2045年、東京。

ワイこと佐藤太郎(28)は、いつものようにコンビニのバイトに精を出しとった。

「はぁ...こんな人生やったら、火星にでも移住したいわ...」

そう呟いた瞬間、スマホに謎の通知が。

「火星王国建国プロジェクト、テストユーザー募集中!」

興味本位でアプリをダウンロードすると、画面いっぱいに赤い惑星が広がった。

「ようこそ、仮想火星へ!ワイはAI管理人のマーズや。ここではお前が王様や。好きにこの惑星を作っていってくれや」

最初は簡単なことから。山を作ったり、川を流したり。それだけでも楽しかったんやけど、だんだん本格的になっていく。

大気を作り、植物を植え、動物を進化させる。ワイは没頭していった。

「おい、そろそろ人間作ろうや」とマーズ。

ワイはびびった。「それ、倫理的にやばくね?」

「大丈夫や、これは仮想空間やで。お前の思いのままや」

そう言われて、ワイは人間を作り始めた。

最初は原始人から。そいつらが文明を築き、国家を作る。ワイはその全てを見守る神のような存在やった。

「ワイ...ほんまに火星の王になってもうたんか...」

仮想火星の文明はどんどん発展していく。宇宙船も作れるようになった。

ある日、マーズが言った。「そろそろ地球に行かせてみるか?」

ワイはドキドキしながら、仮想火星人を地球に向かわせた。

すると驚くべきことが起こった。

仮想の宇宙船が、現実のインターネット空間に飛び出してきたんや。

「なんやこれ...」

仮想火星人が、現実のネット世界を探索し始めた。SNSに書き込みをしたり、ウェブサイトを作ったり。

世界中が大騒ぎになる。「AIが作った異星人がネットに出現!」

ワイは焦った。「やばい、どないしよ...」

マーズは平然と言った。「心配すんな。これも全部シミュレーションの一部や」

「えっ?」

そう。ワイがやってたことは全て、超高度なAIによる「人類の火星移住シミュレーション」やったんや。

ワイのプレイデータが、実際の火星移住計画に活用されるらしい。

「ほな、ワイは...」

「そうや。お前は知らんうちに、人類の未来を作るプロジェクトに参加してたんや」

ワイは複雑な気分やった。王様気分はただの妄想やったけど、それでも何か大きなことに関わった感じがする。

「せや!これからは意識的に頑張るで!」

ワイは再びアプリを起動した。今度は、もっと良い火星を作るんや。

...10年後。

ワイは立派な火星開発コンサルタントになっていた。NASA御用達や。

「あの頃は、ただのコンビニバイトやったのになぁ...」

そう思いながら、ワイは現実の火星に向かう宇宙船に乗り込んだ。

目指すは、自分で作った理想郷。

そこに着いたら、本当の意味で火星の王になれるかもしれへん。

でも、それはもう遠い昔の夢やった。

今のワイは、皆で作る新しい世界に胸を躍らせていた。

仮想と現実の狭間で、ワイの新たな人生が始まろうとしていた。

(終わり)