西暦2069年、地球。
33歳のオタク男性、鈴木オタオタは、いつものようにマッチングアプリ「ギャラクシーラブ」をスワイプしていた。彼の部屋は等身大フィギュアとアニメポスターで埋め尽くされ、窓からは昼間の光すら差し込まない。
「はぁ...もう諦めようかな」と呟いたその時、画面に現れたのは、宇宙一の美女と呼ばれるアンドロメダ星雲の姫、ステラ・ノヴァだった。
オタオタは思わず画面に顔を近づけた。「こ、これは...ガチ宇宙人!?いや、絶対bot」
しかし、次の瞬間、「マッチしました!」の文字が踊る。
オタオタは混乱した。「え?嘘でしょ?」
ステラからメッセージが届く。「こんにちは、地球の方。私はアンドロメダ星雲の姫、ステラ・ノヴァです。あなたの趣味や生活が気になります」
オタオタは震える手で返信した。「は、はじめまして。僕は鈴木オタオタです。趣味はアニメとフィギュア集めです...」
ステラは興味津々で返信してきた。「アニメ?フィギュア?それは何ですか?私たちの星にはないものみたいです」
オタオタは興奮して説明し始めた。アニメの魅力、フィギュアの造形美、2次元キャラの素晴らしさ...止まらない。
ステラは次第に夢中になっていった。「素晴らしい文化ですね!私も見てみたいです」
二人はメッセージを交換し続け、オタオタは宇宙の話を、ステラは地球のオタク文化を学んでいった。
そして一ヶ月後、ついに対面の日。
オタオタの部屋に、まばゆいばかりの光が満ち、ステラが現れた。
「わぁ!これがアニメキャラのフィギュアなんですね!」ステラは目を輝かせた。
オタオタは汗だくで説明する。「こ、これは限定版で、こっちはプレミアが...」
ステラは次々とフィギュアを手に取り、アニメポスターを食い入るように見つめた。
「これは...最高です!私の星にも広めたい!」
オタオタは喜びのあまり泣きそうになった。「本当ですか!?」
その日から、ステラは毎日のようにオタオタの部屋に通い詰めた。二人でアニメを見たり、フィギュアの飾り方を考えたり...。
しかし、この幸せな日々は長くは続かなかった。
ある日、アンドロメダ星雲から緊急通信が入る。
「姫様!どこにいらっしゃるのです?」
ステラは答えた。「地球です。素晴らしい文化を見つけました。アニメとフィギュアです!」
アンドロメダの大臣たちは困惑した。「姫様、それは地球の洗脳兵器ではありませんか?」
ステラは必死に説明するが、大臣たちは聞く耳を持たない。
そして翌日、衝撃的なニュースが世界中を駆け巡った。
「アンドロメダ星雲、地球に宣戦布告」
理由は「姫の誘拐および洗脳兵器の使用」。
オタオタとステラは唖然とした。
「どうしよう...」オタオタが震える声で言う。
ステラは決意に満ちた顔で言った。「大丈夫です。アニメの主人公なら、きっとこんな時にこう言うはず...」
「俺たちの愛と、オタク文化の素晴らしさを、全宇宙に示そう!」
こうして、オタクと美人の珍道中が始まった。
二人は宇宙船に乗り込み、アンドロメダ星雲に向かう。途中、様々な星で「アニメ上映会」を開催。次第に、オタク文化の魅力に取り憑かれる宇宙人が増えていく。
アンドロメダに到着した二人を、山のようなフィギュアを抱えた宇宙人たちが出迎えた。
「姫様!このフィギュア、限定版らしいですよ!」
「私はこのアニメにハマってしまいました!」
ステラの両親も、気がつけばアニメを見ながら涙を流していた。
「これは...本当に素晴らしい文化だったのか」
かくして、オタク文化は銀河系全体に広まり、星間戦争は「全銀河アニメ・フィギュアフェスティバル」に変更された。
オタオタとステラは、銀河系のオタク文化大使として活躍。時には、オタオタの部屋で二人でアニメを見る静かな時間も過ごす。
そんなある日、オタオタはステラに聞いた。
「そういえば、なんでマッチングアプリを始めたの?」
ステラは少し照れながら答えた。
「実は...私の母星では『オタクと付き合えば、きっと面白い人生が待っている』っていう言い伝えがあって...」
オタオタは笑った。「へえ、地球と同じだね。僕らの言い伝えは『美人と付き合えば、きっと人生が変わる』なんだ」
二人は顔を見合わせ、くすくすと笑い合った。
こうして、マッチングアプリから始まった奇妙な出会いは、銀河の新しい文化を生み出し、二人の人生を大きく変えたのだった。
そして今日も、どこかの星で、誰かがアニメを見ながらほっこりしているのだろう。
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