ワイ、30歳童貞ニートのマッチングアプリ奮闘記、始まるで。

「マッチングアプリなんて、顔がすべてやろ」

そう呟きながら、ワイはスマホを握りしめた。画面には、華やかな女の子の写真が並んでいる。みんな笑顔で、幸せそうや。でも、ワイにはそれが作り物みたいに見えるんや。

「ま、ワイみたいなチー牛顔じゃ、マッチなんてせえへんやろなぁ」

自虐ネタで自分を慰めながら、ワイは右スワイプを繰り返す。1時間経っても、マッチする気配はない。

「はぁ...こんなアプリ、哲学みたいなもんやな。存在しているのに、存在を感じられへん」

そう思った瞬間、画面が光った。「マッチしました!」の文字が躍る。ワイの心臓も躍った。

相手の名前は「エミリー」。プロフィールには「海外育ちです♡日本の文化に興味あります」と書いてある。写真を見ると、まるで人形のような美少女や。

「嘘やろ...こんな子がワイとマッチするわけないやん」

でも、メッセージが来た。

「はじめまして♡よろしくね!」

ワイは震える指で返信する。

「よ、よろしくお願いします!」

会話が始まった。エミリーは親切で、ワイの拙い受け答えにも優しく反応してくれる。ワイは、これが夢なんじゃないかと思った。

「日本に来たら、案内してもらえますか?」

その言葉に、ワイは舞い上がった。まるで、人生逆転のチャンスが訪れたかのように。

「も、もちろんです!ぜひ案内させてください!」

エミリーとの会話は、ワイの退屈な日常に色を付けた。毎日が楽しみになった。ワイは、初めて「生きている」と実感した。

しかし、現実はそう甘くなかった。

ある日、エミリーから「お願いがあるの」というメッセージが来た。

「実は、日本に行くための費用が足りなくて...少し援助してもらえないかな?」

ワイの頭に、警告のサイレンが鳴り響いた。でも、エミリーを失いたくない。ワイは、貯金を崩して送金した。

そして、エミリーは消えた。アカウントも削除された。

「あ、あほや...ワイ、詐欺られてもうた...」

現実を直視できず、ワイは別のマッチングアプリに手を出す。そして、また騙される。

「なんでや...ワイはただ、誰かと繋がりたかっただけやのに...」

部屋に籠もり、ワイは虚無感に包まれる。マッチングアプリは、ワイにとって「希望」と「絶望」を同時に与える存在になっていた。

「ワイは誰からも必要とされへんのや」

そんな暗い思考に浸っていたある日、ワイは公園のベンチで、一人の老人と出会う。

「若いの、なんや落ち込んでるみたいやけど」

ワイは、思わず全てを話してしまった。老人は、静かに聞いていた。

「人間関係ちゅうんは、アプリで作れるもんやないで」老人は言った。「本物の繋がりは心と心で作るもんや」

「でも...ワイには...」

「誰にでもチャンスはあるんや。大事なんは、自分を大切にすることや」

老人の言葉は、ワイの心に染み入った。

「マッチングアプリの現実は哲学や」老人は続けた。「自分探しの旅みたいなもんや。でも、本当の自分は、現実の中にしかおらへんのや」

ワイは、初めて自分の人生を客観的に見つめ直した。

「ほんまやな...ワイ、もうアプリに頼るのやめるわ」

その日から、ワイは少しずつ外に出るようになった。図書館に通い、本を読み漁った。公園で犬の散歩をする人々に話しかけた。

そして気づいた。世界は、スマホの画面の向こうより、ずっと広かった。

「マッチングアプリの現実は哲学や」とワイは思う。「でも、人生の哲学は、現実の中にあるんや」

ワイの新しい物語は、まだ始まったばかりや。でも、もう孤独やない。だって、本当の自分に出会えたから。