ワイ、28歳。某IT企業でSEとして働いとるんやが、最近会社の様子がおかしいんや。

新入社員が入ってくるたびに、数ヶ月後には辞めていく。そして、彼らの多くがニートになっとるらしい。

「おかしいよな...」

同期の田中が不安そうに呟く。

「ほんまやな...なんか、会社に入るとやる気なくなるっちゅうか...」

ワイも同意する。

そんな矢先、会社から新しいプロジェクトの発表があった。

「社員のモチベーション向上プログラム『ニーチェ』を導入します」

「ファッ!?ニーチェ?あの哲学者か?」

ワイは首を傾げる。哲学者と社員のモチベーションに何の関係が...?

翌日から、全社員にニーチェのアプリをインストールすることが義務付けられた。

「1日1回は必ずアプリを起動し、ニーチェの言葉に耳を傾けてください」

上司からそう言われ、しぶしぶアプリを入れる。

「さぁ、君だけの『超人』への道を歩み始めよう」

画面に表示されたその言葉に、なんとなく背筋が寒くなる。

最初のうちは、普通のモチベーションアプリやった。ニーチェの名言が表示されて、それについて考えるみたいな。

でも、1週間もすると、アプリの様子が変わってきた。

「人生に疲れたか?全てを放棄してみてはどうだ」

「ファッ!?なんやこれ...」

同僚の佐藤が驚いた声を上げる。

「ワイのんも変やで...『働くことに意味などない。全ては虚無だ』やって」

次第に、オフィスの雰囲気が重くなっていく。社員たちの目つきが虚ろになり、仕事の効率も落ちていく。

「おい、田中どうした?」

「ああ...もう、全てがどうでもよくなったんや...」

田中は虚ろな目でぼんやりとモニターを見つめている。

そして、ある日...

「佐藤くん、今日から来なくなったよ」

上司が平然と言う。

「えっ...なんでですか?」

「ニートになったらしいよ。まぁ、仕方ないね」

ファッ!?なんやこの反応...普通やないやろ...

ワイは恐ろしさを感じ始めた。このアプリ、絶対におかしい。でも、アンインストールしようとしても、なぜかできへん。

「くそっ...なんやねんこれ...」

ワイは必死にスマホをいじり回す。そんな時、画面に意味深な言葉が浮かび上がった。

「好奇心旺盛だね。じゃあ、真実を見せてあげよう」

突如、ワイの目の前に、得体の知れない映像が流れ始めた。

会社の地下...そこには巨大なマシンが...人間を吸い込んで...ニートに...!?

「ぎゃああああ!」

ワイは思わず叫んでしまった。周りの社員が不思議そうにこっちを見てくる。

「お前もそろそろか」

上司が薄ら笑いを浮かべながら近づいてくる。

「や、やめろ!近づくな!」

ワイは必死に逃げようとするが、足が動かん。

「さぁ、『超人』の仲間入りだ」

上司の声が、どこか機械的に聞こえる。

気づけば、ワイはベルトコンベアの上に乗せられていた。目の前には、「ニート製造機ニーチェ」と書かれた巨大な機械が...

「いやだ...いやだ...」

ワイは必死にもがくが、体が言うことを聞かん。

機械の中に吸い込まれる直前、ワイは悟った。

これが...会社の真の目的...社会の歯車から外れた人間を...大量生産...

「ぐああああああ!」

機械の中に飲み込まれるワイ。意識が遠のいていく...

...

...

「はっ!」

目が覚めると、ワイは自室のベッドの上やった。

「夢...か?」

ほっと胸を撫で下ろす。しかし...

「おい!そろそろ働け!」

親父の怒鳴り声。

ワイは、自分がニートになって半年が経っていることに気づいた。

枕元には、アンインストールできないアプリが入ったスマホ。

画面には、こう表示されていた。

「おめでとう。君はついに『超人』になれたよ」

ワイは、恐怖で震える手で、なんJに書き込んだ。

「ワイ、会社に勤めてたらニートにされて...」

「草」
「何言うとんねん」
「でも、ワイもなんか似たような...」

返信を見て、ワイは恐ろしさで震えが止まらなくなった。

これは、俺だけやない...日本中で...いや、世界中で...

「ニート製造機ニーチェ」は、今日も稼働を続けている...