薄暗い部屋の中、青白い画面の光が俺の顔を照らしていた。時計は深夜3時を指している。筋肉痛で体中が痛むが、それ以上に心が痛んでいた。

「先輩、まだ起きてますか?今日のトレーニングメニュー、送りますね♡」

LINEの通知音が鳴り、俺は思わずため息をついた。送信者は後輩の美咲。彼女からのメッセージを開くのが怖かった。

美咲は一見、優しくて可愛らしい後輩だ。だが、彼女の干渉は俺の体づくりにまで及んでいた。ChatGPTを使って、毎日新しいトレーニングメニューを作成し、俺に送り付けてくるのだ。

「先輩のために、AIに完璧なメニューを作らせたんです。これをこなせば、きっと理想の体になれますよ♡」

俺は震える指で画面をスクロールした。そこには、非人間的なトレーニングメニューが並んでいた。スクワット500回、腕立て伏せ300回、懸垂100回...。これをこなせば、間違いなく筋肉は付くだろう。だが、同時に命を落とす可能性も高かった。

「美咲、これは無理だよ。人間の限界を超えてる」

返信を送ると、すぐに返事が来た。

「先輩...私のために頑張ってくれないんですか? 私、先輩のことしか見てないのに...」

その言葉に、背筋が凍るのを感じた。美咲の「愛情」は、もはや狂気としか言いようがなかった。

「わかった。やるよ」

俺は観念して返信した。拒否すれば、どんな報復が待っているかわからない。美咲の執着は、日に日に強まっていった。

翌日、筋肉痛で動けない体を引きずって大学に向かった。階段を上るのも一苦労だ。教室に入ると、美咲が満面の笑みで近づいてきた。

「おはようございます、先輩! 昨日のトレーニング、きちんとこなせましたか?」

その笑顔の裏に潜む狂気を、俺は見逃さなかった。

「ああ、なんとかな」

嘘をつくしかなかった。本当のことを言えば、彼女がどんな反応をするか想像もつかない。

「よかった♡ でも、嘘つくのはダメですよ?先輩の体、私が一番よく知ってるんです」

その言葉に、寒気が走った。まるで、俺の体を隅々まで観察されているかのようだった。

授業中、俺は常に美咲の視線を感じていた。彼女の目は、獲物を狙う猛獣のようだった。

放課後、俺は急いで帰ろうとした。だが、美咲に呼び止められた。

「先輩、今日も一緒にトレーニングしましょう♡ 私が直接指導してあげます」

断る余地はなかった。美咲に連れられるまま、大学の体育館に向かった。

体育館に入ると、美咲は豹変した。

「さあ、始めましょう。ChatGPTさんが作ってくれた特別メニューです♡」

その「特別メニュー」は、昨日のものをさらに上回る過酷さだった。

「美咲、これは本当に無理だ。死んでしまう」

俺は必死に訴えた。

「大丈夫です♡ 先輩が死んでしまったら、私が蘇らせてあげますから」

美咲の目は、既に現実を見ていなかった。

トレーニングが始まると、美咲は容赦なく俺を追い込んだ。限界を超えて倒れそうになっても、彼女は止めてくれなかった。

「もっと!もっと頑張って!私のために、完璧な体を作ってください!」

美咲の叫び声が、体育館に響き渡る。俺の意識は徐々に遠のいていった。

気づくと、俺は病院のベッドで目を覚ました。オーバートレーニングによる重度の筋損傷と脱水症状。医者は、もう少し遅ければ命に関わっていたと言った。

そんな俺のベッドの傍らには、美咲が座っていた。

「ごめんなさい、先輩...でも、これで先輩の体は私のものになりました♡ これからは、私が先輩の全てを管理します。栄養も、運動も、生活も...全部私にお任せください♡」

俺は、もう逃げられないことを悟った。美咲の狂気の愛に囚われ、俺の人生は彼女のものとなったのだ。

窓の外では、夕日が沈んでいく。それは、俺の自由が失われていく様を象徴しているようだった。

これからの日々、俺はAIと美咲の狂気の筋トレ地獄に堕ちていくのだろう。そして、いつか本当に理想の体を手に入れる日が来るのかもしれない。

だが、その時には既に俺の魂は失われているに違いない。