ワイはな、マッチョになれば絶対モテると信じとったんや。毎日ジムに通い詰めて、プロテイン飲みまくって、ようやく理想の体型になったんや。でも、現実は残酷やった。

ある日のこと、ワイは意を決して、好きな女の子に告白したんや。
「ワイと付き合ってくれへんか?」
女の子は困ったような顔して、こう言うたんや。
「ごめんね...マッチョはちょっと...」

その瞬間、ワイの世界は真っ暗になったんや。今まで頑張ってきたことが、全部無駄になった気がしてな。

その日から、ワイは毎日酒に溺れるようになったんや。ジムにも行かんくなって、プロテインも捨ててもうた。

ある夜のこと、酔っ払ってフラフラしながら歩いとったら、突然空が真っ赤に染まったんや。そして、空から声が聞こえてきたんや。

「お前は失望したんやな」

ワイは驚いて空を見上げたんや。そしたら、なんか得体の知れん生き物が浮かんどるんや。

「お前は...神様か?」

その生き物は不気味に笑うたんや。

「神様?そんなもんおらへんで。ワイは『絶望』や」

ワイは震えが止まらんかったんや。

「絶望...?」

「そうや。お前みたいな奴らの絶望を吸って生きとるんや」

ワイは怖くなってきたんや。でも、同時に心の中で何かが壊れていくのを感じたんや。

「じゃあ...ワイの努力は全部無駄やったんか?」

絶望は、またあの不気味な笑みを浮かべたんや。

「そうや。お前の努力なんて、所詮そんなもんや」

人間の筋肉は使わんと1週間で約10〜15%も衰えるんやで。ワイみたいにガチでトレーニングしとった奴が急にやめたら、その衰えはもっと早いんや。

ワイは、もうどうでもよくなってきたんや。

「じゃあ...ワイはどうすればええんや?」

絶望は、ワイの目の前まで降りてきたんや。

「ワイと一緒に来るんや。お前の絶望を、もっと深いもんにしてやる」

ワイは、なんか吸い込まれそうになったんや。でも、その時や。

「やめろ!」

突然、誰かの声がしたんや。振り返ると、そこにはワイが昔助けたことのある痩せっちょの男がおったんや。

「お前...なんでここに?」

「お前を探しとったんや。みんな心配しとるで」

絶望は、痩せっちょの男を見て、顔をしかめたんや。

「邪魔すんな。こいつはもうワイのもんや」

でも、痩せっちょの男は引かへんかったんや。

「違う!マッチョがモテるかモテへんかなんて、そんなんどうでもええんや!大事なんは、お前が誰かのために頑張れることや!」

その言葉を聞いた瞬間、ワイの中で何かが動いたんや。そうや...ワイは誰かのために強くなりたかったんや。

ワイは、絶望から離れようとしたんや。でも、絶望はワイを離さへんのや。

「離せや!ワイはまだ...諦めたくないんや!」

絶望の顔が、みるみる歪んでいくんや。

「お前ごときが...ワイから逃げられると思うんか!?」

絶望は、ワイを飲み込もうとしたんや。でも、その時や。

痩せっちょの男が、ワイの手を掴んだんや。

「一緒に逃げるで!」

二人で必死に走ったんや。絶望は、恐ろしい形相でワイらを追いかけてきたんや。

「逃がさへん!お前らの絶望をワイによこせ!」

でも、ワイらは諦めへんかったんや。走って、走って、走り続けたんや。

そしたら、どっかで朝日が昇ってきたんや。その光を浴びた絶望は、みるみる小さくなっていったんや。

「くそ...また今度や...」

そう言って、絶望は消えてしもうたんや。

ワイと痩せっちょの男は、へとへとになりながらも笑いあったんや。

「ありがとうな...お前に助けられたわ」

痩せっちょの男は、照れくさそうに笑うたんや。

「当たり前やろ。友達やんな」

その言葉を聞いて、ワイは涙が出そうになったんや。

確かに、マッチョはモテへんかったかもしれへん。神様もおらへんのかもしれへん。でも、こうして側にいてくれる友達がおるんや。

ワイは決めたんや。これからは、誰かのために生きていこうって。それが、ワイの新しい目標になったんや。

人生は、思うようにいかへんかもしれへん。でも、諦めんと生きていけば、きっと何かが見つかるはずや。

ワイは、新しい朝日を見ながら、そう思ったんや。