ワイが目覚めた時、世界は変わっていた。まず気づいたんは、隣で寝てたはずの嫁はんがおらへんってことや。「またキッチンにでも行ったんかな」と思って、リビングに行ってみたんやが、おらへん。

「おーい、どこいったんや?」って叫んでみたけど、返事はなかったわ。そういや、隣の家からいつも聞こえてた奥さんの怒鳴り声も聞こえへん。なんか様子がおかしいと思って、テレビつけてみたんや。

そしたら、アナウンサーが慌てた様子で喋っとった。

「昨晩から世界中の女性が突如として姿を消しました。原因は不明です。各国政府は緊急会議を開いています。」

ワイは目を疑ったで。女が消えた?そんなアホなことあるわけないやん。でも、街に出てみたら、マジで女おらへんのや。男しかおらへん。みんな困惑した顔して歩き回っとる。

ワイの会社も大変なことになっとった。女性社員が全員おらへんから、仕事が回らへんのや。特に総務部はもう地獄や。誰も書類の場所わからへんし、電話の応対の仕方も分からへん。

街を歩いとると、あちこちでパニックが起きとる。保育園や小学校は子供の面倒見切れへんから休校や。病院も看護師おらへんから大混乱や。飲食店なんかも、接客する人おらへんから、みんなで適当に自分で料理作って食べとる始末や。

そんな中、ワイの友達の山田が走ってきた。

「おい!大変やで!」

「なんや?それ以上何が大変なんや?」

「風俗がなくなったんや!」

「アホか!そんなんどうでもええやろ!」

「いや、マジで大問題やで。風俗がなくなったら、性犯罪増えるかもしれんのや。」

山田の言うことにも一理あった。確かに、そういう需要をどう処理するんか、大きな社会問題になりそうや。

数日経って、少しずつ新しい生活に慣れ始めた頃や。街にはこんなポスターが貼られるようになった。

「男性保育士大募集!」
「看護師になりたい男性、大歓迎!」
「美容師になろう!男性の君も!」

そうか、今まで女性が多かった職業に男が進出せなアカンのか。でも、そんな簡単に切り替えられへんやろ。

ワイの会社でも、男性社員が急いで総務の仕事を覚えようとしとる。でも、みんなイライラしとって、些細なことですぐ喧嘩になるんや。

「お前!この書類どこにしまったんや!」
「知らんわ!お前が勝手に片付けたんやろ!」
「なんやと!」

毎日こんな感じや。

家に帰っても、掃除、洗濯、料理...全部自分でせなアカン。最初はコンビニ弁当で済ませとったけど、さすがに体がもたへん。仕方なく、料理の本見ながら作ってみるけど、うまくいかへん。

「くそ!なんでこんな味になるんや!」

ワイは台所で呆然としとった。今までこんなんを毎日やってくれとった嫁はんはすごかったんやな...

街を歩いとると、男たちが集まって何か話し合っとるのが見えた。近づいて聞いてみると、

「もう、政府に女性を元に戻せって要求せなアカンで!」
「そうや!こんな生活もう無理や!」
「でも、どうやって戻すんや?そもそも何が起こったんかすらわからへんのに...」

みんな途方に暮れとる。確かに、このまま女性がおらへん世界が続くなんて想像もつかへん。

そんな中、テレビでこんなニュースが流れた。

「世界中の科学者が女性消失の謎解明に乗り出しています。現在のところ、平行宇宙への転移説が有力視されています。」

平行宇宙?そんなSFみたいな話あるわけないやん。でも、女性が突然消えるってこと自体がSFやったんや。

ワイは夜、一人でベッドに横たわりながら考えた。今まで当たり前すぎて気づかんかったけど、女性がおるからこそ成り立っとった世界やったんやな。家事も育児も、社会のあらゆる場面で女性が重要な役割を果たしとったんや。

「早く戻ってきてくれ...」

ワイはそう呟きながら、枕を抱きしめた。明日からまた、女性のいない世界で生きていかなアカン。でも、いつかきっと...

そう、女性が戻ってくる日を夢見ながら、ワイは眠りについた。



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牛野小雪
2023-10-25