ワイは不登校や。でも、普通の不登校とちゃうんや。ワイは宇宙の不登校なんや。
毎日、ワイは宇宙ステーションの自分の部屋に引きこもっとる。窓から見える景色は、いつも同じ漆黒の宇宙と、きらめく星々や。地球の青い姿も時々見えるけど、ワイにはもう遠い世界みたいに感じるんや。
宇宙ステーションには昼も夜もないんや。24時間、人工的な明かりで照らされとる。だから、ワイは夜を知らへんのや。
ワイがここに来たんは、親が宇宙飛行士やったからや。「宇宙で育てば、きっと素晴らしい人間になる」って言われて連れて来られたんや。でも、ワイには向いてへんかったんや。
宇宙学校は厳しかった。無重力での実験や、宇宙服の着脱訓練、そして恐ろしい宇宙遊泳...ワイは全部苦手やった。そして、ある日突然、学校に行けんくなってもうたんや。
「おい、起きろ!学校行くで!」
親父の声が通信機から聞こえてくる。でも、ワイは返事せえへん。
「また不登校か?この宇宙の環境を無駄にしとるんやで!」
母親の悲しそうな声。でも、ワイにはもう聞こえへんのや。
ワイの世界は、この6畳ほどの狭い部屋だけや。食事は自動で配給されるし、トイレも部屋についとる。出る必要なんてないんや。
でも、ワイは寂しいんや。宇宙にはワイみたいな不登校の子おらへんのかな...そう思いながら、ワイは宇宙の掲示板を覗いてみたんや。
「宇宙不登校集まれ〜」
そんなスレを立ててみた。しばらくすると、返信があったんや。
「ワイも宇宙不登校や。火星の学校行きたくないンゴ...」
「金星組のワイ、高温過ぎて外出たくないわ」
「木星の重力キツすぎて身体動かんのや...」
ワイは驚いたんや。宇宙中に、ワイみたいなんがおるんやって。
そんな中、一つの書き込みが目に留まったんや。
「地球に帰りたいンゴ...」
ワイは、胸がキュッとなったんや。そうや、ワイも地球に帰りたいんや。でも、もう無理なんや。宇宙で育った体には、地球の重力が強すぎるんや。
ここで、ちょっと雑学入れとくで。宇宙に長く滞在すると、骨や筋肉が弱くなるんや。地球に帰ると、自分の体重で潰れてまうかもしれんのや。
ワイは、もう地球には帰れへんのや。でも、この宇宙の学校にも行きたくない。ワイは、宇宙と地球の間で宙ぶらりんなんや。
毎日、ワイは窓から地球を見つめとる。あの青い星には、ワイの行けない「夜」があるんや。暗闇に包まれて、星を見上げる人々がおるんや。
ワイは、その「夜」が見たいんや。でも、ここでは永遠に見られへんのや。
ある日、ワイは決心したんや。宇宙服を着て、こっそり宇宙遊泳してみようって。
宇宙服を着るのに一苦労や。やっとの思いで着て、エアロックから外に出たんや。
そこで見た景色は、ワイの想像を超えとったんや。
漆黒の宇宙が、ワイを包み込んでくる。無限に広がる闇と、そこにきらめく無数の星。そして、遠くに見える青い地球。
ワイは、はっとしたんや。これが「夜」なんやって。
宇宙には昼も夜もないって思っとったけど、違うんや。宇宙全体が「夜」なんや。ワイは、ずっとその中におったんや。
そう気づいた瞬間、ワイの中で何かが変わったんや。
宇宙ステーションに戻ったワイは、通信機を手に取ったんや。
「親父、かあちゃん...ワイ、学校行くわ」
驚いた様子の親の声が返ってきたけど、ワイは決意したんや。
宇宙の「夜」を知ったワイは、もう怖くないんや。宇宙遊泳も、無重力実験も、全部乗り越えられる気がしてきたんや。
ワイは、宇宙の不登校やったけど、宇宙そのものが教えてくれたんや。「夜」の美しさと、そこから見える希望を。
これからのワイの人生は、きっと今までとは違うもんになるんやろうな。宇宙の「夜」を知った者として、ワイは新しい道を歩み始めるんや。
地球には帰れへんかもしれん。でも、ワイには宇宙全体が、新しい冒険の舞台になるんや。
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