東京都心、超高層ビルの35階。グローバル企業「茶々製薬」の人事部門で、新卒採用面接が行われていた。

面接官の茶柱立子は、目の前の志願者をじっと見つめた。

「では、自己PRをお願いします」

志願者の若林緑茶は深呼吸をした。「はい。私の最大の強みは、お茶の味を当てる能力です」

立子は眉をひそめた。「お茶...ですか?」

「はい」緑茶は自信満々に答えた。「目隠しをしても、銘柄まで当てられます」

立子はため息をつきながらメモを取った。「なるほど。で、それが我が社にどう活かせるんでしょうか?」

緑茶は一瞬言葉に詰まったが、すぐに立ち直った。「茶々製薬の主力商品、風邪薬『茶っ飛ばしゅ』の味を改良できます!」

立子は思わず吹き出しそうになった。「我が社の薬をお茶と間違えないでください」

そのとき、ドアがバタンと開いた。

「すみません、遅れました!」

髪を振り乱した男性が飛び込んでくる。名札には「抹茶太郎」とある。

立子は呆れた顔で言った。「抹茶さん、あなたは面接官のはずですが」

抹茶は慌てて着席しながら答えた。「すみません、朝の抹茶で気分が高揚して...」

緑茶は目を輝かせた。「抹茶さん!その香り...京都府宇治市の...」

「おっと、そこまでです」立子が遮った。「では、次の質問。当社を志望した理由は?」

緑茶は真剣な表情で答えた。「御社の社訓『人生、濃いめが吉』に感銘を受けました」

抹茶が思わず拍手。「素晴らしい!」

立子は冷ややかな目で抹茶を見た。「抹茶さん、あなたも初めて聞いたでしょう、その社訓」

抹茶は照れ笑いを浮かべた。「いやー、朝からお茶を点てすぎて...」

立子は再び緑茶に向き直った。「次の質問です。あなたの弱みは?」

緑茶は少し考えてから答えた。「カフェインに弱いことですね。お茶を飲みすぎると...」

その瞬間、緑茶の体が震え始めた。

「あ、やばい。朝、煎茶を10杯飲んじゃって...」

緑茶は突然立ち上がり、部屋中を駆け回り始めた。

「緑茶さん!落ち着いてください!」立子が叫ぶ。

抹茶が立ち上がり、緑茶を追いかける。「大丈夫、僕にお任せを!」

二人は会議室中を走り回り、机や椅子を倒しまくる。

そこへ、CEOの烏龍茶助が入ってきた。

「これは一体...」

立子は慌てて説明しようとするが、烏龍は手を挙げて制した。

「なるほど、茶道の型破りな表現芸術ですね。素晴らしい!」

烏龍は拍手し始めた。周囲の社員たちも釣られて拍手。

緑茶と抹茶は走るのを止め、お辞儀をした。

烏龍が宣言する。「君たち二人を特別採用しよう!」

立子は絶句した。

数ヶ月後。

茶々製薬の新製品発表会。

緑茶と抹茶が壇上に立っている。

「本日発表する新製品は...」

二人は息を合わせて叫んだ。

「茶っ飛ばしゅ茶!風邪薬なのに、お茶の味がするんです!」

会場は大爆笑に包まれた。

立子はため息をつきながらつぶやいた。「まさに茶番...」

しかし、その製品は大ヒット。茶々製薬の株価は急上昇した。

立子は自分のデスクで頭を抱えていた。

「なんてこった。本当に茶番だったのは、私の人生かもしれない...」

そこへ、緑茶と抹茶がやってきた。

「立子さん、一緒にお茶しませんか?」

立子は観念したように立ち上がった。

「そうね、人生楽しまなきゃ。濃いめで、お願い」

三人は笑いながら、社内のティールームへと向かった。

窓の外では、巨大なティーバッグを吊るしたヘリコプターが東京の空を飛んでいた。

茶々製薬の新しい宣伝だった。