ワイ、30歳。人生終わってると思ってマッチングアプリに手を出したんや。そしたら、まさかの大学の後輩と出会ってもうた。

「先輩! 覚えてますか? わたし、経済学部の後輩の香織です!」

ファッ!? 香織? あの可愛かった後輩か? なんでこんなアプリにおるんや...

「あ、ああ...覚えてるで。元気にしとったんか?」

「はい! 先輩と再会できて嬉しいです! これも運命かもしれませんね♪」

運命って...お前、そんな言葉使うタイプやったっけ?

そんな違和感を感じつつも、ワイは香織とメッセージのやり取りを始めたんや。

最初はよかったんや。懐かしい学生時代の話で盛り上がったり、お互いの近況を報告し合ったり。でも、そのうち香織の様子がおかしくなってきたんや。

「先輩、今何してるんですか?」
「誰と話してるんですか?」
「どこにいるんですか?」

もう、息つく暇もないくらいメッセージが来るんや。

「おい、お前...ちょっと煩すぎやないか?」

そう言うと、香織は突然豹変したんや。

「ごめんなさい! 先輩のこと、心配で...わたし、先輩のことが好きなんです!」

えっ、待て待て。急すぎるやろ...

「お、おう...そうか...」

ワイが戸惑っていると、香織からの告白の嵐が止まらへんくなったんや。

「先輩は私のものです!」
「誰にも渡しません!」
「ずっと一緒にいましょう!」

もはや、返事する暇もないくらいや。しかも、メッセージの内容がどんどんエスカレートしていくんや。

「他の女の子と話したら、許しませんよ?」
「先輩の全てを知りたいです。パスワードも教えてください♪」
「もし裏切ったら...殺しちゃいます♥」

ファッ!? こいつ、完全にヤンデレやんけ!

ワイは怖くなって、アプリを消そうとしたんや。でも、その瞬間...

「先輩、逃げようとしてませんよね?」

スマホの画面が赤く染まって、香織の顔が浮かび上がったんや。

「ひぇっ!」

ワイはスマホを投げ捨ててもうた。しばらく部屋の隅で震えていたんやが、どうしても気になって...スマホを拾い上げたんや。

すると、香織からのメッセージが山ほど届いとったんや。

「先輩、どこ行ったんですか?」
「返事してください」
「心配です」
「愛してます」

...ん? なんか、文体が変わってないか?

ワイは不思議に思って、香織に聞いてみたんや。

「お前...もしかして、ChatGPTとか使ってへん?」

すると、香織の返事が...

「はい、使ってます。わたし、先輩のことが大好きで...でも、うまく伝えられなくて...だからChatGPTに手伝ってもらってるんです」

ファッ!?そんなんアリかい!

ChatGPTは2022年11月に公開された人工知能チャットボットで、人間らしい自然な会話ができるんや。

ワイは困惑しながらも、なんか安心してもうた。人工知能が介在してるってことは、少なくとも本物のヤンデレよりはマシやろ...

「そっか...でも、お前の本当の気持ちはどうなんや?」

しばらく間があって、香織から返事が来たんや。

「わたし...先輩のこと、本当に好きなんです。でも、うまく伝えられなくて...ChatGPTに頼ってしまいました。ごめんなさい」

なんや、そういうことか...

ワイは深いため息をついた。人工知能に頼らなアカンほど、コミュニケーションが難しい世の中になってもうたんやな...

「わかったで、香織。もう ChatGPT は使わんでええ。お前の言葉で、素直に話そうや」

「はい...ありがとうございます、先輩」

そして、ワイと香織は、人工知能の助けを借りずに、ゆっくりと会話を始めたんや。

ぎこちなくて、たどたどしい会話。でも、それが人間らしさやったんやな。

結局、ワイらは実際に会うことになったんや。人工知能じゃなく、リアルな人間同士で向き合うために。

退廃的な現代社会。人工知能に感情すら委ねてしまう若者たち。でも、その中でも、人間らしさを取り戻そうともがく姿...

それが、愛ってもんなんかもしれへんな。

...つうか、初めっから素直に話せよ!アホか!