ワイ、28歳のフリーターや。人生どん底やと思ってた矢先、マッチングアプリに手を出してもうた。

「どうせブスしかおらんやろ」

そう思いながらも、右スワイプを繰り返す日々。そんな中、奇跡のマッチが起こった。

「おっ、ついにビッチ見つけたわ!」

興奮冷めやらぬまま、メッセージを送る。

「はじめまして!よろしくお願いします!」

返信はすぐに来た。

「こんにちは。数学は好きですか?」

ワイ、戸惑う。「数学? なんやこいつ、オタクか?」

でも、他にマッチした相手もおらんし、話を合わせてみることにした。

「ま、まあまあ好きっすよ」

嘘やけど、これくらいはええやろ。

そこから、数学オタクの彼女との奇妙な会話が始まった。ワイは適当に相づちを打ちながら、実際に会う約束を取り付けようと画策する。

「ほな、今度会いませんか?」

「いいですね。でも、その前に解いてほしい問題があります」

なんやねん、テストかよ。でも、会えるなら仕方ない。

「おっけー。なんでも来いや」

彼女が送ってきたのは、見たこともない複雑な数式やった。

「これ、なんすか?」

「フェルマーの最終定理です。解けたら会いましょう」

ワイ、絶望する。「無理ゲーやんけ!」

でも、どうしても会いたい。ワイは必死で数学の勉強を始めた。

図書館に通い詰め、ネットで情報を漁る。それでも、フェルマーの最終定理の謎は解けない。

「くそっ、こんなんわかるわけないやん!」

ある日、疲れ果てたワイは公園のベンチで寝てしもうた。夢の中で、謎の声が聞こえる。

「お前、本当に会いたいんか?」

「会いたいに決まっとるやろ!」

「ほんなら、自分の顔見てみい」

ハッと目が覚める。ポケットの鏡を取り出すと、そこには見慣れたブサイクな顔が映っていた。

「あかん...ワイ、自分がブサイクやって忘れとったわ...」

現実を突きつけられ、ワイは泣きそうになる。でも、諦められへん。

再び必死で数学に取り組む。そんな日々が続いて3ヶ月。ある日、ワイは気づいた。

「待てよ...これって...」

フェルマーの最終定理を完全に理解することはできへんかったけど、その美しさは分かった。

「数学って、こんなに綺麗なんや...」

ワイは彼女にメッセージを送った。

「フェルマーの最終定理、完全には解けへんかったけど、その美しさは分かったで」

返信はすぐに来た。

「よく頑張りましたね。では、会いましょう」

待ち合わせ場所に向かうワイ。緊張と期待で胸がドキドキする。

そこで待っていたのは、ワイ以上にブサイクな女やった。

「えっ...」

思わず声が漏れる。でも、彼女は気にする様子もなく、嬉しそうに話しかけてきた。

「はじめまして。私、数学教師の田中です」

ワイ、困惑する。でも、なぜか安心感もあった。

「あの...なんでフェルマーの最終定理なんですか?」

彼女は微笑んだ。

「実は、フェルマーの最終定理が完全に証明されたのは1995年なんです。それまで350年以上も未解決だった問題が、現代の数学によって解かれた。私はそれがロマンチックだと思うんです」

ワイ、なんか分かる気がした。

「ほんま、数学って奥が深いっすね」

「そうなんです。ちなみに、フェルマーの最終定理を証明したアンドリュー・ワイルズは、7年間誰にも言わずに研究を続けたんですよ。最後の1年は毎日19時間も研究に没頭したそうです」

「マ?そんなガチモンおったんか...」

会話が弾む。ワイ、数学の話に夢中になってしもうた。

「ほんまにありがとうございました。数学の美しさ、ちょっと分かった気がします」

帰り際、ワイは勇気を出して聞いた。

「また会ってもええですか?」

彼女は嬉しそうに頷いた。

その夜、ワイは思った。「マッチングアプリで出会ったブサイクから数学の数式を見つけた」

人生って、数式みたいなもんかもしれん。複雑で、時には理解できへんこともある。でも、その中に美しさがある。

ワイの新しい物語は、まだ始まったばかりや。でも、もう寂しくない。だって、数学という新しい世界と、その世界を共有できる人を見つけたから。