ワイ、25歳。人生という名のクソゲーに永遠と付き合わされてる中途半端な存在や。

「何者かになりたいンゴ...」

そんな言葉を呟きながら、ワイは毎日をダラダラと過ごしていた。大学は出たものの、就職せずにコンビニバイトを続ける日々。親からは「いつまで実家にいるつもりや」と突っつかれる。

「ワイには夢がないンゴ...」

そう思いながら、コンビニの棚にバナナを並べる。黄色い実がやけに目に染みる。

「バナナって、実は木やなくて草らしいで」

バイト仲間の池沼が言う。

「はぁ? お前アホか?」

「マジやで。バナナは多年生のハーブらしいで」

ワイ、困惑する。「バナナが草...?」

その日から、ワイはバナナのことが気になって仕方なくなった。ネットで調べてみると、マジで草やった。

「ファッ!? 世界が変わってもうたわ...」

バナナの知識を得た瞬間、ワイの中で何かが変わった。「これや...ワイがなりたかったんは...」

翌日、ワイはバイト先のコンビニに向かう。いつもと違う足取りで。

「おはようございまーす」

店長の声に、ワイは答える。

「チぃス...」

「は?」

ワイは真顔で続ける。「ワイはバナナになることにしたンゴ」

店長は呆れた顔をする。「お前、体調でも悪いんか?」

でも、ワイは動じない。黄色いTシャツを着て、頭にはバナナの被り物。

「ワイは...バナナや!」

その日から、ワイの奇妙な日常が始まった。バナナのようにまっすぐ立ち、バナナのように黄色く輝く。

客は戸惑いながらも、ワイのバナナっぷりに引き込まれていく。

「あのバナナ君、面白いね」
「バナナのモノマネ上手いじゃん」

ワイは違う、と思う。これはモノマネやない。ワイはバナナなんや。

ある日、珍しく学生時代の友人と会う機会があった。

「お前...何してんねん」

友人は困惑の表情を浮かべる。ワイは答える。

「ワイはバナナや」

「いや、それは分かるけど...なんでや」

ワイは真剣な顔で語り始める。

「人間はみんな、何者かになりたがるやろ。でも、なりたいものになれへん奴らばっかりや。ワイは違う。ワイはバナナになりたかったから、バナナになったんや」

友人は呆れながらも、どこか感心したような顔をする。

「お前...なんか哲学的やな」

そう、これはワイなりの実存主義なんや。サルトルもニーチェも及ばんくらいのな。

ワイのバナナ生活は続く。そんな中、ある事件が起こった。

コンビニに強盗が入ったんや。

「金を出せ!」

ナイフを持った男が叫ぶ。店長と他のバイトは震え上がる。でも、ワイは動じない。

「あんた...バナナ食べるか?」

強盗は混乱する。「は?」

ワイは静かに語りかける。「人生って、バナナみたいなもんやで。皮を剥いたら中身しかない。でも、その中身が甘くて栄養たっぷりなんや」

強盗は武器を落とし、座り込む。「俺...何やってんだろ...」

警察が来るまでの間、ワイはバナナの魅力を強盗に語り続けた。

この事件以来、ワイは町の名物になった。「バナナマン」と呼ばれ、悩める人々の相談相手になる。

「人生に疲れたら、バナナになればええんや」

そんなワイの言葉に、多くの人が救われた。

ある日、テレビ局がワイの取材に来た。

「なぜバナナなんですか?」と記者。

ワイは答える。「だって、バナナが一番ンゴ」

この言葉がSNSで拡散され、ワイは一躍時の人となる。

「バナナになることで、本当の自分を見つけた」
「バナナは、現代社会への警鐘なのかもしれない」

評論家たちがワイを分析し始める。でも、ワイにとっては関係ない。ワイはただのバナナやから。

そんなある日、ワイは公園のベンチで、一人の少年と出会う。

「お兄ちゃん、なんでバナナなの?」

ワイは少年に微笑みかける。「お前は何になりたい?」

少年は目を輝かせる。「僕は...りんごになりたい!」

ワイは頷く。「ええやん。なりたいものになればええんや」

少年は嬉しそうに走り去る。

ワイは空を見上げる。青い空に、一筋の雲。それはどこかバナナの形に似ていた。

「ワイは...バナナや」

そう呟きながら、ワイは微笑む。何者かになりたかったワイの答えは「バナナ」やった。それは突飛で、馬鹿げていて、でも何よりも自分らしい答えやった。

人生はバナナのように、時に曲がり、時に真っ直ぐ。でも、最後は誰かの心に栄養を与える。それがワイの見つけた哲学や。