち...」
「ダサすぎる...」
「痛々しい...」

観客席からは、冷ややかな視線が。

ワイは、必死に笑顔を作りながらウォーキング。

「くそっ...なんでワイがこんな目に...」

そんな中、ふと隣を見ると。

「お、お前...」

山田ブス子が、堂々とウォーキングしている。

「なんや、あいつ...なんであんな自信満々なんや...」

ワイは、思わず足を止めてしまった。

すると、ブス子が近づいてきた。

「おい、何してんねん!しっかりウォーキングせぇ!」

「えっ...でも...こんな恥ずかしい格好...」

「バカ!それでこそブサイクやろ!」

ブス子の言葉に、ワイは目を見開いた。

「ワイらがな、イケメンや美女の真似したところで、誰も見向きもせえへん」

「そ、そやけど...」

「やけどあかん!ワイらには、ワイらにしかできへんファッションがあるんや!」

ブス子は、誇らしげに胸を張った。

「見てみい。この派手な衣装、このキラキラしたアクセ」

「うん...」

「これらは全部、ワイらを引き立てるためのもんなんや」

「えっ?」

「そう、ワイらが主役なんや。装備はただの引き立て役」

ワイは、ハッとした。

「そうか...ワイら自身が主役...装備はただのおまけ...」

「そうそう!ほな、もう一回やってみようや!」

ブス子に背中を押され、ワイは再びウォーキング。

今度は、胸を張って堂々と歩く。

「おっ...あのブサイク、なんかカッコよくない?」
「うん、なんか様になってる...」

観客の反応が、少しずつ変わってきた。

「よっしゃ!これがワイの『ブサイク・ファッション』や!」

ワイは、思わず叫んでいた。

そして、ショーは大成功に終わった。

「皆様、素晴らしいショーをありがとうございました!」

主催者が、満面の笑みで告げる。

「実は、このイベント。『多様性』をテーマにした、ゲーム内最大のファッションショーだったのです!」

「えっ...」

会場が、どよめいた。

「皆様の個性的なウォーキングは、多くのプレイヤーの心を掴みました!」

大型スクリーンに、ショーの様子が映し出される。

「あっ...あれ、ワイや...」

画面に映るワイの姿は、なんだかカッコよく見える。

「おめでとうございます!皆様に、特別な称号を贈呈します!」

『ブサイク・ファッションの開拓者』

ワイたちの頭上に、キラキラと称号が輝いた。

「や、やったんか...?」

信じられない気持ちで、ワイはブス子を見た。

「やったで!ワイら、やってしまったんや!」

二人は、思わず抱き合って喜んだ。

それからというもの。

ゲーム内で、ブサイクたちの立場が変わり始めた。

「ねぇねぇ、その称号かっこいい!」
「ブサイク・ファッション、教えてよ!」

憧れの眼差しで見られるようになったのだ。

「ワイら、なんかすごいことしてもうたんちゃうか...」

「せやな...ブサイクの誇りを取り戻したんや」

ワイとブス子は、満足げに街を歩いた。

「よっしゃ、次は『ブサイク専用ダンジョン』でも作ろか!」

「おお!それええな!」

二人の野望は、どんどん膨らんでいく。

こうして、「ポリコレファンタジア・オンライン」に、新たな風が吹き始めたのであった。

「せやけど...リアルでもこの称号欲しいわ...」

「わかる...でも、まぁええやん。ゲームの中でも輝けるってことが分かっただけでも」

ワイとブス子は、現実とゲームの狭間で、新たな生き方を見つけたのかもしれない。

「ほな、明日は『ブサイク専用レストラン』でも作るか!」

「おう!ブサイクに優しい世界を作るんや!」

二人は、意気揚々とログアウトした。

現実世界。

「はぁ...やっぱりブサイクやなぁ...」

鏡に映る自分を見て、ワイはため息をついた。

「でも、ええんやで。ワイらには、ワイらの輝き方があるんや」

ブス子の言葉を思い出し、ワイは少し微笑んだ。

「せや!明日からは現実でも、堂々と生きたろ!」

ワイは、決意を新たにするのであった。

...が、翌日。

「うわっ、あのブサイク...」
「キモ...」

現実の厳しさに、ワイは打ちのめされた。

「くそっ...やっぱりゲームの中がええわ...」

ワイは、再びゲームの世界に逃げ込むのであった。

「ただいま〜!ブサイクの皆!」

ゲーム内で、ワイは我が家に帰ってきたかのように叫ぶのであった。