西暦2345年、人類は地球を離れ、宇宙に進出していた。その中で最も成功した植民地が「コーンスター」だった。とうもろこしを主食とし、エネルギー源としても活用する、まさにとうもろこしで構築された宇宙ステーションだ。

コーンスターの中心にある巨大な人工太陽「コーンサン」を囲むように、黄金色に輝くとうもろこし畑が広がっている。その景色は壮観で、地球時代の田園風景を彷彿とさせた。

しかし、この美しい光景とは裏腹に、コーンスターには大きな問題があった。それは、急激に増加する「女嫌い」の男性たちだった。

主人公の山田タロウ(28)は、コーンスター警察の刑事。彼はこの奇妙な現象の謎を追っていた。

「なぁ、パートナー。なんでこんなに女嫌いが増えてるんやろな」タロウは相棒のジョン・スミスに問いかけた。

ジョンは肩をすくめた。「さあね。でも、最近のとうもろこしの味が変わったって話は聞くよ」

タロウは眉をひそめた。「とうもろこしの味と女嫌いが増えることに関係があるとでも?」

その時、緊急通報が入った。コーンスターの主要なとうもろこし畑で暴動が起きているという。

現場に到着すると、大勢の男性たちが怒号を上げながら、とうもろこし畑を荒らしていた。

「女はいらない!とうもろこしさえあればいい!」
「人類は単為生殖できるはずだ!」

タロウは呆れながらも、冷静に状況を分析した。確かに、ここ数ヶ月で女性との接触を避ける男性が増えていた。そして同時に、とうもろこしへの執着が強まっているようだった。

調査を進めるうちに、タロウは驚くべき事実に気づいた。最近改良された新種のとうもろこしに、人間の脳に作用する特殊な物質が含まれていたのだ。この物質が、男性の脳内で女性ホルモンの働きを抑制し、同時にとうもろこしへの依存を高めていた。

真相に迫ったタロウは、コーンスターの最高責任者であるコーネリアス博士に面会を求めた。

博士のオフィスに入ると、そこには予想外の光景が広がっていた。部屋中がとうもろこしで埋め尽くされ、中央にはとうもろこしの茎で作られた椅子に座る博士の姿があった。

「よく来たね、刑事クン」博士は不気味な笑みを浮かべた。「どうだい、私の理想郷は」

タロウは警戒しながら尋ねた。「なぜこんなことを?」

博士は立ち上がり、窓の外に広がるとうもろこし畑を指差した。「見たまえ、この完璧な世界を。とうもろこしだけで人類は生きていける。女性なんて必要ない。むしろ、邪魔なんだよ」

タロウは怒りを抑えながら言った。「それは間違ってる!人類の未来のためには、多様性が必要だ」

博士は嘲笑した。「多様性?無駄だよ。とうもろこしこそが究極の存在なんだ」

その瞬間、タロウは部屋の隅に置かれた古い地球の写真に目をとめた。そこには、若かりし日の博士と美しい女性が写っていた。

「博士、あの女性は...」

博士の表情が一瞬崩れた。「妻だ...かつての。彼女は私を捨てた。だから私は、誰も傷つかない世界を作ろうと決めたんだ」

タロウは優しく語りかけた。「でも、それは逃避でしかありません。本当の幸せは、お互いを理解し合うことから生まれるんです」

博士の目に涙が浮かんだ。「私は...間違っていたのかな」

その時、警報が鳴り響いた。とうもろこしの遺伝子操作の影響で、コーンサンが不安定になっていたのだ。

タロウは即座に行動を起こした。「博士、あなたの力が必要です。みんなを救うために」

博士は決意を固めた。「分かった。私が作り出した問題は、私が解決しよう」

二人は協力して、コーンサンの安定化に取り組んだ。そして同時に、問題のとうもろこしの無害化も進めた。

数日後、コーンスターは平穏を取り戻した。そして、男女の関係も少しずつ改善されていった。

タロウは満足げに空を見上げた。「やっぱり、多様性があってこその宇宙だよな」

遠くには、新しく植えられた様々な種類の作物が、とうもろこしと共に育っていた。

コーンスターは、真の意味での豊かな惑星へと生まれ変わろうとしていた。