舞台:パリの小さなカフェ。テーブルを挟んで座るパスカルとマルクス。

パスカル:「マルクス君、今日はギャンブルについて語り合おうと思ってね。」

マルクス:「ほう、面白い話題だ。だが、ギャンブルは資本主義の罠だと私は考えているがね。」

パスカル:「そうかもしれんが、数学的に考えれば、勝つ方法はあるはずだ。」

マルクス:「数学か。確かに君は確率論の父と呼ばれているな。」

パスカル:「そうだ。例えば、期待値を計算すれば、長期的には利益が出せる。」

マルクス:「しかし、それは結局のところ、労働者階級から搾取する別の手段に過ぎないのではないか?」

パスカル:「そう考えるのか。だが、ギャンブルは自由意志で参加するものだ。」

マルクス:「自由意志?資本主義社会では、真の自由など存在しない。」

パスカル:「厳しい見方だね。でも、確率を理解すれば、有利に立てる。」

マルクス:「確率?それは結局、富める者がより富む仕組みではないのか。」

パスカル:「そうとは限らない。例えば、私の有名な賭けを知っているかい?」

マルクス:「ああ、神の存在に関する賭けか。あれは興味深い考えだった。」

パスカル:「そう。リスクと報酬のバランスを考えるんだ。」

マルクス:「だが、それはギャンブルとは違う。神の存在は証明できない。」

パスカル:「確かに。でも、この考え方はギャンブルにも応用できる。」

マルクス:「どういうことだ?」

パスカル:「リスクに見合った報酬がある場合のみ賭けるんだ。」

マルクス:「なるほど。でも、それは結局、資本家の思考方法ではないのか?」

パスカル:「違うんだ。これは誰でも使える戦略なんだよ。」

マルクス:「しかし、初期投資資金がない者はどうするんだ?」

パスカル:「確かにそれは問題だね。でも、小さく始めることはできる。」

マルクス:「小さく始める?それでは格差は縮まらないぞ。」

パスカル:「そうかもしれない。でも、チャンスは平等にあるはずだ。」

マルクス:「チャンスの平等?それは幻想に過ぎない。」

パスカル:「そう悲観的になるなよ。数学は公平なんだ。」

マルクス:「数学は公平かもしれんが、社会は違う。」

パスカル:「では、社会を変えるためにギャンブルを利用できないかな?」

マルクス:「どういうことだ?」

パスカル:「例えば、勝った金を再分配するシステムを作るとか。」

マルクス:「ほう、それは面白い発想だ。でも、誰がそれを管理する?」

パスカル:「そうだな...そこが難しいところだ。」

マルクス:「結局、権力者が管理すれば、また搾取の道具になる。」

パスカル:「じゃあ、AI とかブロックチェーンを使うのはどうだろう?」

マルクス:「なんだそれは?未来の技術か?」

パスカル:「ああ、そうだった。我々の時代にはまだないんだったね。」

マルクス:「まあいい。そんな技術があったとして、本当に公平になるのか?」

パスカル:「完璧ではないかもしれないが、人間よりはマシだろう。」

マルクス:「人間不信が過ぎるのではないか、パスカル。」

パスカル:「人間の弱さを知っているからこそ、システムが必要なんだ。」

マルクス:「システム?それは結局、新たな支配構造を生むだけだ。」

パスカル:「じゃあ、どうすれば公平なギャンブルができると思う?」

マルクス:「そもそも、ギャンブルに公平などあり得ない。」

パスカル:「でも、確率的には公平な賭けも存在するんだよ。」

マルクス:「理論上はな。しかし現実は違う。」

パスカル:「現実を理論に近づければいいじゃないか。」

マルクス:「そう簡単にはいかんよ。社会構造自体を変えねばならん。」

パスカル:「そうか...でも、小さな変化から始められるはずだ。」

マルクス:「小さな変化?それは改良主義に過ぎない。」

パスカル:「改良主義が悪いとは限らないだろう。」

マルクス:「根本的な変革がなければ、真の解放はない。」

パスカル:「解放か...そういえば、君の言う『階級闘争』は一種のギャンブルじゃないのか?」

マルクス:「何!?どういうことだ?」

パスカル:「成功するかどうかわからない闘争に全てを賭けるわけだろう?」

マルクス:「...確かにリスクはある。だが、それは必然的な歴史の流れなんだ。」

パスカル:「歴史の必然?それも一種の賭けじゃないか。」

マルクス:「くっ...まあ、そう言われれば、確かに...」

パスカル:「つまり、我々は皆、人生というギャンブルに参加しているんだよ。」

マルクス:「なるほど。そう考えると、ギャンブルから逃れることはできないのかもしれんな。」

パスカル:「そうだ。だからこそ、賢くプレイする方法を考えるべきなんだ。」

マルクス:「賢くプレイか...それは結局、個人主義的な発想ではないのか?」

パスカル:「いや、集団としても賢くプレイできるはずだ。」

マルクス:「集団として...それは面白い視点だ。」

パスカル:「そうだろう?例えば、リスクを分散させるとか...」

マルクス:「協同組合のようなものか。それなら私も賛成できる。」

パスカル:「ほら、少しずつ意見が近づいてきたじゃないか。」

マルクス:「確かに。パスカル、君との対話は刺激的だ。」

パスカル:「私も同感だよ、マルクス君。さて、もう一杯飲もうか。」

マルクス:「ああ、そうしよう。次は私がおごろう。」

パスカル:「おや、それは資本主義的ではないのか?」

マルクス:「はっはっは。たまには私も資本家の真似をしてみようじゃないか。」

二人は笑いながら、次の一杯を注文した。彼らの会話は、ギャンブルから人生哲学へと発展し、夜が更けていくのだった。



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